14話
「冒険者登録・従魔登録で間違いございませんね…?」
目の前の受付嬢が、恐る恐る改めて確認してくるのに、頷く。
「はい」
その様子を、三咲の横に控えたアンバーや、少し離れて支部長が、見守っていた。
「それでは、当ギルドの説明からさせていただきます。
お時間少し頂戴しますが、よろしいですか?」
「はい」
「まず、ギルドとは、よく誤解されますが、国に帰属する民間戦力です。決して、国を超えた傭兵ではありません。
なので、・・・え、と、本当に当ギルド、ルチル王国冒険者ギルドアステール支部の所属でよろしいのですか?」
戸惑う受付嬢に、三咲は一瞬思案する。
実際は、まったく遠国の貴人ではないので、かまわないのだが、何と答えたものだろうか?
彼女が心配しているのは、戦争になった時、この国が、私たちの国と対立することになる可能性だろう。
その場合、登録は消されるか、または監視付きで戦力として駆り出されるだろう。
…これは、身辺調査もされるだろうな。
ソレイルの知識は、古いものが多く、また本獣が、さして人間社会に興味がないため、思わぬところで知識不足になる。
きっと、ギルドというからには、傭兵集団だというのは、前の世界での先入観に過ぎなかったみたいだ。
「ぇ、俺ら傭兵じゃなかったのか…?」
「マスター、マジ?」
受付カウンターにいる三咲と、アンバーの背後にある、酒場スペースで、ギルド員だろう男たちが騒めく。
どうやら、民間でも、誤解が広まっているらしい。
記憶によると、比較的平和な時代が続いていたみたいだから、そんなに気にならないものなのかな…?
「お前たち…。俺らは、ちゃんと登録時に説明したはずだが?」
呆れて、すごむ支部長を尻目に、三咲はアンバーに目線で問う。
「問題ございませんよ、ミサキ様。
我らが国は、遠い地。千里の道をわずかで進む術などないのですから、この国と戦など起こりようがありません。
そのために、我らは、ここまでやってきて、登録しているのですから」
なるほど。そういう言い分で、追及をかわすわけね。
街門では、嘘をついて、テキトーにあしらったということにしておくのだろう。
「…では、説明を続けさせていただきます。
当ギルドは、FからAまでのランク制で、新人は皆Fランクから始まります。
ギルドや国、街への貢献に応じて、ランクが上がります。特Aランクや、Sランクもございますが、基本的にこちらは昇格でなれるものではないため、省略いたしますね。
依頼は、大きく分けて、常時依頼、通常依頼、指名依頼、緊急依頼の四種類。
常時依頼や通常依頼は、依頼書をギルド内の掲示板に掲載しておりますので、通常依頼の依頼を受ける場合のみ、依頼書をはがして、受付まで持ってきてください。
常時依頼を受ける際は、依頼書ははがさず、いいですね、剥がさずに、受付に受注する旨をお伝えください。
緊急依頼は、言葉の通り、緊急時に依頼されるもので、例えば、人命救助や、街の防衛などですね。これらは、要請されたランクに所属するギルド員に、ご協力を強くお願いします。
最後に、指名依頼は、依頼側から、指名された場合にのみ、発生する依頼です。信頼の証ですので、ぜひ受けてみてください。強制ではありません。
依頼は、すべて基本的にランクを制限しています。ご自身のランクとその前後のランクまでを推奨する依頼までしか受けられませんので、ご了承くださいね」
「……以上が、基本的な依頼制度となります。
加えて、依頼には危険度が設定されています。
灰・緑・青・赤・黒の五段階で、黒は“討伐隊推奨”ですので、まず受けることはないと思います。
次に、従魔登録ですが…。
従魔は“家畜・魔獣・高位魔獣”の三分類でして、危険度によって登録税が異なります。
一定以上の知性や魔力を持つ従魔は“魔獣”扱いとなり、主人の責任も問われますので、ご注意ください」
アンバーの背後で、支部長が小さく咳払いする。
「最後に、外国籍の方や、出身国が不明の方は、身元保証人が必要となります。
……今回はこちらの支部長が保証人となりますので、ご安心ください」
「おい、俺か!」
支部長が慌てて声をあげたが、受付嬢が平然と続ける。
「この国では、冒険者は旅をする方々が多いため、他国に移動される場合も、国境門で必ず審査を受けていただく形になります。
ギルドカードは“身分補助”にはなりますが、“国籍の証明”にはなりませんので……お気をつけください」
「気をつけるよ」
そうして、三咲たちは説明を聞き終え、登録作業をすることになった。




