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創造神を殺した女  作者:
第一章 神殺しの黎明
10/14

10話

「つまり、貴女は、私を劣っていると見ているのね?」

 三咲が眉を寄せると、たちまちの内に、アンバーは顔を青ざめさせた。

 三咲の一転して、冷ややかな声音もあって、彼女は唇まで紫にしている。


 しかし、三咲は、それらに気遣う余裕はなかった。


 自身が他の神々より劣っていると思われている。

 そう知った瞬間、三咲はマグマのように煮えたぎる怒気を抑えるのに、躍起になっていた。


 未だ人間的な理性は、納得している。

 元人間の神と、生まれからして、神として在るもの。

 どちらが尊いか?なんて、解りきっている。


 だというのに、感情がまるで納得しない。

 自分が下に見られた。

 信頼しかけていたところを裏切られたという思い以上に、今の三咲にとって、他の神々と比べられて、あまつさえ劣っているなどと決められたことが、屈辱でならなかった。


 まるで知らない誰かのような、自分で理解できない怒りが、身の内で荒れ狂う。

 知らない自分が顔を出す。

 怒りと戸惑いが、ほぼ同時に自分の中で主導権を握り、内心ぐちゃぐちゃだった。

 まるで二重人格にでもなってしまったのかのよう。


 三咲は、どうにか自分を落ち着けようと、ため息をこぼす。

 アンバーが、びくりと肩を揺らした。

「言い訳を聞くわ」


 しどろもどろにアンバーが言うところによると、

 決して私を下に見る気はなかったこと。

 むしろ私こそが地上にとって歓迎すべき神であること。

 とはいえ、他の神々に対して、文句を言えるわけがなく、そのあまり、あのような言い回しになってしまったこと。


 三咲は、眉をしかめながら、話を聞いていた。

「……じゃあ、他の神様なら、その場で消し飛ばされてたってこと?」


 三咲の皮肉に、アンバーは明確に首を横に振った。

「違います。……他の神なら、私など最初から声をかけてもらえません。口もきけぬまま、畏れ、従うだけです」


 その言葉に、三咲は静かに目を細めた。


「……じゃあ、今、こうして言い訳を許してる私も、“劣ってる”のかしら」


 アンバーが息をのむ。

 そして、膝を折り、地に伏せるように頭を垂れた。


「いいえ。ミサキ様は、最もお優しく、最も恐ろしい神です。

 だからこそ……私は、忠誠を誓えるのです」


 三咲は、しばらくその姿を見下ろしていたが、やがて微かに息を吐いて、肩の力を抜いた。


「……次からは、ちゃんと伝えてね」


「はい……」


 怒気は消えたが、その余韻は、なお空気を張りつめさせたまま。


“神としての心”は、もう、三咲の中に棲みついていた。

 それが今後、何をもたらすかは、まだ彼女自身にもわかっていなかった。


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