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第6話 男女2人だけのお出掛けはデートらしい

「そんな訳でお兄さん、来ちゃいました!」

 

 創真が工房でひっそりと刃具を打っていたら、そこへいきなり風花が扉を蹴破る勢いで入り込んで来た。

 

「てへぺろ!」

 

「なーにが『来ちゃいました!』だ。それと、てへぺろもやめろ可愛いから」

 

「可愛いと褒められた。お兄さんにそう言われたら、頬を赤く染めて照れちゃいますよー」

 

「なーに言ってんだ? 折角来ても刃具は造らないぞ」

 

「そんなのは知っています」

 

「じゃあマジで何しに来たんだ?」

 

 行動は一直線な癖に、口に出す言葉の意味が分からない。理解するのにどれだけ時間が掛かる事やら。

 

「見学か?」

 

「ブッブー、ハズレです」

 

「なら帰れ!」

 

「帰ってたまるもんか!」

 

「それなら要件を言えよ。こっちだって暇じゃないんだ」

 

 風花は工房の中をグルリと見渡す。そして、創真の手元もチラリと。

 道具が散乱しており、見た事もない代物が無造作に置かれている。他にかまけている場合ではないのが見て取れる。

 

 でも、だからって、ここでおめおめと引き下がる風花ではない。

 

「創真お兄さんに相談があって来ました」

 

「相談?」

 

 相談とはまた意外なものだ。刃具をどうやったら貰えるかとか……違うな。その件はついさっきしたばかりだ。

 昨日今日会ったばかりの、しかも女の子の相談となるとあまりピンとこないものだ。

 本人の目から何故か不安の色がある。その「相談」は、きっと真面目な事なのだろう。

 

「追い返す程鬼じゃないし聞いてやる。言ってみろ」

 

「あの、お兄さんから見て私はそんなに弱い武刃家ですか?」

 

「そんな事は思ってないぞ。てか、お前は上級生に勝ったろ?」

 

「ですが、お兄さんの時も侑斗先輩と練習試合した時も負けました。全敗です。これも刃具がどういうものか考えてはいるのですが、頭を悩ませるばかりで」

 

 話の全容が見えてきた。

 風花は、まだ見つけ出せていない。その事で焦り、相談しに来た事を察した。

 

「ですのでお願いします。私に刃具について教えて下さい!」

 

 綺麗に頭を下げた。

 

 まさか直接正解を求めに来るとは思わなかった。そこまで焦る必要性があるのか、と疑問が尽きない。

 だからという訳じゃないが、それに甘んじて答えを教えたところで何の意味もなさない。

 

 けど、このまま突き返すというのも鬼畜。

 

「はぁ……」


 仕方ないから、その必死さに免じて少しばかり喋る。その結論に至った。

 

「わーった、それなら明日で良いか?」

 

「良いんですか?」

 

 バッ、と頭が上がった。都合の良い事だけには反応が早い。

 

「何驚いているんだよ。自分から言い出した事だろ?」

 

「まさか、本当に教えてくれるとは思いもしなかったので」

 

「俺の事を一体なんだと思ってんだよ。でも、自分でも少しは考えろよ。そうでないと……おっと、これ以上は秘密だ」

 

 何か言い掛けた事に風花は首を傾げたが、秘密と言うなら追求はしない。その心遣い良し。

 

「お昼の1時に渦巻(うずまき)市の渦巻銅像前に集合。いいな?」

 

「はーい!」



 ◯



「お兄さん、こんにちは!」

 

「はい、こんにちは」

 

 時間通り。創真と風花は渦巻銅像の前で集合できた。

 今日は土曜日。学園はお休みという事も相まって行き交う人混みも平日以上。ただ、その殆どの人が武鍛刃。

 

「お兄さん、確か渦巻市って鍛治屋が多い所でしたよね?」

 

「そう、その通り」

 

「何でまた此処へ?」

 

「それはだな──」

 

「まさか、こういう場所がデートするに持ってこいだから此処にチョイスを? やめて下さいよ、それだとモテませんよ?」

 

「よし、それなら帰るか」

 

 踵を返す俺を、風花が腰にしがみついてまで引き止める。

 

「デート気分で来たんなら帰るが?」

 

「嘘ですごめんなさい揶揄っただけなんです帰らないでお願いだから帰らないで!」

 

 でも、そう捉えられても無理はないか。休日に男女2人でお出掛けって、創真自身思わなくても相手はそう勘違いしてしまう。


「ちゃ、ちゃんと分かってますから。どやっ!」

 

(でも、その方が気楽に過ごせるならデートという名目でも全然アリだが)

 

「さあ出掛けますよ! 先ずは何処に向かうのですか?」

 

 少し考え、答えは出た。

 

「なら気分変更だ。デート気分で回ろう」

 

「……えっ? うえああぁぁぁっ!?」

 

 急に声を上げる風花に、周辺に行き交う人達の視線が一気に集まった。

 

「ででで、デートなんていきなり!」

 

 顔から煙を噴き出して明らかに動揺している。

 

「デートなんて言うから、そっちの方が気楽かと思って」

 

「だってだって、お兄さんがデートなんて口にするなんて」

 

「するわ。俺をなんだと思っているんだ」

 

 その言い方には失礼にも程がある。それでいて、風花がどんな目で創真を見ているのかちょっと怖くなってきたのもある。

 

「それにしても結構気合い入れたんだな。その服、似合っているぞ」

 

 その場で軽く回って服を翻す。

 

 風花が来ている服は、シンプルながらも白のワンピースに青いリボンがチャームポイントとして装飾されている。服装に合わせてチャンキーヒールを履いており、春というより夏の服装に近いファッションをしている。

 スタイルの良さも相まって、その可愛らしさが存分に発揮されている。


「私のお気にです!」

 

「お気にか。それなら似合っていて当然だな。ま、どの服着ようが風花なら何でも可愛くなると思うぞ」

 

「えへへっ、ありがとうございます!」

 

 風花はニンマリと笑顔を作っては、両手で手を優しく握った。

 

「折角のデートですから、一緒に手を繋ぎましょう。このままじゃ勿体無いから別に良いですよね、お兄さん」

 

 創真もデートで構わないと言った手前、流石に優しく握られた手を振り払う訳事は出来ない。

 とことん付き合おう。握られた手を創真も強く握り返す。


 思ってた以上の握りの強さに風花は少々驚いた。

 

「お兄さん⁉︎」

 

「ほら行くぞ。時間は有限、大切に使わないとな」

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