第18話
─クァイ・ティエン連邦ティエン・ルン山脈
東方大陸の国々を統べる帝制国家クァイ・ティエン。西方大陸とは違い、この大陸を支配するのは只人達ではない。彼らは“仙人”。只人とも亜人とも異なるルーツを持つ超常の存在である。そして、その頂点に君臨するのが天子・紅豆。
「天子様、失礼します」
一人の仙女が屋敷の一部屋へ入室する。
「何用じゃ。妾は食後の一眠りをするところであるぞ」
煙管を咥えたその姿は、赤銅色の髪をした幼い少女の様であったが、通常の者には無いものが付いている。一つは大きな狐の耳。もう一つは9本の尾。そして最後に、はだけた衣より覗く股間から、怒張した珍棒が隆起しているではないか。
そればかりか、彼女の周りには若い只人や亜人の男女が乱れた着衣で転がっている。生きてはいるが、悦楽の末に「果てた」有様である。紅豆は見た目こそ幼いが、何千年に渡り若き生命の地と精を吸って生きた両性具有の大妖怪なのだ。
「も、申し訳ございません!」
と、謝罪した後、仙女は紅豆に西方大陸での出来事……オーバーンとイマーガワの戦争と、その火種たる聖女と奇跡の菓子について報告する。
「ほう。只人どもの戦などどうでもよいが、聖女と奇跡の菓子とやらはどちらも食ろうてみたいのぉ」
と、紅豆は矮躯に似合わぬ極太の珍棒をひと撫でする。
「今はオーバーン焼きと名乗らせておるそれも、妾のものとなれば名をクァイ・ティエン焼きか……それとも紅豆餅とでも呼ぼうかのう」
紅豆は邪悪な笑みで舌紙めずりながら言った。