第十五話
「勝負あったな」
一騎打ちの末、最後に立っていたのはオヤキンだった。
「待…て…………」
地に伏したカスターは、虫の息で敵の背に手を伸ばす。
「これで聖女は……アマナは帝国の…そして俺のものだ!」
オヤキンはアマナの逃げていった方向へと歩き出すが……
「誰が、誰のモノですって?」
その方向にはアマナが腕を組み、仁王立ちしているではないか。
「ハハハハ!自ら俺の元へ来たか、アマナよ!」
オヤキンはアマナの元へ駆け寄り、彼女の肩に右手を伸ばす。が、その手首をアマナの左手が掴み、前方へ反転しながら脇下へと体を回り込ませ、右手で相手の腕を手繰り寄せながら、前方へ上半身を曲げる。
「やぁーーーっっ!!」
と、発しながらオヤキンの長身逞躯を投げ飛ばす。
「ッッッ!!?」
一本背負いを食らい、背中を地面に叩き付けられたオヤキンは肺に伝わる衝撃に悶え苦しむ。
「パンセ!ポンセ!これをカスターに!!」
アマナが両掌から生み出したオーバーン焼きを受け取った双子は、それをカスターの元へと運ぶ。
「私の名は多楼亜麻奈!翠涼学園高校女子MMA部主将!!」
MMAとは、Mixed Marshall Artsの略称であり、日本語に訳すと“総合格闘技”となる。
「空手二段、柔術青帯!好きなモノは大判焼きと恋愛小説!そして……やっと出来た彼氏にフラレたばかり!!」
ファイティングポーズでオヤキンを見下ろしながら、アマナは続ける。
「さあ立ちなさい、オヤキン皇子!あなたの相手は私よ!大剣なんて捨ててかかってらっしゃい!!」
オヤキンは大剣を杖代わりに体を支えながら立ち上がると、剣を地面に投げ捨てた。
「身も心も強く、美しき女……ああ、我が妃となるに相応しいぞ、アマナよ!」
「あら嬉しい。でも、私はあなたみたいなワイルド系よりカスターみたいな美少年系が好みなの!私を振り向かせたければ……拳で語りなさいッッ!!」
アマナはオヤキンの元へと疾駆する。
「弧漫道奥義……火竜連弾撃!!」
アマナの放つ左右の掌底と蹴りが、オヤキンの眉間、顎、鳩尾、金的を連続して打ち抜いた。