第十三話
対峙するカスターとオヤキン。ともに王国と帝国の、国家元首が第一子でありながら兵を任される立場にある者同士だ。
「皆の者!俺とカスターは一騎打ちにて戦う!手出しは無用ぞ!!」
オヤキンが叫ぶ。
「受けて立とう!」
カスターは細身の長剣を構え、疾駆する。
オヤキンの持つ大剣は、本来ならば両手で扱う武器だが、彼の並外れた膂力はそれを片手で振り回すことすら可能とする。空いた手で手綱を掴むことにより、馬上でもバランスを整えながら戦うという大剣の欠点を補っているのだ。
しかし、大剣にはそれ自身の欠点があり、刃の幅広さから如何様にしても取り回しの面で隙が生じてしまう。故に、その隙を突くことが大剣の様な重い武器に打ち勝つ為の活路となる。
「ぬうりゃあ!」
オヤキンが大剣を振りかぶる。彼の剛力にかかれば一撃当てるだけでも並の兵ならひとたまりもない。
「とうっ!」
カスターはオヤキンが剣を振り下ろす前に仕掛けた。馬上では武器の間合いが遠いほど有利となる。カスターの長剣が刃渡り60センチほどであるのに対し、オヤキンの大剣はその倍近くある。刺突も、斬撃も届く間合いではない。ならばどうするか。自ら間合いに“飛び込む”のだ!
「なにっ」
カスターは馬の鞍に両靴底を着き跳躍したのだ。そして両足による跳び蹴りをオヤキンの顔面に当てる。虚を突かれたオヤキンはたまらず落馬。全身を地面にしこたま打ち付けた。
しかし仕掛けた方のカスターも同じ様に落下する。
「何という荒技よ……」
オヤキンは立ち上がりながら。
「鬼人の友より習った彼らの体術だ。“泥斧跳蹴"と言ったかな…」
カスターも体勢を立て直す。そして、二人は相対しながら剣の柄を両手で握り、構える。
「嬉しいぞカスター!強き者を負かして得る宝こそ価値がある!!」
「その宝とはアマナの事か!彼女はモノではない!お前のような男にくれてやるものかッ」
奪う者と守る者、男達の誇りと粋持、それは刃に込められる。