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97話

 見るのが2度目となる魔族の城を丘の上から眺めていた。これからあの場所に行くと思うと少し緊張する。


「迎えが来たようじゃな」


 俺達に同行していたラセンは目の前に来る馬車のような乗り物を目にすると緊張する俺達を見て少し微笑んだ。


「そう緊張するな。お主達は魔族の間でも有名になっておるのだぞ?」


「え⁉︎ なんで⁉︎」


 まさかそうとは思ってなかった俺は少し驚くとラセンはニカっと笑いながら話を続けた。


「それはそうだろう? なんせお主達は世界を救ったのだ! ちゃんとわし自ら話をしてあるから疑うものはおらんよ」


 やがて乗り物が目の前に止まるとドアが開く。


「お久しぶりです皆さん」


 出てきたのはラスターだった。


「さあ、行きましょう」


 乗り物が動き出すと凄く乗り心地のいい事がすぐに分かって驚いた。


 凄いな、全然揺れが少なくて体が楽に感じる。


「おお! すげぇ! 全然俺達の馬車と違うなこの乗り物!」


 この乗り物に一番興奮していたのはセラニだった。しきりにラスターに乗り物の事を訊き始めると俺を含めた他の皆も気になってラスターの分かりやすい説明に聞き入っていた。


「話を聞いていると魔族の技術って凄いんだな」


 ラスターの説明を聞いた俺の感想だった。


「魔族の文明は人間より一歩先をいっているんです」


「リアン! 俺凄く楽しみになってきた!」


 セラニは目を輝かせて俺に言ってきた。

 

 するといつの間にか賑やかな声が聞こえて外を見ると城が目前に迫っていて、最初にガイアグラスを見た時のようにその迫力に圧倒された。


 窓際には皆んなが顔を寄せていてその城を見上げて驚く声を上げている。


「すいませんが皆さんが来るのは極秘となっていますので裏門から入ります」


 門を潜るタイミングでラスターがそう説明した。


「まあ、そうよね。ここには人間はいないんだから大騒ぎになるもの」


 すっかり元気を取り戻したエニィが口を開くとラセンが不敵に笑った。


「ふっ、明日にでも皆をお披露目するつもりじゃ。あっと驚かせる手筈にしておいたのじゃ」


 どんな反応をされるか心配になりながら乗り物から降りるとラスターの後をゾロゾロと誰もいない廊下を進んで行った。


「まずはリアン殿とレシナ様はエルド王と面会して下さい。お祖父様が案内しますので」


 ひとつの部屋の前に来るとラスターからそう説明を受ける。


「それまで他の皆様はこの部屋でお待ちください」


 ラスターがドアを開けて皆に入るよう促すとアイナ、エニィ、ウェンディと中に入って行きその後をセラニとマーナが続いた。


「行ってくるよ」


 部屋に入った皆に一言言って俺とアリスはラセンの後ろを歩き始めたのだった。


 どんどん階段を登っていき着いたのは城の一番上の階層だった。長い階段を登り辿り着いた先には透明な素材で作られた天井が広がり、空から光が差し込むとまるで外にいるような感覚になっていた。不思議な感覚になりながら歩いていると俺の手をアリスが握った。


「アリス?」


 俺は隣を歩くアリスを見ると少し不安な顔をしていた。目が怖いと言っているようで、それを見た俺は大丈夫だとアリスの手をしっかりと握り返すと微笑みかけた。


「ありがとうリアン」


 小さな声でそう返すとアリスはしっかりと前を向いた。


 俺はアリスと手を繋いでいる事に安らぎを感じているとある部屋の前でラセンが立ち止まった。


「ここじゃ……王は最近眠る時間が多くてな……意識もはっきりしていないのだ」


 ラセンは俯き悲しげな表情を浮かべた。そしてドアを叩くと静かに扉を開けたのだった。


 そこは開放感に溢れた場所だった。入った瞬間に暖かい風が体を撫であげ、広い空間には緑が溢れるまさに庭園にいるような感覚にとらわれた。


 その中心にはベッドがある。ラセンの足はその場所に向かって歩き出すと俺とアリスも歩き出した。


「これはラセン殿! ……まさかそのお方が?」


 ベッドの横に立つ魔族の男はラセンに気付くと視線を後ろにいたアリスに移す。その瞬間明らかに驚いた表情に変わっていた。


「そうじゃ」


 ラセンは一歩後ろに引くとアリスに前に来るように促した。


「あなたの事は父エルド王からいつも聞かされていました……こうして会えるとは嬉しい限りです」


 男はアリスに頭を少し下げるとそう話す。


「レシナよ、このお方はエルド王の第2王子であるランサラス王子だ。早く言えばお前の腹違いの弟となるな」


「私の?」


「はい、私はあなたとアロント様が去られてから300年後に生まれたんです」


「父上はいつも私に語っていました。人間との間に生まれたふたりの子供の話を……さあ、父上に顔を見せてやって下さい」


「お父さん……私帰って来たよ……」


 アリスはベッドで眠る年老いた男の手を握りながら話しかけた。


「父上はもう眠ったままになっていて最近では起きる事が無くなりました」


「一体何の病気なんだ?」


 俺は堪らずそう口にすると王子様は俺を誰だ? という目で見た。


「おお! 忘れておった! こやつはレシナを救ったリアンだ」


 ラセンが俺の事を紹介してくれると王子様は笑みを浮かべ俺に近付いた。


「ラセン殿から話は聞きました! あなたには感謝しかありません。世界を、そして我が姉を救ってくれた。ありがとうございます」


「いえ、仲間達のおかげです。それで……」


 さっきした質問の答えを促すと王子は悔しそうに拳を握った。


「……病の原因が分からないんです……もはや打つ手がなく……」


「お父さん……」



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