96話
俺は今までの事を報告する為、教皇の元に訪れていた。
「そうか……よくやってくれたリアン殿! 君はガイアと並ぶ英雄になれたと思うぞ!」
一通りの報告が終わると教皇は嬉しさを全面に出して俺を讃えてくれた。
「皆の力があったからです。俺ひとりだったら何もできなかったはずです」
「その力を集める事も大きな事だ。胸を張っていい」
「ありがとうございます」
「それで……これからどうするのだ? できれば私の後を継いで欲しいところだがな」
「そこまで目にかけてくれて嬉しいのですがやる事があるんです」
「なんだ?」
「この世界からモンスターを無くしたいんです。安心して暮らせる世界にしたい」
「君は本当に素晴らしい人間だな……それほどの力を持っているというのに私利私欲に走らない」
「俺には周りを幸せにすることを考えるだけで精一杯です。それができれば十分だと思います」
「これから君の功績はちゃんと伝えるし報酬も出すからな。後、君の結婚式はこのガイアグラスで行う事にした。きっと世界中から人が集まる盛大なものになるだろう」
「この神聖な場所でそんな事をしていいのですか⁉︎」
俺の記憶ではこのガイアグラスで結婚式を挙げるなんて訊いた事がない。それほど神聖な場所で俺の結婚式を挙げると言う教皇に少し戸惑う。
「ははは! 周りが反対しようと私が決めたのだ。気にする事はない」
教皇は笑いながらそう話すとやる気に満ちた顔をしていた。これはもう余程の事がない限り覆る事はないだろう。
「では、日程は考えさせてください。まだ体も完全に治ってないので落ち着いたらにしましょう」
「分かっておる。しかし、ウィンディーネの花嫁姿が見れると思うと楽しみだわい!」
教皇の顔はもう優しい顔をしたおじいちゃんになっていてウェンディの顔が見たいと部屋を出て行ってしまった。
「ははは、あんなお祖父様の顔は久しぶりに見ます。これもリアン様のおかげですね。本当にありがとうございました」
教皇が去った部屋にシャルトさんが入って来て少し呆れながらも微笑みを浮かべ俺に話しかけてきていた。
「さ、皆さんが待っていますよ。行きましょう」
そういえばウェンディと結婚したらこの人はお兄さんになるんだな。他にもシャルトさんだけじゃなくて色々な人と繋がる事になるんだな……。
部屋を出ながらそんな事を考えていた。
リアン達がガイアグラスに着いた夜、久しぶりの再会を果たしたアリスとラセンは街を一望できる綺麗な夜の景色を観ながら話をしていた。
「まさかこんな日が来るとは思わなかったな」
「そうね……もう1000年が過ぎていたなんて思ってもみなかった……ラセンもすっかりおじいちゃんになってて驚いたもん。それに性格も変わったね。昔はいつも不機嫌そうにして笑った顔なんて見た事がなかったわ」
「くくっ、そうじゃな! あの頃は若かったな、時代はすっかり変わった……この時代にお前達が生まれていたらきっと幸せに生きていけただろうな」
「私、驚いているの……お父さんとかお母さんに聞いた人間は恐ろしくて残忍なものだって思ってた。でも、リアン達に会ってから人間が好きになったよ」
「人間にも中にはそういう者がいるだろうが全部がそうじゃないのだ。それをあやつらが証明してくれたのじゃ」
「これから私はリアン達と一緒に行動する。皆んな大好きだけどリアンは私にとって一番大事な人なの……」
「ふっ、これはリアン殿も大変じゃな! ならば周りを納得させる事じゃな」
「リアンが好きな気持ちは誰にも負けない……私は皆んなの仲間になりたい」
アリスは真っ暗な夜空に向けてそう宣言したのだった。
「明日は早い、もう寝るとするか」
「うん……なんか緊張するな……」
「レシナ……」
「あんな事をした私が行ったら皆んな怖がったり変な目で見られたりしないかな……」
「実はな……エルド王はあの後アロントとレシナの事を公表したのじゃ」
「え⁉︎」
「そして国民に頭を下げた……この惨事を招いたのは自分の責任だと死ぬつもりだったのじゃ」
「そんな……お父さん……」
「わしはアロント達と旅に出たから知らなかったが後から聞かされた話だと国民がそれをさせなかったそうじゃ。それほどエルド王は愛されていたのだ。その結果、それまでの功績もあって100年の禁固刑に処されたそうじゃ」
「お父さん……私のせいで……」
「わしが国に帰った時にそれを聞かされてな、その後エルド王が再び世に出てきた時は国民総出で迎えてまさにお祭り騒ぎになっていた」
「そっか……お父さんの事を今でもよく覚えてる。優しくて大好きだった……」
「旅から帰ったわしとダーラの話を聞いた時のエルド王の顔を今でも思い出す……悲しみに満ちた苦悶の表情でしばらく無言になっていたよ」
「お父さんに会いたい……」
「きっとレシナの顔を見れば王も元気になるはずだ」