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93話

 エニィから柔らかい光が噴き出すとアリスを包み込んでいく……その光景を俺は何もできずにただ見つめていた。


 やがて光は収まりアリスを抱きしめたままエニィは落下していった。


「エニィ!」


 悲鳴をあげていた俺の体は動き出した。おぼつかない足取りで落下するエニィとアリスを受け止めるとアリスをアイナに任せて俺はエニィをそっと寝かせた。


「なんで……なんで使ったんだ!」


 俺は止めどなく流れる涙を垂れ流しながら浅い息づかいをするエニィに向かって嫌でも叫ばずにはいられなかった。


「……ご、ごめんなさい……私、ガイアの安堵した顔を見た時……絶対にガイアの夢を叶えようって……それが私の使命なんだって……思った……の」


 やつれたエニィの顔が苦しみに歪み、息絶え絶えに話す姿に俺の胸は引き裂かれるくらいに痛む。


「だめよ……あなたが居なかったら皆んな悲しむ……言ったじゃない……皆んなでリアンを支えるって!」


 アイナは泣き喚きながらエニィの手を強く握った。


「ごめんねアイナ……リアンの事頼んだわ……」


 エニィの目が俺を捉えるとすっと一筋の涙が流れた。


「リアン……愛してる……」


 エニィの目が閉じて鼓動が止まった時、俺はなんて無力なんだと思い知らされた……愛する人を救えなかった自分に失望した。


「エニィ‼︎ 」


「いやぁー‼︎」


 もうエニィの笑顔も見れない声も聞けない……そう思うと更に悲しみが押し寄せ体に力が入らなかった。


 そんな悲しみに暮れていた俺達の前に誰かが立っていた。


「セト‼︎ 手を貸して‼︎」


「……アリス」


「あなたも! はやく‼︎」


 嘆き悲しむ俺達の元に現れたのはアリスだった。エニィの頭の位置に来ると手を俺達に向けて叫んだ。


 俺は意味が分からないまま手を出すとアリスは片手で俺の手を掴み、もう片方の手でエニィに縋り付いて泣くアイナの手を半ば強引に掴んだ。


「この世界を成す4つの加護よ……私に力を貸して……」


 アリスの言葉に反応するように俺とアイナから光が発するとアリスとエニィも同様に光を帯びていた。


「エニィ……あなたは死なせない……蘇生創術‼︎」


 アリスがスキルを叫んだ瞬間体から力を吸い取られる感覚に襲われ様々な色をした光に包まれながら意識が遠のいていった……。


「エニィ……」




 俺は夢を見ていた……それが本当に夢なのか分からない……何故ならアロントと向き合っていたからだ。


「ありがとう……これからもレシナを頼んだよ……」


 アロントの顔は安堵したように柔らぎ、少し微笑んでいるように思えた。


「アリスは俺が守るから……安心してくれ」


 俺はアロントに約束した。


「これでようやく僕もあっちにいける……レシナに言っておいてくれ……レシナに罪はない、幸せになってくれと……」


「ああ……」


 アロントは後ろを向くとスッと消えていった。




「……」


「あ! リアンが起きた!」


「リアン様!」


「リアンさん!」


 俺は豪華なベッドで寝ていた。目を開けるとセラニ、マーナ、ウェンディが目に涙を浮かべて俺を見ていた。


「他の皆んなは……」


 俺は真っ先にそう訊いていた。意識がハッキリするとあの場所にいたアリス、アイナ、そしてエニィの事が気になってしょうがなかったのだ。


「アリスちゃんとアイナさんは昨日目が覚めてベッドで安静してます」


 マーナの言葉にひとまず安堵すると次にでる一番気になる言葉を皆の表情と共にじっと待った。


「エニィは生きてるぜ……まだ眠ってるけどさ」


「良かった……」


 嬉しくて涙が出そうになる。


 でも、セラニの言葉に嬉しさが感じられないのが気になった。何故かマーナとウェンディの顔も暗い。


「昨日アイナさんから聞きました……エニィさんがスキルを使って死んでしまったかもしれなかったと……」


 マーナは悲しみを顔を出して涙を堪えていた。


「それなのに私達は浮かれちゃってました……」


 ウェンディも辛そうにして話していた。


「皆んなごめん……実は俺、ラセンから聞いてたんだ……あのスキルがアロントが使ったスキルに似てるって……エニィは俺がそれを知った事に気付いてて俺に目で言ったんだ……言わないでって……」


「だからリアンはエニィを連れて行かなかったんだな……」


「ああ……」


「いくら今後悔してもしょうがないわ……」


「アイナ!」


 開いていた部屋の入り口にアイナが寄りかかるように立っていた。


「エニィが起きたら文句を言ってあげるんだから」


「そうだな! 隠し事は無しってよく言ってたのに自分がやぶったんだからよ!」


 セラニの言葉に皆の顔に笑みが溢れ、その場は和やかな雰囲気になっていた。


「……アリスは?」


「アリスちゃん部屋から出てこなくて……話しかけても無言なんです……」


 俺の言葉にマーナは悲しげな顔をして答えた。


「体を乗っ取られたといってもあれだけの事をして罪の意識に苛まれているのでしょう……」


 ウェンディの言葉に和やかな雰囲気はまた暗く変わる。


「それを解決するのはリアンだけよ……」


 アイナの言葉に皆が同時に頷いた。


「……行ってくるよ」


 ベッドから降りると思ったよりも体が言うことを聞かなかった。  


「リアン様! まだ寝ていて下さい!」


「まだ体が辛そうです。今いかなくても……」


 ふらつく俺をウェンディとマーナが支えてくれるとふたりに止められた。


「大丈夫だ。はやくアリスと話したい……すまないけど部屋まで連れて行ってくれ」


 俺の意思が固いのが伝わったのか、皆んなは俺を支えてアリスのいる部屋まで連れて行ってくれた。


 アリスの部屋の前に着くとドアを叩いてドアノブに手をかけた。


 俺は皆に見守られながら部屋に入っていった。


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