88話
「その方法は? 何が書いてあるんだ?」
アリスを解放する術をガイアが見つけたと聞いてその方法が気になっていた俺は早口になってウェンディに先を促していた。
「それを我が子孫に託すと書いてあります。祭壇にあるスキル結晶を……」
ウェンディの話からそれはエニィの事だと皆の視線がエニィに集まる。
「最後にこう書いてあります。ここに来た英雄達よ、我が願いは友の願いを叶える事。災いを鎮められる事を願っている……」
エニィを先頭に祭壇に向かうとスキル結晶と思われる無色透明な結晶が置いてある。俺がさっき祭壇を調べた時、最初それがスキル結晶とは気が付かなかった。スキル結晶の形は皆一緒だと思っていたからだ。エニィが今両手に持ったスキル結晶は普通の物とは違って大きく、山のような形をしていた。
「ガイア……お願い、力を貸して」
まるでエニィの言葉に反応したように結晶から光が放たれるとエニィの体に吸い込まれていった。
フラッ……。
「エニィ⁉︎」
俺は気を失いその場に倒れたエニィの体を抱き上げた。
きっとガイアに会っているんだろうな……。
俺の腕で眠るエニィの愛おしくなる寝顔を見ながらそう思った。
「うんん……ここは?」
私はスキル結晶が光った瞬間突然気が遠くなると目の前が暗闇に覆われていた。
「はは、まさか可愛い女の子が来るとはな」
目の前に現れた人がガイアだとすぐに分かった。リアンが着ている白銀の格好にお父さんにどことなく似た顔が懐かしさを感じさせた。
「あなたがガイアね」
「……とうとう来ちまったんだな」
ガイアは頷くと少し悲しげな表情を見せる。
「アリス……いえ、レシナを助けたいの」
「こりゃ驚いた! それなら話が早い! やっぱり彼女が復活したんだな。俺は彼女を助ける為にそのスキルを探し出した。そしてそれを託す為にここに留まっていたんだ。これでやっと力を託して逝くことができる」
「そんなに長い間ひとりでここにいたのね……ありがとう」
「友との約束だ。それを守らなきゃ死ねないからな」
「すぐそこにラセンがいるわ。あなたに感謝してたわよ?」
「あいつまだ生きてたのか! へっ! じゃあひとつ伝言を頼む。おい堅物、俺はお前が無理だと言っていた彼女を助ける方法を見つけてやったぜ! ざまあみろ! ってな!」
「ふふ、分かったわ」
「後……約束守ってくれてありがとなって言っといてくれ」
ガイアは恥ずかしそうに頭を掻いてそう言った。
「レシナを解放するスキルは一回しか使えない。そして使った後お前の身に何が起こるか分からないんだ……すまないな。せめてこっちに来ない事を祈ってるよ」
「任せなさい。私はあなたの子孫よ。きっとレシナを救ってみせるわ」
「ありがとよ。これで安心して逝ける。じゃあ頑張れ」
爽やかな笑顔を見せて消えていくガイアを私は見送った。すると再び意識が薄れていった。
「……」
「ガイアと会えたか?」
目を覚ました私が最初に目にした愛する人は優しい声で私に囁くと少し心配そうな顔をしていた。
「うん……不思議な感じだったわ。まるでガイアが生きていたみたいだった……」
「ガイアとなんて会話したんだ?」
私はガイアとの会話を皆に聞かせた。
「そうか……あやつめ! してやったりの憎たらしい顔が目に浮かぶわ!」
ラセンに伝言を伝えると嬉しそうにして頬を緩めていた。
「ねえリアン? 能力板を貸してくれる?」
「え? ああ、分かった」
私はリアンから能力板を受け取るとガイアから託された力を確認した。そして写し出された文字にはっきりと大地の加護と呪縛解放術が記されていた。
「これでアリスを助けられる……」
「エニィ、このスキルに発動条件はあるのか?」
「相手を弱らせてから使うのとスキルは一回しか発動できないの」
リアンに言われて頭に入っていたスキルの内容を言葉にした。
「そうか……失敗はできないな。よし、とりあえずカイアスさんに報告しよう」
私はスキルの全てを話さなかった。それを言えば皆に使用を止められると思ったから。そう、これはガイアの子孫である私の使命だから何としてもやり遂げたい。
ごめんなさいリアン……。