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86話

「リアン‼︎」


 セラニの嬉しそうな声に周りの仲間達が集まってくるとホッとして安心する。


「リアン、何とか街の周りにいたモンスターは倒しておいたわ。もう大丈夫よ……何かあったの?」


 エニィは少し心配するような顔で俺を見ていた。俺の暗い顔を見て何かよくない想像をしているみたいだ。


「とりあえず休もう。後で話すよ」


 皆の表情には疲れが見えていた。皆強いとはいえ禁断の洞窟にいるモンスターを多数相手にしていたのだから無理はない。


 そしてカーネリアの街に行こうとした時、目の前にササラさんが颯爽と現れたのだった。


 アイナの装備が集まった後に俺はササラさんをカイアスさんの元に返そうと本人に直談判した所、断固として拒否されたのだ。俺としては勇者の装備が集まってササラさんの仕事が減るからと持ち掛けたのだが本人から俺にずっと付いて行きたいと言われてあまりの迫力に頷くしかなかった。


「ササラはリアンの元に来てから凄く生き生きとしてるの。あの子小さい頃にお父さんに拾われて諜報部として育てられてね、いつからか自分の生き方に何か迷いみたいなのがあったみたいなの。それでお父さんがリアンの専属に指名したって訳。それからリアンの行動を見ているうちに自分の未来が見えたってこの前嬉しそうに話してたのよ」


 後にエニィからそう聞かされた俺はササラさんに感謝とこれからもよろしくとお願いしたら大泣きされてしまったのを思い出した。


「リアン様、カイアス様から至急来て欲しいと連絡がありました」


「何だろう?」


「何かあったかもしれないわ。行ってみましょ? うちなら安心して休めるし」


 エニィの言葉に頷くとスキルを唱えた。


 エニィの家の前に突然現れた俺達に門番の男が飛び跳ねて驚いていた。それに軽く謝りながら中に入ってカイアスさんの元に歩いていった。


「おお! 来たか! 早かったな!」


 俺達を迎えるカイアスさんの表情は硬く思えて何か悪い知らせがあるのか少し不安になる。


「至急と聞いて……何かあったんですか?」


「まあ座りたまえ。皆疲れているだろう? 今温かい飲み物を用意している」


 焦る俺は宥められると言われた通りに柔らかい椅子に座った。


 じきにメイドさんから運ばれてきた温かい飲み物を口にして疲れが少し癒えた頃を見計らってカイアスさんが話し始めた。


「実はな、我が祖先であるガイアの遺言を伝えたいと思ったのだ」


「遺言?」


「そうだ。ガイアは息を引き取る際にこう言ったそうだ。天地を揺るがす災いが起こる時、我が元へ来いとな」


「災い……アリスちゃんの事でしょうか?」


 ウェンディはそう言って俺を見る。


「そうかもしれない……」


「我が元って事はガイアが眠る墓がある場所ね?」


 エニィがいうガイアが眠る墓の場所は知っている。確かこの街の近くにあったはずだ。


「そうだ。だが、あそこはモンスターが蔓延るダンジョンになっている。用心するんだぞ!」


「分かりました。今日はもう遅いから明日の朝に行こう」


 もう外は暗くなり始めていた。


「それがいい。今日はここでゆっくりと体をやすめるんだ。焦っていい事はない」


「ありがとうございます」


 美味しいご飯を食べても、ゆっくり湯に浸かっていてもアリスの事が頭から離れなかった。それは皆も同じで、疲れもあって終始無言になっていた。


 寝る前になると自然に皆が集まってくる。多分俺の話が気になっているんだろう深淵のダンジョンであった事を俺は皆に話した。


「まさかアリスを人質にとってくるなんて……」


 エニィは俺の話に絶句していた。


「卑怯な……」


 ラセンは眉間に皺を寄せて怒りを露わにしている。


「リアン様の話から敵が何をしようとしているのか分かってきましたね」


 マーナが俺の話からそう感想を口にした。


「そうね。狙いは洞窟解放術で昔のようなモンスターだらけの世界にする事……」


 エニィはその世界を想像しているのか表情は暗い。


「でも、アリスちゃんの中にいる何かが言った言葉が気になりました。ここには用は無いって……何かを探しているんじゃないでしょうか?」


 あの場にいたウェンディからそう言われた時俺もそれに引っ掛かっていたのを思い出す。


「この世界のダンジョンに何か恐ろしい物が隠されている?」


「もしくはモンスターの可能性もあるわ」


 マーナとエニィは考えを巡らせているのかじっと前を見て話した。


「だから巨大なダンジョンに……」


 アイナの納得したような言葉が聞こえた。


「それが分かってもアリスを人質に取られている以上下手なマネはできない……くそ!」


 敵が去り際に言った言葉が思い起こされると悔しさが襲う。今度手を出したらアリスの身が危ないと警告をされたのだ。


「リアン、何か必ず方法かあるはずよ」


「そうだぜ! 前を向いて行こうぜ!」


 そんな項垂れる俺にエニィとセラニが励ましてくれた。


 顔を上げて皆の顔を見ると諦めなど少しも感じなかった。


「明日は朝が早いからもう寝よう。ガイアの元に行けば何かがあるはずだ」


 ガイアの墓はあるダンジョンの中に建てられ、モンスターにその墓を守らせているらしい。それほどまでに守りたい何かがあるはずだ。


 翌朝、英雄の墓があるとは思えないその殺風景な場所に足を踏み入れた俺達はカイアスさんから受け取った鍵で入り口を開けると最下層を目指したのだった。


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