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83話

 俺はベッドで寝ていたはずなのに何故か暗闇の中に立っていた。


 ここは何処だ……。


 すると目の前にアリスの姿が浮かび上がる。


「アリス……」


 アリスは元気な笑顔を見せて俺を見ている。急にアリスのいない寂しさが胸を締め付けるとその姿がフッと消えた。


 現実に戻った時息苦しかった。何かが口を塞いで呼吸ができなかったのだ。


 口を覆う柔らかい感触に誰かにキスをされていると脳が認識すると俺の中で疑問が生じた。


 誰だ……こんな事をする子なんていたか……。


「ん……」


 甘い吐息を含んだキスに気持ちよくなって目覚めてもそのままキスを受け入れていると段々と息苦しくなっていた。


「ん⁉︎⁉︎」


 流石に苦しく目を開けるとすぐ目の前に成長したアリスの顔が映り、あまりの驚きに思わずアリスを押し退けていた。


「ふふふ……」


 目を惹くほどの可愛い幼い少女から成長した美しい姿になったアリスは妖艶な表情で俺を見つめている。


「はあ! はあ! ア、アリス……何でここに……」


「セト……せっかく悲しみから解放してあげたのに」


 アリスは哀れむような表情になって俺に言った。


 ここは寝室で周りでは皆んながすやすやと眠っていて起きる気配がなかった。こんな音を立てたら誰かが起きても不思議じゃないのに……何かアリスがしたんだろうか。


「アリス、これから何をしようとしているんだ!」


 俺の声にアリスの表情が虚な表情に変わる。


「世界は終わる……」


「お前は誰だ! アリスから出ていけ!」


「ふふふ」


 アリスの体が透明になって消えそうになった時俺は力一杯叫んだ。


「アリスー‼︎ 俺はお前を見捨てない! 絶対に助けるからな‼︎」


 朝になると皆に昨日の出来事を話していた。皆は俯いてじっと話を聞いている。


「まさかここに来ていたなんてね……」


 話が終わり沈黙を挟んで最初に口を開いたのはエニィだった。


「リアン様に会いに来たんでしょうか……」


 続けてマーナが悲しげな顔で言った。


「何か嫌な予感がするわ。まるで別れの挨拶に来たみたい……」


 アイナの言う通り俺もそんな気がしていた。


「では、これから何かが始まると?」


 ウェンディの問いかけに俺は考えを話す事にした。


「アリスは世界を壊す事を目的としているのは分かってるんだ。ラセンの話を聞いていると魔法で災害級の攻撃を放って街や城を襲うはずだ」


「リアン、私疑問に思っていた事があるの……」


 皆の視線がそれを言ったエニィに集まる。


「アリスは禁断の洞窟で何をしようとしていたのかしら……」


 それを聞いて俺はハッとした。


 ……何故それを今まで気にしていなかったんだ俺は!


「ラセンさんに聞いてみましょうか?」

 

 ウェンディに訊かれると俺は頷いた。


「ラセンにまだまだ話を聞いた方がいいかもな。そこで何かに気付くかもしれない」


 俺達はラセンに会いに行くことにした。


「皆でゾロゾロと何用かな」


 俺達はラセンがいる場所へと向かうとラセンは戦闘時とはまるで違う優しい眼差しで俺達を迎えた。何かじいちゃんを思わせる雰囲気で少し和む。


「少し話が聞きたいんだ」


「いいだろう。ちょうど暇を持て余していたところじゃ」


「いきなり本題なんだが、アリスは何故禁断の洞窟……アンタ達はレシナの洞窟って呼んでるんだったか、そこに居たんだ?」


 俺の疑問にラセンは少し間を開けると何かを思い出すように話し出した。


「お主らは洞窟解放術という言葉を知っておるか?」


 洞窟解放術……知らない言葉だ。皆も首を捻っているからその場は静まりかえる。


「洞窟解放術とは洞窟の中のもの全てを外に解き放つのじゃ。当然モンスターもな」


 恐ろしい……話を聞いた瞬間体がゾッとする。


「それじゃあ外はモンスターだらけになるわね……考えただけでゾッとするわ……」


 エニィも俺と同じ感覚だった。エニィと俺だけじゃない。周りを見ると皆の表情が青ざめている。


「じゃあアリスちゃんがそれをやろうと禁断の洞窟にいたと?」


 マーナはラセンにそう問いかけるとラセンは頷いた。


「レシナは魔族の領土から出ると人間の住む土地にある洞窟から次々とモンスターを世に解き放った。当然その土地は混乱に陥り、レシナの破壊と共に地獄の要因になったのじゃ」


「なんて恐ろしい事を……」


 アイナは更に顔を青ざめてそう呟いた。


「1000年前……ダーラから聞いた話では大昔の魔族が地上に溢れるモンスターに生態系が壊れる事を危惧すると、洞窟を作り、そこへ閉じ込めていたと言うのだ。まだ人間が進化する前のことじゃ」


 ダンジョンが多くある秘密が解かれた気がして俺はラセンの話しを夢中で聞いていた。凄く興味深い話だった。


「その洞窟を作る技術は魔族の城に隠されていたらしいが何処かのタイミングで盗まれてしまったらしいのう。今の魔族では洞窟を作ることはできないのじゃ」


「なんでアリスがその技術を知ってるんだ?」


 俺も思っていた疑問をセラニが口に出した。


「分からん……だからそれに気付いた当時のわしらはある程度レシナの場所を絞る事ができたのじゃ」


 なるほどな……。


「あの、もしかしてアリスちゃんは今禁断の洞窟にいるんじゃ……」


 ウェンディの言葉にその場が凍りついた。


「また1000年前の悪夢を復活させようとしてる……?」


 もしも禁断の洞窟のモンスターが世に解き放たれたら……。


 新たな脅威を目の当たりにした俺達はしばらく立ち尽くしていた。


「ああ! ここに居ましたか‼︎」


 起きて欲しくない悪夢はいつやって来るか分からない。俺はあの物静かなシャルトさんの青ざめた顔に最悪な状況を覚悟した。



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