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76話

「リーダー悪いが俺とレスナ、ガゼルは残ってここを守る事にした。流石に俺達には荷が重い」


 部屋に戻るとイラスタが少し申し訳なさそうな顔で俺に話しかけてきた。


「ああ、今までありがとうな」


 俺が労いの言葉をかけるとレスナがアイナの方に歩いて行く。


「アイナ……頑張ってね」


「レスナ……色々励ましてくれてありがとう」


 アイナとレスナは抱きしめ合い別れを惜しんでいた。


「じゃあな! 頼むぜリーダー!」


「おい‼︎」


 ヒュ!


 俺は薬の入った瓶を部屋を出ようとするイラスタに放った。イラスタはそれを受け取り目の高さまで持ち上げると微弱な光を放つ液体を眺めた。


「何だこれ?」


「万能薬だよ。それで妹さんの病気が治るはずだ」


「……いいのかよ……こんなレアなもん」


「まあ、リーダーだからな……」


「ありがとよ‼︎ 愛してるぜリーダー‼︎」


 イラスタは感動したのか目に涙を溜め大きな声でそう言うとレスナとガシルを連れ部屋を出ていった。


「……ったく男に言われても嬉しくないよ」


「では行くか?」


 ラセンの声で俺は後ろを振り向くと皆が俺を見ていた。


 これからどうやって魔族のいる大陸に、ましてやその奥にある洞窟に行かなければならないのか考えるだけで大変な旅になりそうだな……。


「ああ、でもどうやって行けばいいんだ?」


 俺の不安な表情を察したのかラセンはニヤッとすると隣で物静かに佇んでいるもうひとりの魔族、確かラスターという若い男に視線をやった。


「私もあなたと同じスキルが使えます。案内しましょう魔族の大陸に……」


「本当か⁉︎ それならすぐにでもダンジョンに潜れるな! 行こうぜ!」


 セラニが嬉しさを交えた驚きの声を上げると俺を見た。


「ダンジョンに行くならそれなりの準備をしてからだ。まずは買い出しをして装備を整えよう」


 その後俺達は街に買い出しに出ると食料などを揃えて部屋に戻り久々となる異空間を出した。


「異空間発動!」


 白い空間の歪みが丸の形で浮かんでいるのに向かってエニィ、セラニ、マーナが当たり前のように飛び込んで消えて行く。


「……え? 何これ……」


 ただひとりアイナは初めて見る怪しげなものに戸惑う声を上げて見ていた。


「アイナさん行きましょう! 凄いんですから!」


「え? ち、ちょっと……わ!」


 ウェンディに押されたアイナはそのまま一緒に異空間の入り口に吸い込まれていった。


「な、何これ……」


 アイナは白い世界に大きな屋敷が建つ光景を唖然とした様子で見ていた。


「リアンさんの道具で作られた世界なんです」


「凄い……」


 ウェンディの言葉が耳に入ってないくらい呆気に取られたアイナを連れて移動すると屋敷の前でエニィ達があるものを見て涙ぐんでいた。


 屋敷の隣りに建てられた花や星が彫られたドアに小動物の置物が乗る可愛いデザインの屋根、それはアリスがセラニにお願いして建てもらった家だった。


「まだ信じられないよ……アリスがいないなんて……そこのドアからお菓子を咥えて出てくるんじゃないかって……ううっ……」


 セラニは涙ながらに話すと崩れ落ちた。マーナに肩を抱かれセラニは声を上げて泣き出した。エニィとマーナも一緒に涙を流してアリスがいない家を見つめていた。


 大丈夫〜?


 セト〜お菓子買って〜

 

 目を閉じると俺の頭にアリスの笑顔と声が鮮明に蘇ってくる。


「くっ……」


 目頭が熱くなり俺は必死に涙を堪えた。まだ会ってからそれ程時間が長くないというのにアリスの存在は俺達にとってかけがえのない大きなものとなっていたことに気付かされた。



 その夜は異空間の屋敷で皆で寝る事になり大きなベッドに寝っ転がる俺はエニィ、セラニ、マーナ、ウェンディ、アイナと美少女5人に囲まれ男なら誰もが羨む光景となっている。


 そこで女性陣のたわいのない話をしているのを耳にしながら気付かないうちに俺は眠りに入ろうとしていた。それに気付いた女性陣の会話が意識が遠のく中おぼろげに聞こえた。


「……リアン寝ちゃったな」


「アイナ、じゃあ私達は戻るから……」


「ありがとう皆んな気を遣ってくれて……」


「皆んな平等が私達の決まり事ですから!」



「ん……」


 俺は体が熱く感じ眠りから覚めると汗をかいていた事に不快感を感じた。


 最初は部屋が暑くて起きてしまったと思ったが天井を見るとそこは異空間の中だった。それに気付くと同時におかしいなと寝ぼけていた思考が段々と動き出した。


 そして視線を天井から横に移すとすぐ近くで横になっていたアイナと目が合ったのだった。


「あ……」


 アイナは不意に目が合ったのが恥ずかしかったのか顔を赤くしていた。


 まだ状況が掴めていない俺は部屋を見渡した後エニィ達がいない事に気付いた。


 あれ?……皆んながいないぞ……。


 俺は色々な情報が頭で整理されていくと胸がドキドキとなり始めていた。


 この状況は……まさか……。


 そして俺は部屋に置かれたエニィの秘密道具が煙を上げているのを見ると全てを悟った。


「リアン……」


 アイナは俺が全てを理解したタイミングのいい所で普段見せないような色っぽい表情で擦り寄ってくると俺の腕に抱きついた。


 むにゅ


 俺の腕にアイナの柔らかい胸が当たるとドキドキしていた高鳴りは一段と上がる。布団を被っていたから分からなかったが今の感触でアイナが何も着ていないのが分かるともう理性を保つのが限界に近い。


「あ、アイナ‼︎」


 俺は抑えられない衝動からガバッと布団を巻き上げアイナにまたがった。


 アイナはやはり何も身に着けていなかった。鍛え抜かれた無駄のない肉付きからなる曲線美は俺の目を釘付けにする。


「リアン……来て……」


 色っぽい溜め息混じりのその言葉に引き寄せられアイナに覆い被さっていった……。


 

『ん……』


 目を覚ました俺は隣ですうすうと幸せそうな顔で寝息を立てるアイナが目に入ると心の底から嬉しい感情が湧き上がっていた。


 それにしても5人の女性と結婚する事になるなんて……普通に考えたら凄く羨ましい事だと思う。でも俺は皆を幸せにできるんだろうか……。


「ん……」


 そんな事を考えているとアイナが目を覚ましたのか隣でモゾモゾと音が聞こえた。


「おはようアイナ……」


 俺はまだ目を眩しそうに開けるアイナに朝の挨拶をすると頭が働き出したのかアイナは顔を赤らめて口を開いた。


「お、おはようリアン……」


 昨日の夜を思い出したのか……恥ずかしそうに挨拶を返すアイナは布団で顔を隠す。


 実は俺も内心は恥ずかしい。何年もずっと一緒にいた相手とこうして結ばれて初めての朝をふたりで迎えたのだから。


 そっと手をアイナの肩に回して引き寄せるとアイナは嬉しそうに俺の体に手を回した。


「リアン……私凄く幸せ……」


「俺もだよ。ずっと一緒にいような」


「うん……」



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