パーティ解雇の絶望から死のうとした俺、美少女達に救われ暗躍します！

74話

　俺はあちこちで復興作業をしている忙しそうに動く人達の横を通り過ぎていくと森の中にある一軒の廃屋に入っていった。

　ガチャ

「来たか……」

　何もない今にも崩れ落ちそうな家の中にふたりの魔族を匿っていたのだ。ひとりは老いた魔族の男だが眼光は鋭くかなりの威圧を放っていて相当な猛者だと分かった。もうひとりは若い魔族の男で知性溢れる面構えでアロンズのような涼しい顔をしていて落ち着いた印象を受けた。

「用って何だ？」

「お主がリーダーだと聞いてな……この大陸で一番上の者と話がしたい」

「何故だ？」

「このままでは世界が終わってしまう……一刻を争う事態じゃ……頼む……」

　あの恐ろしいほどの威圧を放つ魔族の猛者がこれほどまでに恐れる所を見ると段々と危機感が俺の中にできていた。

「分かった。皆を呼ぶから少しここで待っててくれ」

「なるべくはやく頼んだぞ……」

「リアンさんはその……魔族の言う事を信じるのですか？」

　皆の元に戻り事情を説明するとウェンディが俺にそう訊いてきた。疑うのも無理はない魔族にいいイメージは無く完全に俺も敵だと思っていたからだ。

「あのふたりは今まで見てきた魔族とは違うように思うんだ」

「私もセト、じゃなくてリアンと同じ意見よ。あのふたりの目に他の魔族のような敵対心が感じられなかった……」

　エニィは思わず俺の仮の名を呼び慣れていたせいかよく間違えるようで今回も俺の本当の名前を呼び直すと俺の意見に賛同した。

　実は昨日俺とアイナが互いに持っていた自責の念を晴らした後皆に名前を戻したいと直訴したのだ。仮面を外した今セトという名前は役目を終えたんだと……最初はセトという名前に思入れのあるエニィ、セラニ、マーナは寂しそうな顔を見せていたが最後は微笑みと共に納得してくれたのだった。

「俺はリーダーの言う事なら信じるぜ！」

　イラスタは離れた所から大きな声で答えると隣にいたレスナとガジルも頷いていた。

「俺も良いぜ！」

「私はリアン様を信じていますから！」

　セラニとマーナも首を縦にして賛成してくれた。

「ウェンディ大丈夫よ、リアンがいるし！」

「そうですね……行きましょう！」

　アイナにそう言われウェンディは納得したように頷いた。

　そうして皆を魔族の待つ廃屋に連れて行った。

「そうじゃ、名を名乗ってなかったなわしはラセンという、こやつはわしの孫でなラスターじゃ」

「よろしくお願いします」

　その後俺達の自己紹介を終えると俺は皆の中心に立って両手を前に出した。

「皆んな俺に触れてくれ、スキルを使う」

「あれを使うのね？」

　一度体験した事のあるエニィ達は俺の右腕に捕まると何も知らない勇者達は戸惑いながらももう片方の左腕に触れた。ラセンとラスターも俺の肩に手を置いたので心の中で行き先をイメージした。

　行き先は……ガイアグラスの一室。

「行け！」

　フッ

「ぐっ⁉︎」

「キャ！」

「うお⁉︎」

「わっ⁉︎」

　勇者達は突然の事態に驚く声を上げていた。ボロボロに朽ちた部屋の景色から急に豪華な家具が並ぶ部屋の景色に早変わりする。

「こ、ここは？」

　アイナは豪華な内装の部屋を見回してここが何処なのか考えているようだったのでそれに答えた。

「ああ、ここは聖都のガイアグラスに俺達が使っていた部屋だよ」

「マジかよ⁉︎」

　イラスタの声は部屋に響き勇者達は驚きを隠せず唖然としていた。

「ウェンディ、すまないけど教皇に魔族との対話をお願いできないか？」

「分かりました。今の時間なら大丈夫でしょう」

　部屋を出たウェンディが程なくして部屋に戻ると一息ついてから口を開いた。

「リアンさん、何とかお祖父様に説明をしてきました……大変驚いていて苦労しました」

「ありがとうウェンディ助かったよ」

「まあそうよね……いきなりここに魔族がいるって言ったら普通なら大騒ぎよ」

　エニィは騒ぎにならなかったことに安心しているようだった。

「では行こうか」

　魔族の老人の言葉に促され魔族のふたりを隠すように真ん中に歩かせて教皇の待つ部屋に入って行った。

　ガイアグラスで会議に使われる大きな部屋には重苦しい空気が流れ教皇を前に俺達はしばらく無言の状態が続いていた。

「まずはこの度の魔族の侵略に対して詫びよう……すまなかった」

　静まり返った部屋に老人の声が響いた。その言葉にはさすがの教皇も戸惑っていた。

「わしは魔族全員が人間を忌み嫌っていると思っていたのだが……」

「魔族の中でも人間達同様色々と複雑なものがありまして……人間を滅ぼし土地を奪おうと考える者、干渉をするべきではないと考える者、中立的な考えを持つ者など、これまでは魔王様が中立的な立場だったのですが先日病に倒れ代役に任された息子であるサーフェスが人間は邪魔な存在と以前から王に侵略を提言していたくらいに忌み嫌い今回の騒動が起きました」

　もう一人の若い魔族の男がこれまでの経緯を丁寧に説明する。

「そのサーフェスは先の戦闘で倒れた。この大陸に来ていた兵士も人間を嫌う者が選ばれていたようじゃ……だから魔族の侵攻は収まるはずじゃ」

「事情は分かった……が、それを言いに来たわけでは無いのだろう？」

　そう教皇に訊かれたラセンは恐怖に震えながら口を開いた。

「そうじゃ……この世界が危機に陥っておる……1000年前の悪夢が再び蘇ったのじゃ」