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69話

 窓から見える空は青く染まり太陽から差す暖かな光が俺を照らしている。普段なら気持ちのいい朝だっただろう……俺は慣れる事のない激しい痛みで強引に眠りから起こされるとただ痛みが引くのを耐えていた。


「ふぅ……」


 痛みが引くと深く息を吐く。


「大丈夫?」


「ああ、良かったよ今で……大事な戦いの最中に余計な心配をしないで済むからね」


 隣で寄り添っていたエニィの心配そうな顔を見ながら立ち上がった。


「行こう、エニィ」


 俺が手を差し出すとまだ震えの止まらないエニィの手がそれを掴みそのまま立ち上がった勢いで俺に抱きついた。


「セト……無理しないでね」


「エニィもな」


 俺は心配そうなエニィに軽くキスをするとふたりで皆のところに移動して行った。



 魔族がいる野営地にて……。


「お祖父様……もはや兵を止める事ができない状況です。この数日間にわたる待機命令に不満が噴出していて、いつ爆発してもおかしくありません」


「分かった……」


 ラセンは覚悟を決め入り口に向かって歩き出した。


「どうするおつもりですか⁉︎」


 ラスターは慌ててラセンの前に立ち塞がり行手を阻んだ。


「皆を説得するのだ。いかにこの戦いが馬鹿げたものなのかをな」


「戦いに飢えた者にそんなことをすればいかにお祖父様といえど失望され名に傷が‼︎」


「そんなものはもういいのだ……」


 ガチャ!


 ゾロゾロ!


 ラセンとラスターはいきなり部屋に入ってきた数人の男達を見ると時が止まったように動けなくなっていた。


「な、なぜお前が……」


「ふん! 俺の命令を聞かないと言うから来てやったのだ!」


 ラセンの驚いた声に不満げな顔で返したのは魔王の息子サーフェスだった。


「ワシは信じておらん! 王が人間を滅ぼせと言った事が!」


「父上が病に伏せている今、王は俺だ! 父上からもそう命を受けている」


「く……」


「命令だ! これから人間を滅ぼせと兵に伝え進軍するのだ英雄ラセンよ」


 ラセンは追い詰められ額に汗を浮かばせた。頭の中で最善の選択を選んでいると突如ドアが開かれ慌てた兵が叫ぶように報告した。


「に、人間達がこちらに向かってきております! 既に戦場は突如現れた人間の攻撃で混乱しています!」


「ふははは! 面白いではないか! この大陸には楽しませてもらえそうだ!」


 報告を聞いたサーフェスは思わぬ余興に喜び顔を歪ませて笑うと部下に目をやった。


「行くぞ! 無謀な人間の絶望に歪む顔を楽しもうではないか!」


 サーフェスは高らかな笑い声を部屋中に響き渡らせながら出て行った。


「ラスターよサーフェスの連れていた男達を覚えているか?」


「ええ……確か前に行われた闘技大会で上位3人の者達でしたね。いつの間に配下にしたのでしょうか」


「あやつらの目……まさかあれを使ったのか……」


「お祖父様?」


「とにかく後を追うぞ」


 嫌な予感をするラセンとそれをよく分からないラスターはサーフェスの後を追って部屋を出て行った。




 戦場では突如現れた突風と共に炎に岩石がいかずちが縦横無尽に暴れ回り密集していた魔族の兵を飲み込んでいくとたちまちそこは地獄のような惨状になっていた。


 魔族の兵士達は四方から襲う魔法にどこに逃げていいか分からずただ叫び声を上げるしかなかった。


「ふふふ」


 それを空から見下ろすアリスは体がゾクゾクと震え出す。


「ああ〜楽しい‼︎」




「す、すげえ! あのちっちゃいのは何モンなんだ⁉︎」


 アリスを除いた俺達は混乱した戦場を突っ切ると奥に感じる大きな力に向かって走っていた。


 俺は先頭を走り直線上にいる兵を次々と倒して道を切り開き本陣があると思われる奥へと進んでいく。


「もう少しだ! 遅れるなよ‼︎」


 やがて視界には荒らされた街が煙を上げて佇んでおり入り口に門番と思われる魔族の兵士が立っていた。


「どけ!」


 ザン‼︎


「ギャ‼︎」


 走っている足を止める事なく一気に間合いを詰めて兵士を斬ると門をくぐっていった。


「これからボス戦だ! 皆んなは邪魔が入らないように戻って来た兵士を倒してくれ!」


「任せろリーダー! そのかわり頼んだぜ!」


「ああ!」


「ほう……たったそれだけの人数で来るとは何のつもりだ人間よ」


 俺は低い男の声に気が付くと前から姿を現した4人の男達を見た。


「どうやらお前らがこの軍隊の大将みたいだな」


 一番後ろにいた男から大きな力を感じた俺はコイツだと確信した。


 コイツを倒せばこの作戦を終わらせられる!


「ははは! よく聞け人間共よ! この俺は魔族の頂点に立つ魔王サーフェスである!」


「直々に魔王が来るとはな! これは絶好のチャンスだぞ!」


 イラスタの言葉に俺も頷いていた。


 これはチャンスだ! コイツを倒せれば! 


「馬鹿め! やれ!」


 サーフェスの言葉を聞いた3人の男達は前に出て武器を構えた。


「勝負だ!」


 俺は剣を強く握ると体に光が灯される。


「セトさん! 頑張って下さい!」


 ウェンディの補助魔法だと分かると俺はウェンディを見て頷いた。


「雑魚が来たぞ! リーダーに近づけさせるなよ!」


 イラスタは四方から来る魔族の兵を見て叫んだ。


「よっしゃー! エニィ! マーナ! ウェンディ! 陣形を整えるぞ!」


 セラニの号令で陣形を固めるエニィ達。


「アイナ! ガジル! イラスタ! 陣形!」


 レスナも同時に叫び勇者達で陣形をとった。


「おお‼︎」


「了解!」


「おおー!」


 いきなりのクライマックスと言える魔王との戦いが始まる。


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