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66話

「おかえりセト! どうだった?」


 部屋に帰るとエニィに迎えられた。ちょうどお昼後だったので皆でお菓子を食べながら雑談をしていたらしい。テーブルには多くのお菓子が積まれアリスが嬉しそうに頬張っている。


「何とかなったよ。明日はダンジョンに行ってくるから悪いけど留守を頼むよ」


「分かったわ。気をつけてね」 


「でも、呪いの激痛がきたら……」


 ウェンディの不安に俺は笑って答えた。


「そんなに危険な所じゃないから激痛が来ても何とかなるさ。まあ勇者が4人もいるし魔族はもういないからな」


「じゃあ俺達も他のダンジョン行こうぜ!」


「ウェンディ何処かいい所ない?」


「分かりました。この辺の高難易度ダンジョンに案内しますね」


 エニィ達は俺がいない間も自分達で強くなろうと頑張っている。俺の力になろうとしてくれている事が嬉しかった。


「セト様! これからまた戦闘訓練に付き合ってください! まだまだ私達は強くならなければなりません!」


「マーナ……じゃあ異空間の訓練場でやろう」


 俺はマーナの頼みに最近セラニに作ってもらった異空間の訓練場で皆の戦闘訓練を始めるのだった。



 次の日俺は朝から勇者達とこの辺りでは最難関とされるダンジョンに移動するとパーティを組んで攻略を始めた。流石に気軽に来れる場所ではないから他の冒険者の姿は無かった。


 俺は後ろで勇者達の戦闘を見ながらダメな所を指摘してパーティの連携を強化する事に徹した結果、攻略が終わる頃にはかなり連携がスムーズに行われるようになり個々の能力の高さに驚かされていた。  


 やっぱり勇者とあって素質が普通の人とは違うんだな……。


 一番奥の層に辿り着いた俺達はそこでボスモンスターと遭遇した。


 俺はこのボスモンスターは戦ったことはないけどどんな奴かは知っている。

 

 6本足に大きな尻尾を携え体は金属より硬い。攻撃は剣のような鋭く切れ味のいい前足からの斬撃に毒を持った尻尾を突き刺さしてくる。動きも素早く油断はできない相手だ。


「コイツは結構厄介だぞ! 普通なら冒険者50人くらいで挑む奴だ!」

 

 イラスタもこのボスの姿に見覚えがあったのか大きな声を上げた。


「この装備なら大丈夫よ! 負ける気がしない!」


 レスナの言う通り勇者の装備は確かに強力なものだ。等級で言うと伝説に迫る物だと俺はみている。それを身に纏えば自信がつくのも分かる。俺の計算だと恐らく50レベルくらい上乗せできると感じた。


「俺も同じだ! 皆んな行くぜ!」


「アンタに仕切られるの嫌だけど分かったわ! アイナ! ガジル! 行くわよ!」


「うん! 陣形を固めるわよ!」


 レスナの言葉にアイナがそう返すと勇者達は戦闘を繰り返すうちに話し合って決めたそれぞれの位置に移動して雄叫びを上げるモンスターに攻撃を開始した。


 それから数時間後勇者達は見事にボスモンスターを倒していた。その戦闘は俺もダメ出す所は無くいい戦いだったと感心して見ていた。


 皆の動きは最初とはまるで違っていた。それはお互いの信頼関係ができた事によるものだ。信頼しているからこそ余計な事を考えず攻撃に集中できるのだ。


「おおっしゃー‼︎ やったぜ!」


 イラスタは沈黙したボスモンスターを前に勝利の雄叫びを上げた。


「皆んなおつかれさま! リーダーどうだった?」


「上出来だ」


 嬉しそうな顔をしたレスナが俺を見てそう言ったから褒めたのに何故か不満そうな顔に変わった。


 あれ……何か不味かった?


「何よもっと褒めてくれてもいいのに……ねえアイナ?」


「え……ああそうね」


 レスナに話しかけられたアイナは考え事をしていたのかそっけない返事を返していた。


「疲れたぜ! もう今日はここで休んで明日帰ろうぜ!」


「そうだな、ではここで野営する」


 時間が夜になっていた為イラスタの提案に頷きここで野営をする事にした。


 夜の食事を取ると皆で焚き火に当たり最初はイラスタとレスナがいつものように仲良く言い争いを始めたので俺は考え事をしていた。


 それは戦闘後に皆のレベルが上がっていなかった事についてだった。ボスの戦闘が終わった後さりげなく皆のレベルを聞いたところ上がっていないと返されたのだ。自分の推測が外れてこんがらがった頭でもう一度考えてみる。


 俺とパーティを組んだらレベルが上がりやすくなるんじゃなかったのか? やっぱりアリスの力か……いやエニィが前にアリスとパーティを組んだらしいがレベルが上がらなかったって言ってたしな……他に条件があるのか?


 一旦考えを整理しよう。まず上がりやすくなるのは俺とエニィ、セラニ、マーナ、ウェンディだ。その共通点は……まさか⁉︎


 俺はとうとう気付いてしまった! これしかないと結論付けると頭を抱えた。上がりやすくなっているのは全員婚約者だったのだ。何処までの関係になったらレベルが上がりやすくなるのか細かい条件は分からないが……。


 うん、これは誰にも言わないことにしよう……もう細かい条件なんて知らない、考えるのもやめよう。


 俺は絶対にこのことを封印しようと心に誓っていると誰かに呼ばれていることに気付いた。


「あの、聞いてる?」


「え? ああすまない」


 俺はレスナに呼ばれたことに気付くと謝りながら顔を上げた。


 すると全員の視線が俺に集まっていたので少し戸惑う。それまでの会話が一切耳に入っていなかった俺は少し身構えて聞いた。


「何か用か?」


「話聞いてた?」


 俺が問い返すとレスナは呆れた顔をしてまた返す。


「いや、考え事をしていた」


「もう! あなたの強さはどうやって手に入れたのか聞いてたのよ!」


 レスナの言葉を聞いて俺は少し考えてから答えを返した。


「すまないが秘密だ。あと先に言っておくがお前達にこの強さを与える事はできない。できたらやっているからな」


「そっかぁ〜 もっと強くなれたら魔族との戦いも楽になるのに! って思ったんだけどなぁ」


 残念がるレスナに俺が真実を言ったらどするのだろうか? そう思っていると今度はずっと俺を見つめていたアイナが口を開いた。


「あなたは何故仮面をしているの? フェイルシード教皇は仕方なくって言ってたけど……気になって」


「……」


 何と言えばいいのだろうか……考えておけば良かったな。


 俺は何と返そうか悩んでいるとイラスタが話に乗ってくる。


「そうだぜ! 実は魔族でしたってオチはなしだぜ!」


「ば、ばか! 本当だったら笑えないわよ!」


 考え込む俺にイラスタが笑いながらそう言うとレスナは慌てるようにまくしたてた。


「……過ちを犯した罰のようなものだと思ってもらって構わない」


「そう……」


 それしか言えなかった……実はアイナの視線が今日一日ずっと俺に向いていた事は分かっていたがあえて知らないふりをしていたのだ。


 アイナとは誰よりも一緒にいた時間が長かったから俺に何かを感じ始めているのかもしれない。


 それから男の俺とイラスタとガジルは外で横になりアイナとレスナはテントで寝る事になった。



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