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65話

 俺は教皇に呼び出されると勇者達の様子を聞いていたのだが話を聞いていると段々と不安な気持ちになっていく。


「まあ、そう言うことだ! 頼んだぞ!」


「はぁ〜 まあそうだと思ってましたからいいですけど……」


 教皇の話ではリーダーを俺にせんとかなり勇者達は息巻いているらしい。


 予想はできたから問題ないけど最初の俺に対する印象は最悪だろうな……。


「今勇者達を訓練場に送ったからワシらも向かうとしよう」


 そんな憂鬱な俺をよそに教皇は俺と勇者達の戦いが楽しみだと言って、やって来たシャルトさんと部屋を出ていく。俺はひとつ溜め息をつくと後を追って勇者達の待つ訓練場へ向かった。


 ガイアグラスの建物の裏側にある広い闘技場にはもちろん観戦者はいない。シーンと静まり返っていて真ん中に4人の男女が立っていた。


 俺はそのうちの一人、久しぶりに見るアイナに少し緊張していた。あれからウェンディ達と別れてどうなったのか以前から気になっていたのだ。


 アイナ……。


 やはりアイナの表情は相変わらず張り詰めていて俺の気持ちは沈む。


「待たせたな、彼がこれから君たちのリーダーになるセトだ」


「よろしく頼む」


「へ! まだ認めてないがな!」


 俺の前にいる男は俺を睨むように見ていて他の面々も嫌そうな顔を俺に向けている。やっぱり印象はよくないとよく分かった。


「何故仮面を? 自分の素顔を晒せないような人を信用しろと言うのですか?」


 今度は同い年くらいか少し上の女性が俺に食ってかかるとその言葉に返す言葉はない。言っている事は至極真っ当な事で何も言えなかった。


「彼は事情があって仕方なく仮面をしているのだ、ワシに免じて許してくれ」


 なんと教皇がそんな俺に変わって助け舟を出してくれたのだ。流石に勇者達はそれ以上何も言ってこなかった。


「ちっ、教皇にそう言われたら何も言えないな。でもさっきの約束は守ってもらいますからね!」


「分かっている。準備はいいのか?」


「私達は大丈夫よ」


 教皇の言葉を聞いた勇者達は話し合いを始めていた。


「誰からやる?」


「俺からやってやるぜ!」


「いえ、私から……」


「いや、全員でかかってきて来て構わない」 


 その会話を遮るように俺は剣を背中につった鞘から抜きそう答えた。


「なっ⁉︎……」


 恐らくこれで勇者達は負けられない意地とプライドで本気でかかってくるだろう。


「舐められたもんだな」


「でもちょうどいいわ。これで勝てなかったらリーダーとして認められるもの」


「そうね、まあ連携が取れない私達だったとしてもレベル100越えの4人を一斉に相手にするなんてありえないけど」


 勇者達の目は真剣でやる気に燃えていた。


 かくして勇者の装備を纏った4人と近い距離で対峙していたが俺は勇者達が行動するまで待つことにした。それまで気を研ぎ澄ませていると勇者達のやる気だった顔が徐々に曇り始めていた。


「あいつ……ただモンじゃないな」


「さすがのあんたでも分かるのね。あの人何者なのかしら……体が震えて動けないなんて初めてだわ」


 勇者達は俺とレベルが開いている事を肌で感じているのか警戒していたのだ。


「……レスナとイラスタは私が攻撃を仕掛けるから援護して、ガジルはあの人の攻撃に合わせて前に出て」


「アイナは大丈夫なのか?」


「恐いわ、ここから逃げたいくらい。でも、負けられない……もう負けたくないの!」


「……よし! やってやろうぜ! 皆んなで力を合わせれば負けねー‼︎」


「アイナ! 援護は任せて!」


 勇者達は覚悟を決めたらしい自然と自分の立ち位置を分かっているのか4人はバラバラに分かれて一旦俺と距離を取るとアイナが俺に向かって来る。


「行け! 3連追従弾‼︎」


「獄炎‼︎」


 弓と魔法……後ろのふたりは遠距離か……アイナは前衛、もう一人は重装だな。


 瞬時に勇者達の分析を始めると剣を構えた。


 迫るアイナを後ろのふたりが放った炎が飛び越えて俺に迫ると剣を一振りで飛んできた矢と火炎弾を払った。


「はあああぁ‼︎ 雷光剣‼︎」


 今度は頭上からアイナの稲妻を帯びた剣が俺に迫ると放たれた稲妻を自分の剣で吸収した。次に来る頭上から同時に振り下ろされたアイナ剣を素早く避けながらアイナに体当たりをして吹っ飛ばした。


「きゃあ!」


 ザー‼︎


 アイナが広い訓練場の端まで飛ばされると入れ違いに無口だった重装の勇者が闘争本能を剥き出しにして重装とは思えない速さで声を張り上げた。


「おおー‼︎ 破壊の一撃‼︎」


 両手でハンマーを持つと俺目掛けて振り下ろした。


 キン‼︎


 俺はその重そうな上から振り下ろされた一撃を避ける事なく剣で受け止めた。


 グググ!


「ぐっ! う、動かん!」


 ガタイのいい勇者は驚愕の表情で必死に力を入れて押し込もうとしていたが俺はスッと横にズレると男はバランスを崩してよろめいた。


 ズガン!


「がは!」


 俺の蹴りを背中に受けた男はアイナと同じく訓練場の端まで飛ばされて行った。


「なっ! アイナとガジルが⁉︎」


「そんな⁉︎」


 俺はそのまま動揺する後衛のふたりに近付くと前衛と同じく体術で床に寝かせたのだった。


「ぐあ!」


「きゃあ!」


 俺の周りには勇者4人が床に寝かされ驚いた顔で俺を見ていた。圧倒的な力の差に驚いているようだ。そりゃそうだ、俺はもうレベルが400を超えている。負けるはずがないのだ。


「あ、あいつ人間か? 俺達勇者が何もできないなんてことがあるのか……」


「よ、世の中広いわね。あんな化け物がいるなんて……でも教皇があの人を選んだ理由がよく分かったわ」


「確かにな、あれが味方になるなら頼もしすぎる」


 これで認めてくれたかな?


「もういいだろう! どうだ? これでもまだ認めんか?」


 教皇の前で息を切らす勇者達は答える気力もなく項垂れていた。


「異論はねえよ! 完敗だ」


 イラスタは仰向けに体を動かすと降参だというポーズをしている。


「私もありません」


「私もない」


「……賛成する」


 どうやらうまくいったみたいだな。


「うむ、ではセト殿よろしく頼むぞ」


「はい、明日この近くのダンジョンへ行くから朝に集合してくれ」


 そう言うとその場を後にしたのだった。

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