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63話

「ククク」


 俺の前にはガタイの大きい魔族の男が立ちはだかり大きな斧を肩に乗せて笑みを浮かべている。その顔には余裕しかなかった。負けるとは少しも思ってないのだろう。


「驚いたぞ! まさか人間如きが俺達魔族に打って出るとはな!」


「何故今になって人間を襲い始めた!」


 ヘラヘラと笑う魔族に聞きたかった疑問をぶつける。以前から俺は何故今になって侵略を開始したのかその理由がどうしても知りたかった。


「お前ら人間が俺達にケンカを仕掛けた。ただそれだけだ」


 何て……単純な理由なんだ。


「ならケンカを仕掛けた奴らだけにすればいいだろ!」


「ふん! 魔族の中でもお前達人間と同じで色々な考えを持つ者がいるという事だ! ちなみに俺は大賛成だ。弱い者を支配する事は強い者の権利だ!」


 魔族の男は斧を片手で軽々と振り回して叫ぶ。


「話は終わりだ‼︎ 行くぜぇ!」


 斧を高速で回転させながら素早く俺との間合いを詰めてきた。


「まずは小手調べだ‼︎」


 回転する斧を避けると木を薙ぎ倒し瓦礫を粉砕していく当たればただじゃ済まない威力だったが俺には恐怖や焦りが全く無かった。


 俺のレベルが上がり過ぎたのかこのガイアの装備の効果なのか負ける気がしなかった。


「逃げるだけかぁ! 打ってこい!」


「うるさいな……」


 俺はスキルを使うまでもないと剣を構えるとその場から移動した。


「なっ!」


 魔族の男は俺が消えたとでも思ったのか顔を左右に揺らして必死に俺を探している。そして目の前に現れた俺を見て恐怖を滲ませる焦った顔を見せた。


 思わぬ事態に動揺したのかガラガラの隙を見せる魔族に俺は躊躇なく剣を両手で持つと横に一閃した。


 ヒュン!


 ザン!


「ガ⁉︎……」


 チン! と剣を収め俺が後ろを振り向くと腹を斬られ驚愕の表情を浮かべながら魔族の男は倒れていった。


「バ、バケモノめ……」


 そして最後にそう言い残し動かなくなった。




「セトー‼︎」


 エニィ達はすでに戦闘が終わっていた俺と合流すると嬉しそうに勝利を報告する。


「私達魔族を倒したのよ!」


「ああ、見ていたよ。凄く連携が取れてたな」


 一瞬で片がついた俺はエニィ達の戦闘を見ていた。その流れる一連の連携技に体が震えた程だった。


「セト様が色々教えてくれたからスムーズに動く事が出来ました」


 マーナは嬉しそうに話すとエニィも続いた。


「それにセラニの強化してくれた装備もすごかったのよ!」


「ああ、俺も動きが違いすぎて驚いたよ。セラニありがとうな」


「へへっ! 照れるぜ!」


 セラニは恥ずかしそうに喜んでいる。


「ウェンディの魔法も助かったわ」


 まだエニィ達の輪に入りきれていないようで皆より一歩後ろにいたウェンディはエニィに感謝されると嬉しそうな顔を見せた。


「サポートが私の取り柄ですから。そういえば私、レベルアップしたような気がしたんですけど……」


 ウェンディはおかしいと戸惑っていた。確かにウェンディは普段戦っている時に魔法でモンスターにダメージを与えてレベルアップに努めていた。でもさっきは皆をサポートしただけで上がるはずはないのだ。普通ならば。


「ウェンディ、ギルドカード見て! きっと驚くわよ!」


「え? あ、はい……ええっ⁉︎」


 ウェンディはエニィに言われた通りにギルドカードを取り出すと普段より大きな声をあげて驚いた。


「148……」


「ふふ、信じられないと思うけどそれは本当の事なのよ」


「でも……こんな非現実的な事が……」


 まだ納得がいかない様子のウェンディに俺は分かる範囲で説明をした。


「俺も詳しくは分からないけど言えるのは2つで一つは俺とパーティを組んでモンスターや魔族を倒すと見ているだけでもレベルが上がる事と魔族はその上がる量が恐ろしく多いという事なんだ」


「セトさんには特別な力があるという事ですか?」


「多分あれだな」


「あれ?」


「とりあえず馬車まで帰ろう。歩きながら話すよ」


「あ! ちょうどアリスが来たわ」


 いつの間にか居なくなっていたアリスと合流すると皆で遠くに停めた馬車へ向かっていった。


「と、まあそういう事があって俺は禁断の洞窟で力を受け継いだんだ」


 俺はウェンディに禁断の洞窟であった出来事を話した。瀕死の状態で会ったあの若い男から引き継いだ力と呪いの話を。


「それであの……」


 恐らくウェンディはここに来る途中でいきなり苦しみ出した俺を思い出したのだろう。その表情は暗く絶句していた。


「これは俺が馬鹿な事をした罰だ、ウェンディは気にしないでくれ」


「でも……そうさせたのは……」


 俺はシュンとして立ち止まってしまったウェンディの肩に手を置いた。


「お陰でこうして強くなれた。魔族に対抗できる力を与えられて良かったと思ってるよ」


「……私もっと僧侶として勉強していつか解いてみせます! あなたの呪いを!」


「ありがとうウェンディ」


 やがて辿り着いた馬車にエニィ達が乗り込もうとしたので俺はそれを止めた。


「皆んな! こっちに来て俺に触れてくれないか?」


 俺は馬車の馬に触れながらそう言うと皆の顔には戸惑いと疑問符が浮かんでいた。


「どうして?」


 その疑問をエニィが聞いてきたので俺はスキルを試したいとお願いした。


 そして皆の手が俺に触れるとあのスキルを発動したのだった。


「行け! グラスサウザ!」


「わ!」


「キャ!」


 光に包まれて皆の驚く声が聞こえると次の瞬間見覚えのある風景が目の前に広がった。そこはグラスサウザで俺達が寝泊まりしていた部屋だった。


 どうやら上手くいったらしい、自然と笑みが漏れた。


「え……」


「ええ⁉︎ こ、ここって⁉︎」


「ここグラスサウザじゃねーか!」


 皆の驚く反応に俺はしてやったりの表情で見た。


「前に言ったろ? 瞬間移動のスキルを覚えたって」


 俺は教皇に報告に行くとかなり驚かれた。まあ向こうとしては今頃戦っていると思ってたらすでに討伐を終えて報告に来ているのだ。それはそうだと思いながら部屋を後にした。



 それから数日後俺の元に勇者全員が装備を得てここに集結するという話を聞くのだった。




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