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62話

 エニィ達は旅の合間を見つけてはセトの助けとなる為訓練を重ねていた。


 セトがいる時は戦闘に関する知識を貰いセトがいない時はアリスを相手に個々の技や連携攻撃などを磨いていった。


 エニィ、セラニ、マーナはセラニによって強化された装備とウェンディの補助魔法で普段の動きとは天と地の差が生まれ魔族との初となる戦闘はぎこちなく最初は慣れるのに苦労したが段々と動きに慣れて行くと練習の成果を発揮し始めていた。


 魔族の男デザは最初の怒りが恐怖という感情に置き換わるほどに戦慄していた。


「お、俺は夢でも見ているのか……何故攻撃が当たらない……何故俺に傷を負わせられる……何故……」


 人間とは弱く魔族に狩られる獲物という認識しかないデザは今自分が置かれている状況が信じられず困惑していた。


「はあぁぁ‼︎ 疾風飛翔撃‼︎」


 マーナは高く跳び上がると覚えたてのスキルを発動する。ホーネス城を出る際カーシャからスキル結晶を譲り受けた。そのスキルを更に進化させていたのだった。


 マーナの体に青いオーラが纏わり空を飛ぶかのように変則に動くとデザを翻弄する。一瞬デザが動きを見失った所をマーナは見逃さなかった。


「ク⁉︎」


 ザシュ!


 デザはマーナのスキルを必死に避けたが槍の先はデザの腕を捉えると再びマーナは空中に飛翔した。


「必中の5連撃‼︎」


 ヒュヒュヒュン!


 間髪入れずに今度はエニィからスキルが放たれ腕を押さえているデザを襲った。


 ドドドドス!


「グアァー‼︎」


 デザは追従する矢を落とすことも避けることもできずに体に受けると叫び声を上げてうずくまった。


「これで‼︎ 終わりっ‼︎ だぁー‼︎ 極大の一撃ー‼︎」


「……⁉︎」


 ドゴォ‼︎


 最後はセラニの巨大化したハンマーに押し潰されデザは断末魔を上げることなく息絶えた。


「凄い……あの魔族がああも簡単に倒されるなんて……」


 一連の戦闘を見ていたウェンディは次元の違う戦いに呆然と立ち尽くしていた。


 最高峰だと思っていたアイナ達の戦闘が霞むほどエニィ達の動きの速さやスキルの威力はウェンディにこの上ない衝撃を与えていた。


「やったわ!」


「練習の成果だぜ!」


「うふふ! この調子で頑張りましょう!」


 エニィ達は魔族との戦いを制すると唖然としているウェンディに話しかけた。


「ウェンディさんも補助魔法ありがとう」


「いえ、私何てこれくらいしか出来ないので……」


「十分な程の恩恵ですよ! みんなの力を底上げするなんて!」


「そ、そうですか? それなら嬉しいです」


「それにウェンディさん、みんなの事は呼び捨てにしましょうよみんなセト様の婚約者なんですから!」


「そうね! これからもよろしくねウェンディ」


「はい!」


 エニィ達はウェンディとまだ会って日が浅いがその人柄に当初の悪い印象はすでに無くなり仲良く健闘を讃え合った、ウェンディも皆の役に立てた事に笑顔が溢れていた。




 その頃アリスは魔族の男カドラスと楽しそうに戦っていた。


 過去にアリスと戦ってきた魔族達同様アリスの姿とは想像もつかない強力な魔法や動きにカドラスは焦りを見せていた。


「これはやばそうですね……」


 カドラスは瞬時にアリスに勝てないという結論に達すると冷静に逃げる事を最優先に頭の中で計算を始めた。


 まさかこんなバケモノがいるとは……勝てない戦いは逃げるのみ……私の速さは魔族の中でもトップクラスですが油断はしません。保険で少し足止めをさせてから確実に逃げますか……。


「凄い強さですねお嬢さん、どうでしょう今すぐにこの大陸から出て行くので私を逃してくれませんかね」


「え〜ヤダ! もっと戦おうよ〜!」


「仕方ありませんね……では良いものをあげますからこれで見逃して下さい」


「良いもの? 美味しいもの?」


 カドラスは黒い玉をアリスに放り投げるとそれは眩い光と共に大きな爆発が起こりアリスを巻き込んだ。


「はっはっは! ではご機嫌よう!」


 カドラスは全力でその場から逃げ去ると可能な限り距離を移動した。


 もう逃げ切れたと確信したカドラスは岩陰に身を潜ませると大量の汗をかいているのに気付いた。


 それは自分が今過去にないほど必死で神経を研ぎ澄ませていた事を表しておりそれが恐怖によるものだと分かると生きている事に安堵した。


「ふぅ……あと少しでこの大陸とはお別れですね……」


 ゾク‼︎


 カドラスは背筋が凍りつき生まれて初めて本心から恐怖を感じた、体が動かず全身の震えが止まらない。


 ガクガク‼︎


「ふふふ……」


 カドラスの背後から聞こえたのは女の声だった。


 か、体が……動かない……う、後ろさえ振り向けない……。


「私から逃げられると思っているの?」


 耳元で囁く声は感情が込められておらずカドラスは更に震え上がり命乞いでも何をしてでも逃れたいと思うほど恐怖に慄いた。


「バイバイ……」


 これで楽になれる……。


 カドラスは死ぬ間際恐怖から解放された事に安堵しながらこの世から消えていった。





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