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61話

 人間が見れば誰でも近づきたくないと思わせる瓦礫の山、そんな不気味な場所には魔族達は潜んでいた。

 

 瓦礫を隠れ蓑にして今も命をかけて装備を集めようとする勇者達を妨害しようと話し合いが行われていた。しかしそこには4人の魔族が任務に行ったきり帰ってこないという異常事態に困惑した魔族達の表情があった。


「どう言う事だ⁉︎ アイツらがやられたというのか⁉︎ 相手は人間だぞ‼︎」


「あの4人が裏切る可能性はゼロだ。そんな事をする意味も理由もないからな。しかも罠などにかかるような間抜けでもない……とすると」


「俺達は人間に対する偏見を見直す必要があるようだな」


「情報によると南の勇者が最後の装備を取りに向かったそうだ」


「西も北も同じく最後の装備を求めてすでに出発している……これでは俺達だけでは賄いきれんぞ⁉︎」


「残りは俺達3人……別れていけば問題はない筈だ」


「任せたぞ、本土からラセン様がこの地に来ると連絡があった」


「ほう! あの英雄がか! ではいよいよこの大陸も本格的に侵略が始まるのか!」


「そうだ、それまでにできる限り邪魔だてする勇者達を葬るぞ!」


 魔族の男達は湧き上がっている今まさに自分達を倒しに近づく者がいるとは誰ひとり微塵も思っていなかったのだった。




「あそこか……」


 俺はマーナに馬車を停めてもらうと遠くに見える昔魔物に滅ぼされた村があったとされる場所を眺めていた。


「ここからは歩いて近づきましょ」


「そうだな、みんな戦闘準備をして進もう」


 俺の掛け声で皆は自分の装備に身を固めると作戦を伝えた。


「聞いたところによると敵の数は3体だそうだ、俺とアリスは危険と思われるやつを一体ずつ押さえるから残りの一体を皆で対処してくれ」


「分かったわ!」


「任せろ!」


「頑張ります!」


 エニィ達はやる気に満ちていたがウェンディを見ると過去のトラウマからか表情は冴えなかった。馬車でここに来る途中俺はウェンディにパーティを解散した事を聞いていた。魔族に太刀打ちできずアイナを危険に晒してしまった事が原因だとウェンディは悔しそうに話していたのだ。


「ウェンディ、大丈夫だ。俺達は強い」


 俺はそんなウェンディを少しでも安心させようと声をかけた。


「でも、アイナさんでも敵わない相手に不安で……」


「ふふ、これを見なさい」


 エニィはギルドカードを出すとウェンディに見えるようにウェンディの目線までカードを上げて見せた。


「……2、254ってどうゆうことですか……」


 ウェンディはあり得ないレベルに驚きを通り越して呆然としていた。


「皆んなレベル200以上なのよ」


「そ、そんな事って⁉︎」


「セトなんて400超えてるんだぜ! 訳わかんないよな〜」


 セラニの言葉にウェンディは更に困惑してしまうと俺を見たので笑顔で返した。


「本当のことだウェンディ、これで安心しただろ?」


「少しの間で一体何があったんですか……」


「ウェンディは皆のサポートを頼む、さあ行こう」


「「「おー!」」」



 歩いて近づくにつれ俺は魔族の気配が伝わってくるのを感じた。


「情報は本当だったな、確かに魔族はいる……アリス」


「んー?」


 俺は隣で早く戦いたいのかソワソワしているアリスに小声で話しかけた。


「魔族を炙り出すからあの瓦礫の山に魔法をぶちかましてくれ」


「分かったー!」


 アリスは大きな声で答えると手を天に突き出して手のひらを広げた。


「デッカいの行っくよー!」


 アリスの手のひらが光ると辺りは風が吹き荒れ俺達は突風に襲われるとセラニの後ろに皆を下げる。


「セラニ! 防御を頼む!」


「おお! 皆んな! 俺の後ろにいれば大丈夫だぜ!」


 俺が視線を空に移した時目的地である瓦礫のある辺りの真上にデカい岩の塊が出来上がっていた。まるで瓦礫の石を吸い込むようにまだ大きくなっていく。


「お、おい! アリス⁉︎」


 そのデカさは想像以上に大きく加減を知らないアリスを止めようとしたが既に遅かった。


「行っけー!」


 アリスは手をバッと下に下ろすと空にできた大きな岩は赤く染まり熱い風を巻き起こしながら落下を始めた。


 ドゴォ‼︎‼︎‼︎


 地面に落ちた岩は砕け散り無数の破片が周囲に飛び散って暴風と共に飛んでくるとセラニは盾になって弾いてくれた。


「こ、これ魔族みんなやっちまったんじゃないか?」


 セラニが薄ら笑いを浮かべて口を開くと俺は魔族の気配が残っているのを確認して叫ぶ。


「いや、まだだ!」


 俺は剣を構えて魔族が姿を現すのを待ち構えた。


「それ!」


 アリスは魔法を唱えると今度は冷たい風を火の上がった場所に向かって放ち鎮火させた。


 俺は出てきた3体の魔族を確認すると戦うべき相手を瞬時に見極めた。


「アリスは右の奴を頼む! 俺は正面の奴! エニィ達は左の奴と戦ってくれ!」


「行こうみんな!」


「よっしゃー! いつもの陣形で行くぞ!」


「分かりました! ウェンディさんはセラニさんの後ろで皆のサポートをお願いします!」


「は、はい!」


 エニィ達は左の方にいる魔族に走って行く。


「アリスは一番強いアイツを頼むよ」


「まっかせてー!」


 アリスも右にいる魔族に飛ぶ勢いで向かって行く。


 皆を見届けた俺は正面にいる魔族に向かった。



 魔族のひとりデザは向かって来る数人の人間を怒りに満ちた顔で見ていた。


「どうやったか知らんがやってくれるじゃねえか‼︎」


 デザと対峙したエニィ達はマーナを前衛にセラニを盾としてエニィとウェンディが後ろに下がり陣形を固めた。


「あ〜怒ってる怒ってる!」


 セラニは魔族の怒り狂った表情にあーあという顔で見て言った。


「ふふ、不思議ねセトとアリス抜きでも魔族と戦うのが怖いと思わないなんて」


 エニィの言葉にマーナは頷いた。


「セト様のおかげですね、あの方の為にも頑張りましょう」


 パァ!


「私はあまり役に立てるか分かりませんが回復と補助魔法で支援します!」


「ありがとうウェンディさん」


「来た!」


 デザはほとんどモンスターのような理性のない獰猛さでエニィ達に襲い掛かった。




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