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41話

 セト様に連れられた宿屋の豪華な一室で私はお風呂に入り身なりを整えた。


 鏡には生気に満ちた私の顔が映っている。あの病が治ったなんて今も夢をみているみたいで信じられなかった。



 私は3年前までホーネス王国の王女だった。


 活発でおてんば姫と呼ばれる程元気な女の子……でも12歳になったばかりの私に突然未知の病が襲った。


 初めは体がだるくなる程度から始まり咳が止まらず食欲も失った。一番辛いのは常に体に痛みがある事だった。


 国王であるお父様は必死に治そうと医者・神官・薬に詳しい者を探してくれた。


 でもこの身に宿る病は治る事はなく次第に体を蝕んでいった……。


 そして私は城から姿を見せなくなりベッドの上で生活する日々が始まったのだ。


 その頃城では国王の後継者を誰にするか争いが頻発して国はバラバラになっていた。


 病気になる前にお父様は私を後継者にすると発表していた為だ。


 私の病を機に腹違いの弟ふたりが候補に名乗り出たのが始まりで実際はその親の第2王妃と第3王妃が後継者に自分の子をとお父様に進言したらしい。


 お父様はそれでも私を後継者にする事を諦めず保留とするとその頃から私の命が狙われるような出来事が起き始めた。


 危険を感じたお父様は私が元気になるまで安全な場所にと国から逃がそうとしてくれた。


 それを察知されたのか逃げる途中で何者かに襲われた。


 幸運にも近くにいた奴隷商人のジトールに助けられ私は奴隷として生きる事になった。


 それから来る日も来る日も私は奴隷の館で面談した。結果は分かる……こんな痩せこけた病人を雇うようなお人好しはいない。


 そんな日々に唯一すがっていた希望が打ち砕かれる出来事が起きた。


 ホーネス王国の王女マーナが亡くなって国葬をしたという知らせが耳に入ったのだ。どん底に突き落とされ生きる希望を失ってしまった。


 それから屍のような毎日が続いてもう体も限界に感じ死んで楽になりたいと思うようになっていた……。



 そんなどん底から私は生まれ変わった。セト様のおかげで……。


 私のどんな薬でも治らなかった病を一瞬で消し去った薬はどれほど高価で希少な物だったのか分からない……それを惜しみなく私の為に使ってくれた。それが病が治った事よりも嬉しかった。


 仮面を外したセト様の素顔を見た時思わず見入ってしまった。包み込むような心地よい雰囲気に優しそうな目……こんな方が私のご主人様なら例え騙されていてもいい一生お仕えしたいと心に誓った。


 コンコン


 想いに耽っていると部屋の扉を叩く音がする。


 扉を開けるとエニィさんが入ってきた。


 そして私にとって思いがけない事を話し始めると私は今が夢ではないかと思うほどの幸せに戸惑ってしまった。


 エニィさんは私を奴隷から解放してくれた人なのにその上こんなに嬉しい話を持ちかけてくれた。


 私はその提案に迷いなく頷いた。


 もう私はセト様なしでは生きられない……それ程までに私はセト様に惹かれている。


 エニィさんは私の髪を綺麗にセットしてくれた。


「うん! 綺麗よマーナ。今セトは異空間の屋敷で寝てるから行ってらっしゃい」


「ありがとうございますエニィさん。私、想いをぶつけて来ます!」


 おてんば姫だった私が17年の歳月を経て初めて恋に落ちた。


 セト様は私を受け入れてくれるのか不安もあるけどやんちゃだった昔の私ならきっとこう言うだろう。


 絶対に私に振り向かせてあげるから!


 


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