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36話

「ふぅ〜」


 初の魔族との戦闘を終えた俺は緊張から解放されてその場に崩れ落ちた。


「セト‼︎」


「凄い戦いだったぞ!」


 エニィとセラニが嬉しそうな顔で俺に飛びついて来るとそのままギュッと抱きつかれた。


「アリスのおかげだよ、俺は何とか食らいついていただけだし」


 正直アリスがいなかったらどうなっていたか分からない。


「でもセトがアリスの魔法発動の時間を稼いでいたから勝ったのかもよ?」


 後ろから俺に抱きついていたエニィが言った。


「うん! セトのおかげ!」


 横でアリスがそう言ったので少し嬉しくなる。


「そ、そうか、なら良かった」


「なあ! 俺のレベルが134になってたんだ!」


 セラニは興奮した様子で俺にギルドカードを見せる。


「本当かよ……」


「私も189になってたの。セトは?」


「ちょっと信じられないけど……」


 俺は手に持っていたギルドカードをふたりに見せた。


「なっ! さ、321⁉︎」


「もう訳が分からなくなってきたわね」


「ああ、だけどこれでまた強くなれた」


 さっきの魔族との戦闘で俺にはまだまだレベルが必要だと痛感したのだ。


「もう勇者が束になってもセトに勝てないわね」


「自分でも実感がないな、さてここで今日は野営だ」


「エニィ! ご飯!」


 早速アリスがいつものようにエニィにご飯をねだる。


「うん! 今作るわ!」


「わーい!」


 

 エニィが夕食を作っている間俺とセラニは異空間で話をしていた。


「なあセラニ、ここに家を建てたいんだけど出来ないか?」


「ん? おう! 出来るぜ!」


 聞いたところによるとセラニは親の手伝いで家具や農具を作っていた他家を作る手伝いもしていたそうだ。


「材料は以前買ってあるんだ」


 俺はセラニを家を建てる予定の場所に案内した。


「ここに建てたいんだ」


 俺は家を建てる予定の場所にセラニと立つ。


「ここね、材料はあれか……」


 セラニは木や石材など建築材料が積まれた場所に移動してしばらくの間材料を確認すると俺の方に振り返った。


「これだけあれば十分だぜ! どんな家にするか皆んなで打ち合わせしようぜ!」


 そして夕食を終えた俺達は早速家について話し合った。


「よしよし! 分かったぜ!」


 セラニは紙にスラスラと色々と書き込みながら俺達の要望を聞いていた。


「できた! じゃあ明日から空いてる時間にやるから楽しみにしてろよ!」


「楽しみね!」


「よし、じゃあ寝るか」


 俺は寝床につくとエニィとセラニに挟まれて横になった。ふたりと少し会話をした後久しぶりに全力を出した事もあり自然と眠りについていた。




 次の日アイナ達を発見したのはダンジョンの3階付近だった。


「流石に2つのダンジョンをくぐり抜けただけあって皆んな力をつけてるな」


 アイナ達の戦闘は前とは違ってそれ程苦戦している様子は見られなかった。


 ダンジョンの半分くらいを進んでいた所でアイナ達が野営の準備を始めたので俺は皆の元に帰って行った。


「あ! おかぁえり〜」


 俺が皆のいる最下層に行くとお菓子を咥えたアリスが俺を迎えた。


「他のふたりは?」


「異空間にいるよ!」


 俺が異空間に入ると装備の棚でエニィが何か作業をしていて俺に気づくと笑顔を見せる。


「おかえりセト」


「ただいま、何してるんだ?」


「アイテムの整理よ、ちょっと乱雑になってたから」


 カンカン!


「お! セラニやってるな」


「そうなの! さっきからずっとやってるのよ。見てくれば? きっと驚くわよ」


 何かを叩く音の方へ俺は家を建てているであろうセラニの元に向かった。


「は、早いな⁉︎」


 外から見ればもう形ができている状態だった。


「お! おかえりセト! 凄いだろ〜」


 俺は外見がほとんどできている家を見て驚いているとセラニは得意げな顔をしている。


「本当に凄いな、ほとんど外見が終わってるじゃないか!」


「レベルが134になっただろ? 凄えんだよ! スキルもバンバン使えるしさー」


 嬉しそうに話すセラニは作業を中断して俺の側にくると顔を赤くして言った。


「そ、それに俺達の愛の巣だしな……」


 俺はそんなセラニが愛おしく感じるとセラニを抱きしめた。


「ありがとうセラニ」


「おう……」



 タタタ


 異空間から出た俺達にアリスが走って近づいてくる。


「隠し部屋行こ!」


「そうだな、時間もあるし皆の戦闘訓練にもなるしな、案内してくれるか?」


「分かった!」


 アリスは嬉しそうに返事をする。


 俺は皆を呼んでアリスの後をついて行った。


 ゴゴゴ!


「へぇ〜これが隠し部屋かぁ! 中には凄いお宝が眠ってんだろ?」


 セラニは珍しそうに下に降りる階段を見て言った。


「ああ、でだ、戦闘中は俺がエニィとセラニに指示を出すから連携をとってやるぞ」


 戦闘を行う場合俺はパーティの連携を重視している。特にパーティが変わると皆の動きがぎこちなくストレスとなって精彩を欠いてしまう。結果命の危険に関わるのだ。


 前のパーティでも俺は皆に声をかけて連携を図るようにしていた。そのおかげか強いモンスターでも効率よく倒せるようになってアイナ達も連携を意識するようになっていた。

 

「分かったわ」


「おう!」


 隠し部屋に繋がる道にはモンスターが待ち構えていたがレベルが高い俺達の敵ではなかった。


「コイツは火の魔法に弱いんだ! アリス頼む!」


「はーい!」


 ゴゥー‼︎


 俺はまだ戦闘に慣れていないエニィとセラニにモンスターの対処法を徹底的に叩き込んでいた。


「セト凄く詳しいのね。モンスターが簡単に倒せてビックリよ!」


「それに説明が分かりやすくて助かるぜ!」


「前のパーティのお荷物になりたくなくて必死に勉強してたからな」


「そんなセトを追い出すなんてほんと勇者達は見る目がないわね」


「でもそのおかげでこうしてセトと一緒にいられるから感謝してるぜ」


「ふふ、そうね」


 こうして戦闘訓練をしながら進んで行くとやがて大きな扉が立ちはだかった。


「中にはボスモンスターがいるはずだが……アリスが暴れたいだろうから任せたぞ」


「任せて!」


 アリスは嬉しそうに扉を開けて中に入ると俺達も後に続いた。


 ドン! 


 ドン!


 中では猛獣が更に凶暴化したようなモンスターが侵入者に反応すると立ち上がりこちらに向かって歩き始めた。


「やるぞー!」


 アリスは魔法を唱えるとモンスターに向かって走り出した。


「グオー‼︎」


 近づくアリスに威嚇するモンスターだったがアリスは動きを緩める事なく目の前まで近づくとまた見たことのない魔法を放った。


 ゴゴゴ!


 モンスターの頭上に無数の岩が現れると勢いよく降り注いだ。


 ドォーン!


 ドォーン‼︎


 モンスターは岩を避けていたがひとつの岩に当たると大きな音を立てて倒れた。


「いけえぇー!」 


 カ‼︎


 ズドーン‼︎


 アリスはモンスターの真上に飛ぶと両手を広げて巨大ないかづちを放った。


 いかづちをまともに受けたモンスターは断末魔を上げる事さえ出来ず黒焦げになって消えていった。


「あー楽しかった!」


 アリスは満足した表情で俺達の元に戻って来るとエニィとセラニは呆然とした顔でアリスを見ていた。


「ほんとに何者なのかしらこの子……」


「あんな凄えモンスターを一瞬でやりやがった……」


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