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35話

 呪いの激痛と付き合っていく覚悟はできていた。


 本当はあの時死んでいたのを無しにしてくれたんだ……これくらいの代償はしょうがない。


 でも……曇るアリスの表情をはじめエニィやセラニの辛い顔を見るのは激痛以上に耐え難い……。


 ダンジョンの途中という来て欲しくない場所でも構わず襲う激痛に俺はうずくまるとエニィとセラニに寄り添われながらその痛みが引くまで耐えていた。


「セト⁉︎ 大丈夫か⁉︎」


 初めて見る俺の苦しむ姿に動揺したのかセラニは必死な形相で俺に呼びかけている。


 痛みが体中を駆け巡りその声に答えることもできないのが歯痒かった。


「セラニ大丈夫よ、じきに治るわ……セトは時々激痛に襲われる呪いがかかってるの……」


「そんな……治せないのか⁉︎ 辛すぎるだろそんなの‼︎」


「ダメなのよ……私達は見ている事しかできないの……」


「セト……」


 スッと痛みが引いて声を出せるようになった俺は心配そうな顔をするふたりの肩に手を置いた。


「すまない、もう大丈夫だ……そんなに辛そうな顔をしないでくれ、別に毎日起こる事じゃないんだから」


「今はそうだけどこれからどうなるか分からないわ! ……心配なのよ」


 エニィは涙を堪えていた。


「俺治す方法を探してやるからな!」


 セラニは流していた涙を拭うと真剣な顔で俺に言った。


「ありがとう」



 やがて最下層まで戦う事なく辿り着くと大きな扉の前で俺達は戦いの準備をしていた。


「さて、どんな奴が来るかな……この部屋にはボスモンスターがいるんだ。セラニは見ていてくれ」


「分かったよ」


「よし、じゃあ行くぞ」


 ゴゴゴ


「ククク……」


 中に入ると中は真っ暗だったがいつものように皆が入ると明かりがつき一瞬で中の様子が明らかになったがそこへモンスターの唸り声や息遣いは無く、代わりに低い男の声が部屋に響いた。


「他の勇者パーティと比べて随分早いと思ったがこういう事か……」


 男の肌は人とは違い青っぽい色をしており頭には短いツノが1本生えていた。人とは違う容貌に話す知能……俺は間違い無いと確信した。


「魔族か……」


 初めて見る魔族に緊張が走る。


「初めて見たわ……でも何でここに? この大陸にはまだ魔族はいないはずなのに……」


「どうやらこの大陸に魔族が攻めてくるのも時間の問題だな」


 とうとうこの大陸にも戦火が広がるのか……。


「この国の勇者パーティは誰も欠けることなく順調に行っているから調べに来たらまさか別の奴が動いているとはな」


「で、何の用だ? その俺達を倒しに来たのか?」


「本当は様子見に来たのだがな……面白い少し相手をしてやるか」


 魔族の男は腰から剣を抜くと座っていた台座から立ち上がった。


「エニィとセラニはここで見ていてくれ。俺とアリスで相手をする!」


「大丈夫? かなり強そうよ」


「セト! 大丈夫なのか?」


 エニィとセラニが心配そうな顔で俺の側に来る。


「大丈夫だよ、行ってくる」


「楽しそう!」


 俺は隣でアリスが嬉しそうにしているのが心強く見えると魔族の方へ向かった。


「ふん! 腕に自信があるようだが人間如きが俺達魔族に勝てる可能性はない」


「アリス、行くぞ」


「うん!」


「グラトバーンド‼︎」


 俺は腰を下ろして溜めを作った後地面を蹴り飛ぶように魔族に接近した。そのままスキルを放つと魔族は驚いた顔でそれを剣で受け流し反撃した。


「流石今まで俺達が放つモンスターを排除したことだけあるな!」


「今までのボスモンスターはお前らの仕業か‼︎」


 今までのダンジョンで感じていた違和感は魔族の仕業だったのだ。


 なるほどな、どおりで雑魚モンスターに釣り合わない強さをしていたはずだ!


 魔族の反撃をかわすと俺は間を開けずに次のスキルを放った。


「く! これならどうだガイアランス‼︎」


「ははは! いいぞ! 楽しくなってきた‼︎」


 魔族は笑いながらも俺のスキルを防いだ。


「これが魔族か! 強いな!」


 これまで対人戦をしてこなかった俺は初めて知能を持つ相手との戦いに神経を尖らせていた。


「気が変わったぞ! お前を殺したくなってきた!」


 魔族は目が赤くなると先ほどより速さが別人のように変わっていた。


 ブン‼︎


「速い⁉︎」


 魔族は剣を振り下ろす速度は並ではなかった。避けたと思ったが髪の毛が数センチ切られて宙を舞っていた。

 

 キン!

 

 次に来る一撃を受け止めると鍔迫り合いが始まる。


 ギリギリ!


 く! 力も凄まじいな……でも勝てない相手じゃないはずだ!


 俺の全力を出して何とかこの魔族との力は拮抗していたが戦闘はアリスの加入であっさりと終わりを迎えた。


「セト‼︎ どいて‼︎」


 俺は後ろから聞こえるアリスの声に反応すると後ろに飛び退いた。


「それ!」


 アリスは炎、氷、風を操り魔族を包囲した。


「馬鹿な! 3属性を一度に操るだと⁉︎ しかもこの威力‼︎」


 魔族は多方面からくる攻撃魔法に避けるのが精一杯のようで明らかに焦りが見えた。


「く! まさかこれほどの者がいるなどあいつは何者だ⁉︎」


 そしてアリスは動揺する魔族のそばに瞬間移動すると手を前に突き出した。


「バイバイ!」


「ウオーー‼︎」


 カ‼︎


 アリスの手から発動した白いエネルギー体は魔族を飲み込み消し去った。


「あー楽しかった!」


 アリスは満面の笑顔で俺の方へやって来る。俺は改めてアリスの強さに驚愕すると共にアリスがいれば魔族に負けないのでは? と思ってしまう。


「やっぱりアリスは強いな」


「お腹すいたー」


 俺は自分のレベルが上がっている感覚がするとギルドカードを見た。


「嘘だろ……」


 これまでこのセリフを何回か言ったがこの嘘だろは今までよりもその事実を疑うほどのものだった。


 321……。


 俺のレベルが300を超えていたのだ。



 エニィとセラニはセトとアリスの戦闘を心配そうに見ていたが勝利を見届けるとやったーとふたりは手を合わせて喜んだ。


 するとエニィはレベルアップによる体が軽くなる感覚を感じると同じく隣でレベルアップの感覚に不思議な顔をしていたセラニに叫ぶように言った。


「セラニ! 何でか分からないけどセト達とパーティを組んでると見ているだけでもレベルが上がるのよ!」


「え! じゃあ今の感覚って……」


「ギルドカード持ってる?」


「ああ! 今出す!」


 セラニは急いでギルドカードを取り出すとレベルを見た。


「はあ⁉︎ 何だこれぇ⁉︎」


 エニィも自分のギルドカードを見て言葉が出ない程の衝撃を受けていた。


「俺がレベル134ってどういう事だよ‼︎」


「私も189になってる……」


 ふたりは驚きを通り越して不安になる程のレベルの上がりように戸惑っていたが同時に戦力になれるという嬉しさもあった。


「とにかくセトの所に行きましょう!」


「そうだな!」


 ふたりは笑顔でセト達の元に駆けつけた。




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