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32話

 宿屋を出る俺に誰かが近づいてくる。


「セト様」


 フードで顔は見えなかったが声でササラさんだと分かると顔を向けた。


「ササラさん、どうでした?」


「間違いなく闇組織の仕業です」


 やっぱりか……。


「アジトの場所は分からないんでしたっけ?」


 エニィがカイアスさんが組織の足取りが掴めてないと言っていたのを思い出す。しかしササラさんは首を横に小さく振った。


「いえ、カイアス様は最近場所を突き止めたのですが相手は膨大な資金で高レベルの冒険者を集めていて中々踏み切れない様子でした」


 相手はかなり守りを固めてるようだ。


「ササラさん、この街のギルドに協力をして貰えませんか? これから僕がその組織に乗り込んで全員戦闘不能にしておくので捕まえて欲しいんです」


「セト様、いくらなんでも無謀だと……」


 ササラさんは流石に戸惑いを隠せない様子だった。


 まあ普通ならそうだと思いながら俺はギルドカードをササラさんに見せる様に出した。それを見たササラさんの普段変わらない表情が少し変わったような気がした。


「これでも?」


「あなたは一体……す、すいません少し驚いてしまいました。いや、少しどころじゃありませんね……正直これまでで一番かもしれません」


「あ、この事は秘密ですよ」


「承知しています。分かりましたギルドへ行って協力を求めます」


 そして組織のアジトを聞いた俺はササラさんと別れた。


 俺は一刻も早くセラニを助けたいと急いで教えられた場所に向かっていた。


 レベル250を超えた俺の移動速度は一瞬でスラム街を進み奥に佇む大きな建物の前に移動していた。


 すでに夜の暗闇に包まれ誰もいない不気味な雰囲気が漂っている。


「……待ってろよセラニ」


 俺は入り口の頑丈そうな扉に向かってスキルを放った。


 ドゴォ‼︎


 扉は大きな音を立てて吹っ飛んでいった。


 その瞬間建物から慌しい音がなり響き怒号が発せられた。


「敵襲だ‼︎ 侵入者は殺せ‼︎」


 入り口に立つ俺を一斉に武器を持った男達が取り囲んだ。


「なんだぁ⁉︎ コイツだけかよ! ここが何処だか分かってんのかぁ⁉︎ 」


 目の前の男が俺に対して怒鳴り周りの男達もヘラヘラと笑っていた。


「分かってるよバカ。捕まっている職人を返して貰う」


「やれ‼︎」


 俺の言葉で怒りに達した男達は襲いかかってくる。


 手加減はしない……これまで傷つけてきた職人の痛み思い知らせてやる……。


 

 1時間経った頃、俺はここのボスから聞いた建物の地下にある隠し通路を歩いていた。


 薄暗い廊下を歩いて所々にある鍵のかかった部屋を開けてセラニを探した。


 部屋にはやはり多くの職人が閉じこめられていた。


 中には痩せて虚な表情を浮かべる人もいて俺は回復薬を飲ませて後から来たギルドの人に任せると更に奥の部屋に入っていった。


 ガチャ


 その部屋のベッドに唸り声をあげるセラニが横たわっていた。


 セラニ……。


 体の所々にアザをつけていた。きっと捕まった時抵抗してできたものだろうと思うと心が痛む。


 回復薬を飲ませて目が覚めるのを待つ事にした。


「う……」


 セラニが目を覚ましたのは数分後で視線が泳ぎ俺を捉えた瞬間大粒の涙を流した。


「セト……ごめん‼︎ 俺……」


 セラニは泣きながら俺に謝った。


「謝る事はないよ……セラニは悪いことなんてしてないんだから」


 俺はセラニの頭を撫でながら言った。


 するとセラニは更に勢いを増して泣き俺に抱きついてくると受け止めた俺は泣き止むまで頭を撫でていた。


「さて帰ろうか」


「うん……」


 少し元気のないセラニと建物を出ると外は慌ただしくギルドの冒険者達が動いていた。俺が倒して気を失った闇組織の男達が次々と建物から引きずり出されている。


「セト様、さすがですね」


 ササラさんの声がすると思ったらいつの間にかそばにササラさんが来ていた。


「ギルドが協力してくれたんですね」


「はい、カイアス様からの依頼だと言えば彼らも動かないわけにはいかないですし、それにギルドもあの闇組織には色々冒険者を抜き取られて問題になっていましたからね」


「今回は色々助かりました。今度お礼しますね」


「いえ、これも未来のご主人様の為……では」


 ササラさんが消える。


 宿屋にセラニを連れて帰るとエニィが笑顔で俺達を迎えた。


「おかえり。セト、セラニ」


「ただいま」


「エニィごめん……勝手なことして」


 セラニが暗い表情で頭を下げるとエニィは笑顔で答えた。


「いいのよ、でも良かったわね。これからはあの組織に怯えることもないんだから」


 そうだ、これからセラニは自由に仕事ができる。俺達と一緒にいるよりこの街で冒険者の力になった方がいいかもな。


 そう自分に言いながらも心の中では少し寂しさを感じていた。


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