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31話

 ガラの悪い男達から女の子を助けた後場所を宿屋に移すと早速事情を聞くことにした。


「で、何で追われてるんだ?」


「まずは自己紹介しようぜ! 俺はセラニって言うんだよろしくな!」


 セラニは可愛い顔に似合わない口調で満面の笑顔を見せる。


「俺はセトだ」


「私はアリスよ!」


「エニィよ、よろしくねセラニ」


 皆の挨拶が終わるとセラニは元気だった笑顔を消して話始めた。


「実は俺一年前に地元の村からここに来たんだよ。それでここの鍛冶屋で修行してたんだけどある日すごいスキルを覚えたんだ」


「ってことは鍛治スキルだろ? そんな凄いのか?」


 鍛冶スキルは装備の修理や製作で使われている。凄い職人だと装備に特殊な効果を付与する事もできるがレベルが高くないと気軽に使う事ができない。それにスキルにも失敗がある為何日もかけて装備を仕上げていると以前武器屋の親父に聞いた事があった。


「違うんだよ、まあ覚えたのは鍛治スキルなんだけど元々俺は金属とかを合成するレアなスキルを持ってたんだ。修行を続けてそのふたつを応用したら何と装備の合成スキルを覚えたんだ」


「何それ⁉︎ 初めて聞いたわ!」


 エニィはそれを聞いて驚いた声を出した。


 俺もエニィ同様衝撃を受けていた。


 装備を合成するなんて聞いた事がない。それがどのような効果を与えるのかセラニが話始めるのをウズウズしながら待つとセラニはそれを察したのか大きい胸をはって話始めた。


「聞いて驚け! このスキルは装備の特殊効果を合わせることが出来るから物凄い装備が生まれるんだ!」


「す、凄いわね……きっととんでもない装備が出来る」


 俺は何故セラニが狙われていたのか察しがついた。


「なるほどな、そんなレアなスキルがあったら……」


「ああ、スキルがこの街の闇組織にバレて狙われるようになったんだ。もう匿ってくれる人がいなくて困ってたんだ」


「私もその組織は聞いた事がある……職人を道具の様に扱って体がボロボロになるまで働かせるって中々足取りが掴めないってお父さんが嘆いていたわ」


 そんな所にセラニをやる訳にはいかないな。


「じゃあどこに逃げたいんだ? 連れてってやるよ」


 俺の提案にセラニは嬉しそうな声で答えた。


「本当か⁉︎ どうしようかな……地元に帰ろうかな」


「じゃあ少ししたら送ってくからそれまで一緒に行動してもらうぞ」


「おお! それまで装備のメンテナンスは任せてくれ!」


 セラニは大きな胸をドンと叩くと自信満々に言った。


「そろそろ夕食ね、今日は何作ろうかなぁ! セト異空間出して食材取って来るから」


「ああ、異空間発動」


「わ! 何だこれ! すげえ!」


 俺はエニィの言葉に釣られて会ったばかりのセラニの前で異空間を出してしまった。


 いいのか? とエニィに視線を送るとエニィは頷いた。恐らくセラニを信頼できると判断したのだろう。


 セラニは異空間の入り口を見て驚いている。


「どうせだったらセラニに装備を見てもらうか」


 鍛冶屋の職人は装備の状態をよく分かると聞いていたので修理を含めて見て貰おうと決めた。


「いいわね、驚くわよきっと」


 異空間の中に入ったセラニは数々の国宝級装備を前に驚きを隠せないのか体を震わせている。


「な、何だこのヤバい装備の数々は⁉︎」


 セラニは装備の棚を興奮しながら一周した後息を切らせて叫ぶ様に言った。


「はあはあ……ど、どれもレア中のレア装備じゃないか! なあどこで手に入れたんだ⁉︎」


「禁断の洞窟にあったんだ」


「はぁ⁉︎ あんなヤバい所に行ったのか! セトってすげえ強えんだな‼︎」


 普通なら疑う素振りを見せる所だがセラニはそれをいっさい見せていない。素直な性格なのだろうか?


「すげえ……俺もこんな装備を作ってみたいぜ」



 その後夕食を食べているとセラニが突然立ち上がって俺に頭を下げた。


「頼む! 俺もパーティに入れてくれ! 何でもするから!」


「いいじゃないセラニがいたら助かるわ」


 エニィはあっさりと賛成したが俺は少し悩んでいた。


 うーん、どうしようかな……。


「少し考えさせてくれ」


 正直セラニが仲間になる事は嬉しいし心強い、でもエニィという婚約者がいる以上年頃の女の子を連れて行くのがはたしていいのか? 少し考える時間が欲しかった。


 チリン!


 腹も膨れソファーでくつろいでいると呼び出しの合図に俺は部屋を出て行った。


「勇者アイナのパーティは明日の昼頃到着するようです」


「遅かったですね」


「はい、本来なら今日の夜に到着予定でしたが道中で寄った村がモンスターに襲われたらしく……」


「なるほど……ありがとうございます」


 カイアスさんは自分の諜報部隊から一人ササラという若い女性を情報役として付けてくれた。


 ササラさんは流石あのカイアスさんの諜報部隊だけあって有能でアイナ達の情報は手に取るように分かっていた。


 ササラさんが消えるように居なくなると皆の元に戻った。


「みんな、予定変更だ」


 部屋に入るなりソファーでくつろぐアリスとエニィに言ったがセラニの姿がない。


「セラニは?」


「さっき出て行ったわよ? 忘れ物を取りに行くとか言ってたわ」


「大丈夫かな」


「私は止めたんだけどね。早くしないとって慌てて行っちゃったのよ。すぐ戻るって」



 しかしセラニはいつになっても戻って来なかった……。


 居ても立っても居られない俺はソファーから立ち上がった。


「遅いな、まだ戻って来ない所をみると……」


「捕まった可能性が高いわね」


「アリスはもう寝てるしエニィもここにいてくれ」


「場所は分かるの?」


「多分……さっきササラさんに調査しに行って貰ったから」


「手回しが早いわね」


「何か嫌な予感がしたんだ……ああいう組織は簡単には諦めないからな」


「気をつけてね。まあ大丈夫だと思うけど」


「すぐ戻るよ」


 俺は足早に部屋を出て行った。


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