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27話

 俺達は豪華な内装の部屋に通されるとソファーに座って目を閉じていた。


 緊張するな……エニィの親に一体何て言えばいいんだ。


 落ち着かない俺はまだ色々と何を言うべきか頭であれこれ考えていたが手に温もりを感じ隣を見るとエニィが俺の手を握っていた。


「セトなら大丈夫よ、あの禁断の洞窟から帰ってきた事からしたら大した事ないって!」


「それとは別の意味で修羅場になりそうで恐いんだよ……」


 そんな会話をしていると入り口の扉の方からドタバタと誰かが走る音が部屋に響いた。


 バァン‼︎


「え、エニィ〜 会いたかったぞ〜」


 勢いよく開け放たれた扉から整った顔がくゃくしゃに崩れた初老の男が出てきてエニィに抱きつくと嬉しそうに頬を寄せた。


「ちょっとお父さん! 恥ずかしいじゃない!」


 エニィは嫌がって離そうとするが男は力が強いらしくエニィは離せずされるがままでいた。


 この男が英雄の末裔カイアスか……。


 俺は初めて見るエニィの父親に挨拶しようと立ち上がった。


 満足したのかエニィから離れたカイアスが俺を見た瞬間恐ろしい程の殺気を感じた。


「エニィよ、彼はだれかな?」


 カイアスは微笑んでいるように見えたが目は血走り俺に殺気を送り続けていた。


「ああ、彼はセトよ。隣にいるのがアリス」


「はじめましーー」


 そして俺が自己紹介をしようと口を開くとカイアスはそれを阻むように言った。


「彼とふたりで話がしたいんだ。エミリーの所に挨拶して来なさい」


「分かったわ、アリス行きましょ! 美味しいお菓子があるの!」


「行くー!」


 バタン


 カイアスとふたりきりになると辺りはシーンと静まり返り重苦しいこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。


「さて、こっちに来てもらおうかな……」


 カイアスは俺を睨むと一足先に開いた扉を歩いて行った。


 はぁ〜これは骨が折れそうだな。しかし流石英雄の末裔だな、あの殺気は尋常じゃなかった。以前の俺だったら動けないぞ。

 

 俺が連れて行かれたのはまさに訓練所のような場所だった。


 人に見立てた木や色々な種類の武器が置かれているのを眺めているとカイアスが俺を見て不敵に笑った。


「ふっ、私の殺気に耐えた奴は久しぶりだ。それは褒めておこう」


 カイアスは手に剣を持つと俺を見た。


「間違いだと思うが一応確認しておこう」


「何ですか?」


「君は何者かね? そしてエニィとの関係を聞こうか」


 俺は色々考えた末に出た結論を口に出した。


「冒険者です……その、エニィを愛しています」


「そうか……なら仕方ないな」


 カイアスはやれやれと頭を掻くと目つきが更に鋭くなり剣を構えた。それを見て俺は逃げ道は完全に絶たれたと腹を括った。


 どうやら完全に俺を敵としたようだな……目が本気で迷いなく殺る気十分だ。


「今すぐこの国を出て娘に二度と近づかないと言うなら少し痛い目にあう程度で済まそうじゃないか……どうだね?」


 最後の忠告とでもいうのか……カイアスは今にも襲いかかりそうな体勢で話す。


「すいませんが……」


 俺の言葉はカイアスの逆鱗に触れたらしい。もの凄い勢いで俺に剣が迫っていた。そしてそれは躊躇なく振り下ろされた。


 ガキン‼︎


 マジか⁉︎ 本当に殺す気だ‼︎


 俺は心の奥では手加減が入ると思っていたが迷いのない斬撃を慌てて避けると剣が地面に突き刺さった。すかさず2撃目が俺に向かって襲いかかってきていた。


 ガキン‼︎


 ギギギ!  


 それを剣で受け止めるとカイアスは一瞬驚いた表情をしたがすぐにまた真剣な顔に戻っていた。


「なるほど! エニィがここに連れてくる程の男だ! 只者ではない事は確かなようだな!」


 俺から一旦距離をとったカイアスは何やらスキルを唱えていた。


「ならば全力で行こう、死んでもしらんぞ?」


 俺が剣を構えるとカイアスは大声で叫んだ。


「この、馬鹿者がぁ‼︎」


 カイアスの剣は眩い赤いオーラを纏い俺に向かって振り下ろされた。


 ガキン‼︎


 俺は剣を一振りするとカイアスの剣を弾き飛ばしていた。カランカランと剣が床に落ちる。


「ば、馬鹿な……貴様何者だ!」


 カイアスは床に転がる剣を見て驚きを隠せず俺を睨んだ。かなり動揺しているのか身構えて俺の答えを待っていた。


「だから冒険者です!」


 その時訓練所にエニィの声が響き渡った。


「こらぁー! 何してんの!」


「い、いや彼の実力をだな……」


 エニィに詰め寄られたカイアスはマズいといった顔をすると言い訳を言い出した。


「お父さんなんてセトに勝てるわけないでしょ!」


「ば、ばかを言ってはいけないよエニィ、私がこんな若造に……」


「セトはレベルが200を超えてるのよ」


「に、200だとー‼︎ 馬鹿な! ありえん!」


 カイアスはあんぐりと大きく口を開いて驚いていた。


「ごめんセト言っちゃた。お父さん分からずやだから」


 エニィは俺を見て舌を出して謝ったが俺はいいよと手で答えた後ギルドカードをカイアスに見せるとそれをカイアスは凝視した。


「254だと……まさか本当なのか……とりあえず話しを聞こうか」


 やっとまともに話せると思うと体から力が抜けた。


 ふぅ〜 とりあえず修羅場は切り抜けられたな……。





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