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26話

 隠し部屋から出ると俺達は最下層に降り立っていた。


「いっぱい遊んだからお腹すいたー! エニィご飯作って〜」


 アリスは戦いに満足したのかエニィに抱きついてご飯をおねだりし始めた。


「うん、私もお腹すいてきたわ! 今作るね!」


「わーい!」


 アリスは嬉しそうにはしゃぎ回っている。


「じゃあ俺はテントの準備をするか」


 数時間後エニィの美味しい夕食をたらふく食べた後俺達は異空間の中に置いたソファーでくつろいでいた。


「本当にここって便利よね〜 あ! そうだ! セト〜 ここに置きたいものがあるんだけどいい?」


「何を置くんだ?」


 俺は話に興味が湧くとエニィに聞いた。


「その前にまず聞きたいんだけど、ここで暮らすことってできるの?」


 異空間については時間がある時俺も色々調べたり試していた。


「異空間を繋げている間は可能だよ、多分閉じると空気が無くなってしまうんだ」


「じゃあずっと繋げていればダンジョンの中でも異空間で快適に過ごす事ができるってことよね? だったら家具とか持ち込みたいの」


 俺もそう思っていた。ここで暮らせるならどんなに快適か……家なんて建てたらダンジョン攻略が捗って最高だろう。


「前からここに家を建てたいって思っているんだけどなかなか時間がなくてさ」


 最近俺の目標は異空間の中にデカい家を建てることだった。


「そうしたらテントの準備もいらないし安全だし最高ね」


「だけどこの異空間の存在は仲間だけの秘密にしたいんだよ」


 目標を達成するには幾つもの壁があり、その一番の壁が身内以外を中に入れたくない事だった。


「確かに便利すぎるからあまり公にできないわね……」


「まあしばらくは家具をそこら辺に置くことになるけど将来的には家を建てよう」


「楽しみね!」



 夜も遅くなりテントの中で横になるとエニィが俺に話しかけた。

 

「ねえ、帰ったらお父さんの所に行かない?」


「え……」


 エニィの言葉に思わず固まってしまうと俺はとうとう来たかと心の中で呟いた。


「大丈夫よ! 私がついてるから! 色々力になってくれるわ」


「分かったよ」


 俺はどうせいつかは会う事になると思っていたので早く済ましておきたいと了承した。



 次の日になると朝から異空間で先程のアイテム達をアリスに鑑定してもらい整理をしていた。


「はぁ〜やっぱりどれも国宝級の装備だし宝石も結晶もレア物だわ」


 エニィは鑑定が終わった物を棚に置きながらうっとりした目をしていた。


「何か欲しい物があれば持っていっていいぞ」


「ありがとうセト」


 俺が宝箱に入っていた服を持っているとエニィの視線がそれに向いた。


「あれ? セトが持ってる服って宝箱に入っていたやつだよね?」


「ああ、どうやら全部の装備を集めないと効果が発揮できないらしいんだ」


「私でも知らない装備何て初めてだわ!」


「前のダンジョンでも兜を手に入れてさアリスに鑑定してもらったら「ガイアの兜」だったんだ」


「ガイアですって⁉︎ もしもあの英雄ガイアだとしたらとんでもない装備ね……白銀の装備を身に纏っていたって伝説からしてその装備と当てはまるし間違いなさそうね」


 俺はアリスの鑑定で「ガイアのころも」と判明した白銀の服を試しに着てみるとエニィは顔を赤くして見ていた。


「いいじゃない! 似合ってるわ! 王子様みたい……」


 見た目は確かに王族が着るような崇高なものに感じられたがまだ装備が集まっていないので普通の服のように何も効果は感じられなかった。


 数時間後……またアイナ達を監視して無事に最下層まで見届けると俺達はダンジョンを出ていった。



「じゃあ私の家に案内するわね。今迎えの馬車を手配するから!」


 街に着くなりエニィにそう言われると俺は少し緊張しながらエニィの後を付いて行った。


 途中で馬車に迎えられた俺達は長い坂を上がり街を見下ろす程の高台に着くと大きな屋敷が建っていた。


 す、すごいな……流石英雄の末裔カイアスの屋敷だ……こんな家初めて見たな……。


 大きな門の前で立ち尽くす俺は胸のドキドキが止まらずエニィの親に何といえばいいのか考えていた。


 そんな俺を見てエニィは少し微笑むと門にいる大きな体をした男に近づいて行った。


 男はエニィを見るといかつい顔を緩ませ大きく頭を下げた。


「お嬢様! お久しぶりです!」


「ただいま、お父さんは?」


「先程お戻りになりました」


「そう、じゃあ行きましょ」


 エニィに案内され俺とアリスは屋敷の中に入って行った。



 

 エニィの父親であるカイアスは椅子に座って落ち着かない様子を見せていた。


 昨日溺愛している娘が男と親しく歩いていたという話が耳に入るとすぐさま調査部隊を派遣したが足取りが掴めず歯痒い思いをしていた。


「どこにいるのだ……私の可愛いエニィよ」


 その時部屋にノックされる音が鳴ると使用人が慌てた様子で入って来て朗報と言うべき報告が耳に飛び込んできたのだった。


「カイアス様! エニィ様がお戻りになりました‼︎」


「何⁉︎ すぐに広間へ呼ぶのだ!」


 カイアスは飛び跳ねるように椅子から立ち上がると疾風の如く部屋を出ていった。




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