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24話

 私達は朝早くから2個目の装備を取るべくダンジョンへ向かっていた。


 馬車の中では皆の表情に笑顔が一欠片も無く会話も少しするくらいでこれから始まる死闘に向け意識を集中しているように感じた。


 きっとこの先のダンジョンが前のダンジョンよりも強い敵がいるからだろう……。


 いつ誰が死んでも不思議じゃない……昨日ガドインに言われた言葉が頭によぎる。


 そんな事させない……絶対に皆を死なせないわ……。


 やがて数時間が経つと私は馬車に揺られながら目を瞑ってリアンをパーティから外すきっかけとなった夢を思い出していた。


 あの夢……本当に起きたみたいに鮮明に覚えてる……まるで誰かに見せられている様な……。


 でも今考えてももう遅い……リアンはもう戻らない……。


 私は考えるのを無理やり忘れると見えてきたダンジョンを前に気合を入れた。



 ガン!


「グッ⁉︎」


 私は鈍い音とガドインの苦しそうな声を耳にすると視線をその方向へ向けた。ガドインが顔を歪ませ恐らくモンスターの攻撃を盾ではなく体で受けてしまったのだろうグラっとよろめいていた。


「私に任せて!」


 私は急いでガドインと入れ替わるように前に出るとモンスターにスキル「稲妻の一閃」を浴びせた。


 ビリ!


 バチバチ!


 ザシュ!


「ギェ〜!」


 剣から発生した電撃がモンスターの体を痺れさせるとモンスターは身動きひとつできずに後からくる私の斬撃になす術もなく息絶えた。


「助かった!」


「また来るわよ‼︎」


 前のダンジョンよりも更に強くなったモンスターを相手に苦戦を強いられていた私達は極度の緊張感の中で神経を擦り減らしながら戦っていた。


 私は戦場を必死に走り回って皆のサポートに徹するような動きをしていた。


 いつもは先頭に立って戦っているスタイルも今は敵に囲まれている……いつ誰かが危険な状態になるか不安で私は戦場を駆け回っていた。



「く! 何て硬さだ! 俺の攻撃が通らないだと!?」


 ガドインは攻撃を弾かれると信じられない事態に困惑していた。


 私達は音を聞きつけて出てきた金属より硬い体をした大きなモンスターに手こずっていた。


「僕の魔法も効かないなんて……」


 アロンズもショックを受けて呆然としている。


「皆んな諦めないで!」


 幸い私の攻撃は通っている。長期戦を予感して少し自分が焦っているのが分かると冷静になれと自分に言い聞かせた。


「きゃあぁぁぁ!」


 ゾク!


 後ろでウェンディの悲痛な叫びが大きな空間に響き渡った瞬間私の体が凍りついた。


 嘘であって欲しいと願いながら後ろを振り返るとその願いも虚しくウェンディが倒れている姿が目に入った。


「ウェンディー‼︎」


 ザシュ!


「ゲェ⁉︎」


 私は急いでウェンディの近くにいたモンスターを斬り捨てるとウェンディを抱き寄せた。


 ウェンディは目を微かに開けていたが反応がなく、白い服が血でびっしりと赤く染まっていたのを見て私の体から血の気がサーッと引いていく。


「ウェンディ……ウェンディィ‼︎」


 必死に名前を呼ぶ私の声も届かずウェンディは目を閉じた。


 そんな……私は……死なせないって誓ったのに……。


「アイナ! ウェンディはもう助からん! コイツを倒さなければ全滅するぞ!」


 ガドインの必死な声が聞こえてくる。


「すまないが僕は周りのモンスターを近づけさせないので精一杯だ! 君には使命があるだろ! ウェンディの犠牲を無駄にしちゃダメだ!」


 アロンズの必死な声が私を動かす。


「ウェンディ……ごめんなさい……」


 抑えきれない涙を流しながら落ちた剣を力強く握った。


 ここで終われない! 終わるわけにはいかない‼︎


 ガドイン達と合流した私は自制を忘れ無我夢中でモンスターにスキルを連発した。



「くそ! 後少しのはずだが!」


「はあはあ!」


 私達は徐々に体力を減らしながらも懸命に硬い体をしたモンスターと戦っていたがそろそろ体力も限界に近づいていた。


 モンスターも動きが鈍くなっている。その後少しが遠かった。


「こんな所で……負けられないのよ!」


 パァー!


 突然体に光が降り注ぎ、力が湧くのを感じるとそれが補助魔法だと気付いた私はハッと後ろを振り返った。


 そこには驚くべき人物が立っていた。


「申し訳ありません! 今補助魔法をかけました!」


「ウェンディ⁉︎」


「何⁉︎」


「今話している暇はありません! 戦闘に集中して下さい!」


「皆んな! 行くわよ!」


 ウェンディの無事な姿を見て士気が上がった私達は残った力を振り絞ってモンスターを倒した。



「ウェンディ……良かった……」


 信じられない状況でもウェンディの元気な姿に涙するとウェンディをギュッと抱きしめていた。


「でも何故だ? あれほどの怪我をしていたのに」


 私も思っていた疑問……腑に落ちないとガドインの質問に私はウェンディにくっついたまま話に耳を立てた。


「私も分からないんです。死の淵にいたのは間違いないんですが……その……」


 急に口をつぐむウェンディに私は離れ首を傾げて聞いた。


「どうしたの?」


「いえ、おかしいと思われるかもしれないのですが……リアンさんの声がして……その後瞬く間に体が回復していったんです」


 多分ウェンディは死の淵で幻想を見ていたかもしれない……だから言い辛そうにしていたのね。


 私はそう思うとかける言葉が出なかった。


「……」


 ガドインも同様に黙ってしまうとアロンズがその沈黙を破るように口を開いた。


「とりあえず考えてもしょうがないよ。途中にあった安地で休もうか」


「そうね」


 私は起きた奇跡に感謝しながら疲れた体を引きずり場所を移動していった。


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