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22話

「あ〜幸せ! 好きな人ができるってこういう事なのね〜」


 俺はアリスとエニィを連れて街に繰り出すと一夜にして距離が無くなった俺の腕に嬉しそうに自分の腕を絡ませて歩くエニィは周囲の注目を大いに集めていた。


「ちょっとくっつき過ぎじゃないか……」


 俺は女の子とこうしてくっついて歩くのが初めてでぎこちない歩き方をしているのが少し恥ずかしくなりエニィに自重を促した。


「いいの! 実はちょっとカップルが羨ましかったのよね〜」


 エニィは有名人であるカイアスの娘とあって周りの人々の注目は大きく謎の仮面男である俺とイチャつく姿に驚きざわざわと耳にその会話が嫌でも入ってくる。


 ざわざわ


「おいおい……あれってエニィ様じゃないか?」


「よく見たらそうよ!」


「隣のあいつは仮面なんて付けて何者なんだろうか」


「エニィ様に気に入られるなんて相当な金持ちか有名人かもね」



 街の情報屋からアイナ達の動向を掴んだ俺達は夜になるとダンジョンに向けて出発した。


「ね、ねえ……何で危険な夜になってからダンジョンに行くの?」


 ダンジョンに向かう途中エニィが俺に不思議そうな顔で聞いてきたのでそこで旅の目的を話していなかった事に気付いた。


「あ〜そういえばエニィに旅の目的を言ってなかったな」


 俺は歩きながらこれまでの事を話すと黙って聞いていたエニィは顔を膨らませて怒ったそぶりを見せた。


「そっか……セトは辛い人生を歩いて来たのね……許せないわ! そんなセトを追い出すなんて!」


 エニィは本気で怒っているようだった。


「俺の為を思っての事だと思うから今はもう何とも思ってないよ」


「私も勇者パーティが出来た事は聞いていたわ。今世界は魔族に侵攻されて大変な時だからお父さんもよく国に呼ばれてるし」


「さっきも話したけど俺達の目的は勇者の装備集めを影で手伝って行く事なんだ。これから行く所もそのひとつが眠るダンジョンなんだよ」


「分かったわ。でも安心してセトには私がいるからね絶対に離れないって約束する」


「私も!」


「ありがとうふたりとも」


 俺は頼もしく慕ってくれる仲間ができた事に嬉しくなり無意識に微笑んでいた事に気付いた。



 目的地のダンジョンに着くと周りは静かで真っ暗な暗闇が普通なら足を止める雰囲気を醸し出していたが俺とアリスは変わらない足取りで歩いていた。しかしエニィは俺の腕にしっかりとしがみつくと少し震えている。


 レベルの自信がそうさせているのか、それともこれまでの辛い経験が俺の心を強くさせているのか俺はエニィの反応が普通の感覚だよなと思いながら入り口をくぐり中に入って行った。


「ね、ねえ……」


「何だ?」


「な、何でモンスター達が逃げて行くの⁉︎」


 俺は呆気に取られているエニィを見てははっと笑って答えた。


「俺も最初驚いていたんだけどレベル差が開いているとモンスターは逃げて行くみたいだな」


「セトのレベルってそんなに高いの?」


「えっと、確か234だったかな」


「234⁉︎」


「驚くよな〜俺も信じられないんだけどさ」


 俺が取り出したギルドカードをじっと見つめエニィは見たことのない数字に驚いているようだった。


「ほ、ほんとだ……おとぎ話に出てくる勇者とか英雄でも150が最高なのに……それならセトが勇者になればいいのに」


「いや、俺はもう死んだと思われている人間だし勇者の手助けが終わったら自由気ままな旅をしたいんだ」


「楽しそうね! 私もついて行くわどこまでもね」


 そして前のダンジョン同様何もないまま最下層へと降り立った。目の前には大きな扉が姿を現している。


「ここがゴールみたいだな」


「緊張するわ……」


「モグモグ、行こうセト!」


 震えているエニィの横では楽しそうにワクワクしているアリスが待ちきれないと小さな手で扉を開けた。


 ギィ〜〜〜


 真っ暗で奥が見えない部屋に吸い込まれるように入って行くと扉は俺達を閉じ込めるようにバン! と閉じてしまった。


 ボ‼︎ ボ‼︎ ボ‼︎


 周り置いてある円柱から火が灯されるとその大きな部屋が映し出された。


「ブルルル……」


「あいつがここの番人か……」


「ヒィ‼︎」


「あんまり強くなさそう……」


 奥にいたのは大きな人の形をした灰色の肌にツノを生やしたモンスターで手には大きな体を隠せるくらいの盾と頑丈そうな鎧に槍を持っていた。


「アリスやるぞ! エニィはそこで見ててくれ!」


「気を付けてねセト、アリス!」


 エニィの声援を受けた俺とアリスは二手に分かれるともの凄い速さでモンスターに接近した。


 そこからは圧倒的な力の差を見せつけるような戦闘が始まった。


 俺は剣を取ると挨拶がわりにスキル「グラトバーンド」でモンスターに次々と攻撃を繰り出しそれを捌ききれないモンスターは体に傷を増やしていった。


「それ〜熱いよ寒いよ〜」


 アリスは炎と氷2つの魔法を同時に発動するとモンスターの動きを制限するように脚を凍らし炎は暴れるモンスターの体力を徐々に奪っていった。


「これで終わりだ‼︎ 聖光の一撃‼︎」


「グガァー‼︎」


 カ‼︎


 モンスターは何もできずに最後は俺のスキル「聖光の一撃」で焼け付く痛みと切られる痛みを全身に浴びて地面に倒れそのまま消えていった。



「す、すごい……」


 エニィはその圧倒的な戦闘に見入っていた。それは一瞬の出来事だったがその衝撃は凄まじくこの場にいれたことが幸運であったと思わせるものだった。そして何故か戦闘が終わると自分の体にある変化が起きている事に気付いた。 


「え……な、何で⁉︎」


 もしやと思い急いでギルドカードを見たエニィは驚いた顔でそれを凝視していた。


「れ、レベルが上がってる⁉︎」



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