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14話

 パラスの街から西に位置する勇者の装備が眠るダンジョンでは朝から洞窟内に騒がしい戦闘音とモンスターの断末魔が鳴り響いている。


 ドス‼︎


「グギャー‼︎」


 剣がモンスターの急所を的確に貫き断末魔を轟かせて倒れるのを確認した私は素早く別のモンスターに向かって走り出す。


 ガン‼︎


「アイナ‼︎ 今だ‼︎」


「任せて‼︎」


 ガドインが盾でモンスターの攻撃を弾くとその隙を狙い剣を振り下ろした。


 ザシュ‼︎


「ギャー!」


 倒れて動かなくなったモンスターを見ているとガドインが少し顔に疲れをにじませ私に話しかけてきた。


「ふう、流石勇者の装備が眠るとあって一筋縄ではいかないダンジョンだな」


「そうね今までのモンスターと比べて全然違う」


 ダンジョンの1階で早速敵に出くわすとその強さに驚いた。まだダンジョンに入ったばかりで体が温まっていない状態のままいきなり神経をすり減らすほどの戦闘を強いられていた私達はこの先の攻略に不安を感じ始めていた。


「いでよ! 僕の業火よ!」


 ボゥ‼︎


「今補助魔法をかけます‼︎」


 パァ‼︎


 アロンズとウェンディもいつものように自分の役割を果たそうと奮闘している。いつもと違う緊迫した戦闘が魔法やスキルの節約など考える余裕がないのだろう強力なモンスターに次々と使わせられるかのように放っていた。


 ひと通り敵を片付けた後ここに来てまだ間も無いというのに皆の顔に疲れが見えていた為休憩をとる事にした。


「ふぅ、まさか入ったばかりだというのにこの敵の強さとはな……」


 そう言ってガドインは浮かない顔で安全地帯にある岩の上にゆっくりと腰を下ろした。


 私は当初10階など短いと思っていた最下層への道も今や果てしなく遠い道を歩くようなものという認識に変わっていた。まだ最初のダンジョンだというのに魔族の侵攻に間に合うのか……不安な気持ちばかりが強くなっていた。


「でもやるしかないわ、私達にしかできない事なのよ、早く装備を取らないといつ魔族がこの地に来るか分からない」


 私は暖を取るために起こした焚き火の揺らめく火をじっと見つめながら答えた。もどかしかった。はやく装備を集めないと魔族がこの地に来てしまう……私の頭にはそれしかなかった。


「僕の魔法にも数に限りがあるからね、今日は最下層まで行こうと思わない方がいい」


 私はアロンズが珍しく口を開いたので思わず彼を見た。そこにいつもの涼しげな顔は無く真剣な眼差しで私を見ていた。序盤にも関わらずかなりの魔法を使っていたのは知っていた。多分無理な進行をしない様に焦りが見える私に釘を刺したんだろう。


「そうですね、テントも持ってきましたし無理せず行きましょう」


 ウェンディも飲み物を用意しながらアロンズの意見に同調する。慎重な攻略を薦めながら私を心配そうな顔で見ていた。


 私は旅が始まった時このパーティメンバーを誰ひとり絶対に欠けることなく使命を果たすと誓った。もう誰も失いたくなかった。冷静にならないとミスを呼ぶ……不意に昔リアンに言われた言葉が頭に浮かび私は心を落ち着かせようとウェンディから受け取った温かいハーブティーを飲んだ。


「ごめんなさい……私、自分が焦ってるって分かってるの。でも、何かしていないと落ち着かなくて……」


「アイナ、お前だけじゃない……皆アイツを失って心が乱れている。今そんな状態で無理をしたらいい事にはならん。時間をかけていいんだ……それが一番近道になる」


 落ち込む私にガドインはそう声をかけてくれた……でも私がそれを引き起こしたんだよ! そう言いそうになって思わず黙ってしまった。


 コク


 私は何も言えず頷く事しか出来なかった……。


 

 それから再びダンジョンを進んでいた私達は何とか半分の5階まで来ると安全地帯を見つけてここで野営をする事にした。


 時間はすでに夜になっていて皆の顔は疲れを隠せず会話する気力も無いのか次々と寝袋に入っていった。


 それを見て私も寝袋に入り目を瞑ると疲れの為かすぐに意識を手放した。


「……ん」


 どれだけ寝れたのか時間を見るとまだ少ししか経っていなかった。いくら疲れようが十分に睡眠をとることができない、夢に出てくるバルコニーで見せたリアンの絶望した表情が今日も私を眠りから起こした。


 これはリアンを死に追いやった私が受ける罰……リアンが受けた絶望や死んだ苦しさからしてみればこんなのは軽いもの。そう思い朝が来るのをぼうとした頭で待っていた。


 

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