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109話

「来てくれたのか……ラセンのじっちゃん……」


 ラセンの姿を見たセラニは涙が止まらなかった。強張った体は安心感から力が抜けると崩れ落ちるように地面にへたり込んだ。


「ふっ! わしだけではないぞ!」


 ラセンの後ろには大勢の魔族がやってきていたのだ。そして迫り来るモンスターを次々に葬り去っていた。


「あ、ありがとうございます……ラセンさん」


 マーナは意識が朦朧とする中、掠れる声で抱えてくれているラセンに感謝した。


「さあ、後はわしらに任せて休め」


「はい……」


 マーナが気を失うとラセンはウェンディにマーナを任せた。


「一旦ここから引くのだ。ここはわしらが引き受ける」


「ありがとうございます」


「行こうウェンディ!」


 セラニとウェンディが頷き合い、退いていくのを見守ったラセンは集まった魔族達に向かって声を上げた。


「さあ! 我らの同胞が犯した罪を償う時だ! 進めぇい‼︎」


「「「おお‼︎」」」


 ラセンを先頭に迫り来るモンスターを薙ぎ倒していく魔族達。


「ど、どうなってるんだ? 何故魔族が俺達を助ける……?」


 兵士や冒険者達はその光景に驚き、唖然として見ていた。


「おい人間! 祖国を守る意地はないのか! 立て!」


 倒れていた冒険者の男は魔族の男が差し出した手を掴むと立ち上がった。


「やってやる! 俺はこの国を守るんだ!」


「ふっ! そのいきだ! やるぞ!」


 また他の場所では魔族と一緒に戦う兵士たちがいた。


「まさか魔族が味方をするとはな! 感謝するぜ!」


「今は世界の危機だ! 魔族も人間も関係ないさ!」


「へっ! 気に入ったぜ! この戦いが終わったら一杯奢ってやるよ!」


 魔族の加勢により勢いを取り戻した兵士や冒険者達はモンスターの群れを薙ぎ払っていくと、その出来事はホーネス王国の中でじっと勝利を祈る国民達にも広がっていったのだった。


 そして……。


「国王様‼︎ モンスターの群れは完全に沈黙しました!」


 ガルス王はマーナが眠っている部屋でその報告を聞いた。


「そうか……魔族に大きな恩ができたな。さあ、魔族達を丁重にもてなせ! そして国民にも勝利を報告するのだ!」


「は!」


 ガルス王はそっと眠るマーナの頭を優しく撫でると部屋を出て行った。


「ガルス王よ、まさかこんな事態になるとはな」


 そこへ現れたのはモンスターに襲われ、ホーネス王国に避難していたガードル王国のランメル王だった。


「わしは前に教皇が言っていた事を信じる事ができなかった」


 ガルスの頭には少し前に行われた各国の王が集まる会議が思い出されていた。


「魔族といえど分かり合える者がいる……か」


 ガルスをはじめとした各国の王は教皇が言った事とはいえ、魔族が侵攻してきたことでその言葉が信じられなかった。もしかしたら教皇は魔族に操られているのでは? と疑う者もいたのだ。しかし、今回の事でふたりの中でその疑念が晴れようとしていたのだった。


「では、わしらも国を守った英雄達を迎えに出るとするか」


「今晩はいい酒が飲めそうだな!」


 ふたりは笑いながら歩いていった。


 ラセンは魔族の代表としてガルスとランメルに向き合っていた。


「この度は助太刀してくれた事に感謝する」


 ガルスはまずラセンに感謝を述べた。


「なに、これは我が同胞がした過ちを償う為にしたことじゃ」


「しかし、何故この事を知っていたのだ?」


「リアンじゃ、あやつが昨日ワシらの所に来て頭を下げたのじゃ。力を貸してくれとな」


 ランメルの問いにラセンが答えた。


「まさかリアン殿が……」


「その男はガイアの再来と噂され、英雄と呼ばれている者か?」


 ランメルはその名を知っていたというよりも最近よく耳にする名前で、以前から会ってみたいと思っていた人物だった。


「そうじゃ、マーナの婚約者であり恐ろしい程の力を持つ者でな、それでいても人を惹きつける不思議な男だ」


「なるほどな、是非会ってみたいものだな」


「して、これからどうするのだ?」


「明日にでもリアンの元に向かうつもりじゃ。なにせあちらにはモンスターを生み出す元凶がいるそうだからな」


「なんと! そんな存在が……」 


「まさかこの騒動の元凶なのか?」


「うむ、リアンから聞いた話から間違いないだろう。魔族の城に保管されていた古文書から大昔にこの世界を支配していたモンスターを生み出した始祖と呼ばれた存在だと分かった」


「そんなバケモノに勝てるのか……」


「誰もがそう思うだろうな、だが不思議とわしは心配しとらん。あやつが何とかしてくれると思ってしまうのだ」


「奇遇じゃな! わしもそうなのだ! リアン殿が負ける姿が想像できん!」


 ラセンはガルスは笑い合った後席を立った。


「さて、そろそろ行くかの」


 部屋を出ようとするラセンをランメルは席を立って「待ってくれ」と止めた。


「御仁よ、少し付き合わないか? いい酒があるんだ。俺は魔族の事が知りたくなった」


「ふっ、いいだろう」



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