108話
ホーネス王国に着いたマーナ、セラニ、ウェンディは盛大な迎えを受けながら城に入ると早速王の元へ向かった。
「マーナ様、モンスターの大群はもう近くまで迫っております」
大臣から報告を受けたマーナは父親である王に視線を向ける。
「分かりました。お父様、私達は最前線に赴きます」
「だめだ! 王女自ら前線に行くなど⁉︎」
「私は後ろから見守るのではなく皆を導きたいのです」
「しかし……」
「これを見れば納得して下さると思います」
「ギルドカード? なっ……レベル400……そんな事が……」
「前線に行くことをお許しください」
「……分かった。だが無理はしないでくれ」
「はい、私には心強い仲間もいますもいますから」
マーナは後ろにいるセラニとウェンディを見て微笑んだ。
3人はモンスターの群れが通るであろう平原に待ち伏せをする為、歩いて移動するとその時を待っていた。
「マーナ凄くカッコよかったぜ!」
セラニは兵士の前に立つマーナに笑顔で声をかけた。
「これが私の性格なんです。子供の頃からこうなりたいと訓練を重ねていましたから……でも、病にかかり一度は諦めてしまいましたがやっぱり気持ちは変わらないんですね」
マーナはふふっと笑いながら話す。
「マーナさんは芯の強い人なんですね。私には絶対真似できません」
「ウェンディさん、それは私も同じです。あなたの人を助ける魔法は私には真似できません。凄く羨ましく思っていました。それにセラニさんの人を守る強力な装備を作れることもそうです」
「ま、皆んなにはそれぞれいいところがあるって事だな!」
「そうですね!」
その時は来た……笑い合う3人の耳に大きな音が鳴り響いたのだった。
「来たぞ!」
「皆の者! 私に続きなさい! ホーネス王国を守るのです‼︎」
「「「おおー‼︎」」」
雪崩のように迫るモンスターの群れの上空に舞い上がったマーナは槍を両手で持つと青い光を纏い急降下する。
「飛翔爆降下‼︎」
ドォォォン‼︎
その威力は数百いたモンスターの群れを飲み込む程の大きな爆発を起こして地面に大きな穴を開けた。
「なんて威力だ! これなら勝てるぞ!」
「俺達もマーナ様に続くんだ!」
兵士達もその光景を目の当たりにして士気が上がる。
「よーし! 俺も負けてらんねぇ!」
マーナの攻撃に触発されたセラニは大きなハンマーを軽々と持ち上げると後から来たモンスターの前に立ちはだかった。
「くらえ! 破砕の剛撃だあ!」
ドゴォォ‼︎
青いオーラを纏ったセラニは地面に叩きつけたハンマーから強い衝撃が走るとモンスターの群れを襲った。
「凄い! モンスターの群れがまた吹っ飛んだぞ!」
「聖なる光よ……邪悪な存在を焼き払え!」
ウェンディは手に持つ杖を掲げると眩い光がモンスターの群れを焼き払う。それを次々と打ち込み大量のモンスターを葬っていった。
兵士達は目の前に広がる次元の違う戦いを見せられ唖然とする者、喜びを爆発させる者で溢れ、その誰もが勝利を確信したのだった。
「勝てるぞ! モンスターを一匹たりとも街に入れるなよ!」
「「「おおー‼︎」」」
しかし、次々と押し寄せるモンスターの群れにマーナ達は次第に疲労が重なって勢いが落ち始めていた。
「くそ! どれだけいるんだよ!」
セラニはスキルの連発で流石に疲労は隠せず、予想を上回るモンスターの数に焦りを感じていた。
「マーナさん! モンスターの群れはどこまで続いているんですか!」
ウェンディはスキルでモンスターの群れを葬って地上に降りたマーナに大きな声で話しかけた。
「……まだまだ終わりが見えません!」
「そんな……」
「一度引くか⁉︎」
「ダメです! それでは街や城が!」
マーナは引く素振りを見せず、戦う意志を示した。
「ウェンディはまだ戦えるのか?」
「正直もう辛いですけど……でも、マーナさんに最後まで付き合います!」
「へっ……しょうがねえな……」
セラニはふたりについていくことを決めると覚悟を決めた。
「リアン……ごめんな」
セラニはリアンの顔を浮かべて謝ると再びモンスターの群に飛び込んでいった。
「はあはあ!」
マーナはもうスキルを打つ力が残っていなかった。
「リアン様……私をお許しください……」
それでも迫るモンスターの群に立ちはだかるマーナを助ける力は誰にも残っていなかった。
「マーナ! 異空間を出すからこっちに来るんだ!」
セラニはマーナに声をかけるもマーナは首を力無く横に振った。
「ごめんなさい……私はもう動けません……ふたりだけでも逃げてください……」
「ダメです! リアンさんが悲しみます! リアンさんだけじゃない! 多くの人が悲しむんです! だからお願い! こっちに来て‼︎」
ウェンディは泣き叫ぶような声で必死にマーナへ訴えた。
「あ、危ない! マーナ‼︎」
マーナに向かって一匹のモンスターが襲いかかるとセラニは叫んだ。
セラニは思わず目を閉じた。マーナが死ぬところを見たくなかったのだ。しかし、耳に聞こえたのはマーナの悲鳴ではなくモンスターの断末魔だった。
「ああ……」
セラニはマーナを抱える人物を見て涙が溢れた。
「待たせたな」