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106話

 アリスが深刻そうな顔で尚且つこのタイミングでそれを言ったのは何かあったんだろう。


「それが今回の件と関わりがあるってことか?」


 俺がそう訊くとアリスは小さく頷いた。


「私からアイツがいなくなる時、意識が戻ったの。その時ね、微かに聞こえたの……我が願いは果たされたって」


「そういえばアイツは何が目的だったんだ? 昔のモンスターが支配する世界に戻すってことは分かってるけど」


 以前アリスを乗っ取った奴が何の目的で洞窟を解放していたのか俺達の中で疑問として残っていた。ただモンスターを地上に解き放ってもこの世界には人間の他に魔族もいる。元のモンスターが支配する世界を作る事なんてできないはずだ。


「アイツ、前に嬉しそうに昔話をしてたの……モンスターが支配していた大昔の話……その中でモンスターは全てひとつの存在から生まれているって言ってた。アイツはその存在を始祖と呼んでいた。そしてそれは魔族達に封印されたらしいの」


 アリスの話はずっと前から抱いていた奴が何を探していたのかがやっと分かる答えだった。そしてさっきイラスタが言っていた巨大なモンスターはまさにその始祖だったのだ。


「なるほどね、おかしいと思ってたのよ。今まで洞窟の解放に没頭していたのにいきなり城を襲っていたから」


 エニィの中でも腑に落ちたようだ。


「始祖はカラナ王国の洞窟にいたんだな……」


 見つけたアイツは相当嬉しかったろうな。そういえばカラナ王国でアイツと戦った時、いやに機嫌が良かった気がする。


「私、しばらく体を乗っ取られていたからカラナ王国の近くにある洞窟で何があったか知らなかったの」


 アリスは奴が最期に残した言葉を思い出したから朝から元気がなかったのか……。


「でも、これでやる事はハッキリしたな!」


 セラニはさっきまでずっと装備の強化をしていたにも関わらず疲れを見せていなかった。


「ああ、その始祖を倒せばモンスターは生まれない」


 俺はもしかしたらモンスターのいない世界が実現するんじゃないかと思い始めていた。モンスターがどうやって生まれるのか分かった以上、始祖を倒せばもうモンスターは生まれないのだ。


「リアン様……私をホーネス王国に連れて行って下さい。多分モンスターの本体はこちらでホーネス王国の方にはそれほどの数は行ってないはずです」


 マーナは生まれ故郷であるホーネス王国に行きたがっていた。気持ちは痛いほど分かる……でもひとりで行かせる訳にはいかない。


「人選はリアンに任せるわ」


 エニィにそう言われ、俺は決断した。


「マーナの言う通り恐らくこっちに向かってるのは本陣だ。だから加護を持ってる俺、アイナ、エニィ、アリスで始祖と戦いたい。ホーネス王国にはマーナ、ウェンディ、セラニで行ってくれないか?」


「ありがとうございますリアン様……私は愛する祖国を必ず守ってみせます」


「分かりました」


「俺もいいぜ!」


 マーナ、ウェンディ、セラニが納得してくれた事に感謝した。


「じゃあ明日に備えて休もう」


 話し合いは終わり、それぞれやる事を思い出したかのように散らばっていった。


 その夜……。


「何かこのメンバーの組み合わせって珍しいな」


 俺は異空間の屋敷にいた。そしてベッドの上で明日ホーネス王国に行くセラニ、マーナ、ウェンディと一緒に横になっていた。いつもは皆んなで寝ていたけど、もしかしたら数日会えないかもしれないからとエニィ達が気を利かせてくれたのだ。


「今日はいっぱい甘えちゃいますから!」


「私もリアン様に沢山甘えたいです」


 ウェンディとマーナが密着してきて温かい体温といい匂いが俺の心を癒す。


「俺も!」


 セラニもふたりを見て嬉しそうに俺の上に被さって来きた。俺はなんて幸せなんだろうか。


 ウェンディとマーナはいつも一歩後ろにいた。アリスを始めとしてエニィやアイナの距離が近くていつもふたりは少し遠慮しているように思えた。だから俺もふたりに話しかけたり、気を使うようにしていた。俺は皆んなが好きだからひとりでも寂しい思いをさせたくないし、悲しい顔は見たくない。


「セラニ、マーナ、ウェンディ……いつも一緒にいてくれてありがとう。俺、皆んなに会えて凄く幸せなんだ。だから……絶対に無理はしないで欲しい……」


 俺はあらためてその存在の大きさに気付き、誰一人として絶対に失いたくない思いを打ち明けた。

 

「嬉しいです……私も凄く幸せです。リアンさんに……好きな人に愛されて」


「私は絶対に死なないと約束します。リアン様と添い遂げる為にも」


「大丈夫! いざとなったら異空間に皆んなを詰め込んでやるからさ!」


 皆んなの言葉を聞いて少し安心すると温かい体温に包まれて眠気に襲われ気持ちよく眠れそうだった。


 ……のだが。 


 あ……ちょっと……。


 さっきから俺の体に乗るセラニの立派な胸が俺に刺激を与えていて、いやでも体が反応してしまう。セラニは無意識に押し当ててくるからタチが悪い。


「あれ〜? リアンよう、興奮してんのか?」


 セラニは俺の下半身を見てニヒヒと笑っていた。


「セ、セラニの胸が当たってたんだからしょうがないだろ!」


 俺はそう反論したがマーナとウェンディは顔を赤くして俺を見ていて少し恥ずかしかった。


「なんだよ! したいならそういえばいいのによ!」


「あ! こら! 脱がすな! マーナとウェンディも服を着るんだ!」




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