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105話

 俺達を交じえて会議は再開した。話では明日にもここへモンスターの群れがやって来る事、ホーネス王国も同時に襲われそうだという事らしい。


 意見は真っ二つに分かれていた。ホーネス王国に援軍を送る派とここを全力で守る派が分かれていたが俺の頭の中では誰をホーネス王国に行ってもらうか悩んでいて交わされる議論には参加していなかった。


「リアン殿、何か意見はあるか?」


 教皇から話を振られた俺は一瞬考え事をやめて自分の意見を話す事にした。


「はい。僕としてはどちらの国も守るべきだと思います」


「何か策が?」


「……」


 カイアスさんの問いに少し間を置いたのは迷っていたからだ。


 当然ホーネス王国は守りたい。マーナの顔は暗くなっていてこのままだと黙ってホーネス王国に行ってしまいそうだった。だから俺はハッキリ守ると宣言した。でも、この場にいる人達を納得させるには根拠がなければならない。


「ここにいるメンバーは全員レベル200を超えています」


「何だと……」


 会議室にいる俺達以外の人達は口をあんぐりと開けて固まっていた。


「だからその内の何人かがホーネス王国に行けばなんとかなると思います」


「まさかリアン殿はレベルが極端に上がる術を知っているのではないか?」


 カイアスさんの鋭い問いに俺は一瞬言葉に詰まってしまった。流石に本当の事は言えないというか言いたくない。


「お父さん、リアンは火の加護を受けているのよ」


 すると困った俺を見てかエニィが口を開いた。


「なるほどな……世界に一つしかない伝説ともいえる4大加護のひとつか」


 教皇の言葉に周囲がどよめき始めた。


「それにここにいるアイナ、アリス……そして私も加護を受けたの」


「なんと! それでは世界に散らばる大いなる加護がここに集まったというのか!」


 教皇はかなり驚いている。周囲も教皇の驚きようにざわついていた。


「だから加護を持っていないウェンディ、マーナ、セラニも何らかの影響を受けてレベルの上がりが早まったと思うわ」


「そうか……だが、これであればモンスターの群れをなんとかできるかもしれんな」


 カイアスさんは納得してくれたようだった。


「僕らは独自で動かせてもらいます。あとホーネス王国へは援軍は間に合わないでしょう。そこは僕に任せて下さい」 


 ホーネス王国へはいくら急いでも明日には間に合わない。ここでの会議が長引いたせいもあるけどこの異常事態ではしょうがない事だと思う。


 これ以上ここにいてもしょうがない。早く皆んなと話さなきゃな。


「準備があるのでこれで失礼します。明日はこの国を全力で守りましょう」


 まだ教皇やカイアスさんは何か聞きたそうな顔だったが俺は皆を連れて部屋を出ていった。


「さあ、これからの事を話そう」


 俺は街の外れに異空間を出して皆を集めると話し合う事にした。


「エニィ、さっきは助かった。ああでも言わなきゃ納得してくれないと思ったんだ」


 俺は最初に皆のレベルを公にした件で助け船を出してくれたエニィに感謝した。


「分かってるわ。まだ納得してない顔だったけどしょうがないわね」


「確かに全部言ったら加護持ちの俺達が襲われかねないからな」


「で? どうするの? リアン」


 アイナに話を促されると俺は本題に入る事にした。


「まずは情報が欲しい。どれだけのモンスターがこことホーネス王国に迫っているのか、それによって誰が行くのか判断したいんだ」


「さっきの会議で言ってたけど今日の夜に偵察隊が帰ってくるそうよ。聞いたらレスナとイラスタもいるらしいから話を聞きましょ?」


 アイナの話に頷くと夜になるまで俺はやるべき事をする為、動き始めた。


「セラニ、大変かもしれないけど頑張ってくれ」


「任せろ!」


 まず始めたのは兵士や戦闘に加わる冒険者達にセラニの強化した装備を行き渡らせることだった。モンスターとの戦闘に勝利するには必要だとセラニに頼むと快諾してくれたのだ。


 この機に異空間の指輪はセラニに託すことにした。それが一番効率がいいし中の施設を作ったのはセラニのおかげなのだから。


 城の武器庫にセラニを残して今度は魔族の大陸に飛んだ。この異常事態は人間だけの問題ではなく魔族にも知っておいて貰いたかったからだ。


 そして帰った時にはすでに夜になっていたのだった。


「おお! リーダー‼︎ 久しぶりだな‼︎」


 俺の背後から大きな声を受けて振り返るとアイナに連れられたイラスタとレスナがこちらに向かって来ていた。


「ふたりとも元気そうだな」


「あったりめえよ! 俺達は一心同体だからな!」


「もう! 変な事言わないの! 恥ずかしいじゃない!」


 レスナは顔を赤くしてイラスタに怒る。アイナから話は聞いていた。ふたりはこの前結婚したらしく、幸せな雰囲気が伝わってくる。そういえば俺から見ても仲のいいように見えていたから驚きはしなかった。


「イチャイチャしてるとこ悪いんだけど話を聞いていいか?」


「ははは! すまねえな! じゃあ話すとするか!」


 イラスタは今の暗い状況でもいつもと変わらない様子でいた。それが俺には見習わなくてはならない事なのだと気付かされた。


「何から話すか……」


「とりあえず見て来たものを話してくれ、モンスターの種類とか数が知りたい。あとはホーネス王国にはどれだけのモンスターが向かっているんだ?」


「すまないがこっちにくるモンスターを把握するので手一杯だったんだ」


「それほど数が多くてね。でね、そこで恐ろしいものを見たの……」


 レスナはそれを思い出したのかゾッとしたように体を震わせた。


「恐ろしいもの?」


 アイナの問いに相当見たものが怖かったのか、答えられないレスナに代わってイラスタが話し始めた。


「モンスターの群れに紛れて巨大なモンスターがいたんだ。そいつは何て言うか異様な空気を作り出して周囲が歪んでいた。しばらく観察してたら何とそいつからモンスターが飛び出してきたんだよ。それも大量にな」


「もしかして……」


「ああ、恐らくこの事態を起こした張本人だろうな」


「でも、何でそんな危ない奴が突然生まれたのかしら」


 エニィの疑問にその場は静まりかえり、重い空気が流れる。


「……皆んなに聞いてほしいことがあるの……」


 今までいやに無口だったアリスは突然語り出した。そこにはいつもの明るい顔は無かった。何かに怯えているように見えて嫌な予感がした。


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