102話
「この衣装可愛いね」
「そうね、暇があったら街の服屋に行ってみたいわ」
アイナとエニィが会話をする中、着替えを終えたアリスは考え込むように黙っていた。
「アリスちゃんどうしたんですか?」
マーナがその様子を見て声をかけるとアリスは顔を上げた。
「……私、リアンが好きなの……だから……」
「そんなの最初から知ってるわよ、ね?」
エニィは隣のマーナに同意を求めるように視線を送った。
「はい、アリスちゃんの想いをリアン様に伝えてあげてください」
マーナは頷くと微笑みと共にアリスに言った。
「ここの皆んなでリアンを支えて合っていこうね」
アイナもアリスと同じ身だった為、優しい口調で同意した。
「ありがとうみんな……」
「でも、リアンのやつアリスを子供扱いしてるからなぁ」
セラニの言葉にアリスは深いため息をついた。
「はぁ〜 最初に会った時子供の姿だったから……断られたらどうしよう……」
「それじゃあ作戦を考えましょう!」
ウェンディの提案に皆は頷くとテーブルに集まった。
「ふふ、私に任せなさい!」
「ははっ! エニィにかかればリアンなんて簡単に落とせるからな!」
エニィの自信満々な言葉にセラニは大きく笑った。
「そうね、今回の作戦は……」
テーブルを囲みながらわいわいと作戦が練られるのであった。
その夜は宴が行われ、俺は大勢の魔族と交流をした。そこで思ったのは人間となんら変わらないんだという事だった。大陸間で多少の文化の違いがあるのは人間も同じだ。だからきっと人間ともやっていけると確信することができて嬉しかった。
宴が終わると俺はアリスに誘われてある部屋に来ていた。聞くところによるとその部屋はアリス用にとエルド王が用意した部屋らしく、急遽用意したかもしれないからか、まだ最低限の家具しかない部屋が広く見えて殺風景な印象だった。
「リアン、宴で凄く人気者だったね」
「疲れたよ、色んな人に話しかけられたからさ」
ずっと立ってたのもあるけど次々にやって来る魔族の人達の対応で時間はあっという間に過ぎていて、終わった後にはどっと疲れが体にのしかかっていた。
「何だか夢を見ているみたい……」
窓から見える空には無数の淡い光が散りばめられいた。それをじっと見るアリスの横顔は美しく、しばらくその横顔に見とれていた。
「色んな事があったな……」
俺は顔を再び空に戻すとふとこれまでの事を思い出してしみじみとした感じでアリスに話しかけた。
この僅かな期間で色々な事が、それもかなりの大事ばかりが起きすぎて今振り返っても記憶にハッキリと焼き付いている。
「私……リアンに会えて本当に良かった……」
「俺もだよ……アリスに出会えてなかったらひとり孤独に押し潰されていたかもしれない。アリスが側に居てくれたからここまで来れたんだ」
「リアンと過ごしていた毎日は凄く楽しかった……そこにエニィが加わってセラニ、マーナが来てもっと楽しくなった。幸せすぎてこれがずっと続いたら良いなって思ってた。昔お父さんお母さんとお兄ちゃんで過ごしていた楽しかった頃と同じくらいの幸せがくるなんて思わなかったから凄く嬉しかったの」
「これからもみんなで楽しく過ごそうな……そうだ! アリス」
「ん?」
俺は選んでいたアリスに似合うと思ったネックレスを首にかけた。
「……嬉しい」
「似合ってるよ」
「ありがとう……」
アリスは嬉しそうに宝石を眺めると視線を俺に移して微笑んだ。
「リアン……大好き」
アリスは目を閉じると顔を少し俺に近づける……その仕草に俺は固まってしまった。
「ご、ごめん! 俺、アリスの事が大好きだけどどうしても幼い姿でずっと過ごしてたからそんな風に見れなくて……」
迫ってくるアリスの肩に手を置いて制止すると俺は正直に話した。
「やっぱり……」
悲しげな顔をさせてしまった事に俺は心が痛かった。
「で、でも時間はいっぱいあるからいつかは……」
焦ることはないと言いたかったけどアリスは明らかに不満そうだった。
「だ〜め! 私はリアンよりいっぱい生きているのよ!」
少しムキになっているところが可愛くて俺より沢山の時間を生きているように思えないのが不思議だ。
「わ、分かってるよ……でもなぁ」
それでもアリスは引いてくれなかった。何故か不気味な笑みを浮かべて俺との距離を埋めてくるアリス。
「ふふふ……こうなったら体に分かってもらうしかないね」
「え……なんだその笑みは……」
「これな〜んだ?」
「あ! それは⁉︎」
アリスが手に持っていた物に俺は驚愕した。まさかここまで事が進んでいたなど少しも思っていなかったからだ。
「なるほどな……もうエニィ達は了承済みって事か……」
俺は全てを悟った。そしてアリスを相手にあれを奪うことは多分無理だろうなと思いながらアリスが瓶の蓋を開けるのを見ているしかなかった。煙が立ち込め、段々と体に変化が起こり始めると何故かアリスの顔が大人びて見えて胸がドキッとする。
「リアン……私ね、知ってるんだよ?」
「え……」
「リアンが夜遅くにエニィ達と何をしてたか……」
それを聞いた俺の胸がまたドキッと大きな音を鳴らした。
「覗いてたの……いいなって思いながら……」
まさかあれをアリスに見られてたなんて……。
もう密着するくらいに迫っていたアリスは興奮気味に少し息を荒くしていてその甘い吐息が俺の顔にかかると俺の体が反応してしまい、もうどうにもならなくなっていた。
「リアンお願い……私にもして……?」
耳元でそう囁かれた時俺はどうしようもないほどの欲求に支配されアリスに覆い被さっていた。
全てが終わった後俺は宴の疲れもあり意識を失うように眠り、そしてスッキリした朝を迎えたのだった。
「リアン、おはよう」
「おはよう……アリス」
俺より早く起きていたアリスは隣で嬉しそうに顔を赤くして俺を見ていてふと気付いた。今までと明らかに見方が違い不思議とアリスが大人に見えていた。
「リアン大好きだよ……」
その美しく可愛いすぎる笑顔に思わず抱き寄せるとアリスは俺の体に腕を回してギュッと抱きついてくる。
「アリス、これからもずっと隣にいてくれ」
「うん!」