101話
ラセンに案内されたのは城の地下だった。広大な空間には沢山の鉱物が置かれていると棚に加工されたアクセサリーや武器などが並べられていた。
「綺麗……」
「ほんとね。見たことがない宝石ばかりだわ」
その光景にアイナは感嘆とした声をあげ、エニィも珍しそうに眺めている。
「特別に1人ひとつを持っていくがいい!」
ラセンの言葉に皆がえ? とした顔で振り向いた。
「本当ですか!」
あまりの嬉しさからかウェンディは目を輝かせている。
「うむ、時間をかけて選ぶがいいぞ」
皆はやったぁ! と嬉しそうにアクセサリーが飾ってある場所に群がっていった。
「どれにしようかな〜」
アイナは目の前にあるアクセサリーを見ながら嬉しそうな顔で迷っている。
「リアンはセラニとアリスのを選んであげなさい」
エニィにそう言われた俺は数々のアクセサリーの中からふたりに合いそうな物を選ぶ事にした。
何時間いたのか……俺は選び終わったが他の皆は話し合いながら自分のアクセサリーを選んでいてかなりの時間この場所にいた。
それから部屋に帰ったのは夕食前だった。俺は異空間にセラニの様子を見に行った。
「ふあ〜〜!」
俺が寝室に入るとちょうど目を覚ましたセラニが大きなあくびをしていた。
「どうだ? 体の方は?」
まだ起きたばかりで目を眩しそうにしているセラニに話しかけた。
「おう……もうスッキリだよ!」
「もう夜になるから皆でご飯だ」
「お腹ペコペコだ!」
ベッドから起き上がったセラニに俺は選んだアクセサリーを取り出した。
「これ、さっきセラニの為に選んだんだ。似合うと思って」
俺は青い宝石が輝くネックレスをセラニの首にかけた。
「ありがとうリアン……俺凄く嬉しいよ」
首にかかった青い宝石を見つめながら嬉しそうに俺に見せた。
「似合ってるかな……」
「ああ、凄く似合ってる」
「あ、まだ歩くの辛いからまた連れてってよ」
セラニの要望に俺は頷くとセラニの体を抱え上げた。
「こうしてると凄く幸せ」
セラニは俺にギュッと抱きついた。その暖かい温もりに俺も同じ気持ちになっていた。
「さて、甘えん坊のセラニを運ぶとするか」
俺はギュッと抱きつくセラニを抱えて皆の元に歩いて行った。
そして次の日俺達はエルド王と謁見の間で会うこととなった。
「よく来た人間の英雄達よ」
エルド王はすっかり回復していて顔色が良くなっていた。王様というだけあってかなり威厳を感じる面構えだ。
「そなた達には感謝してもしきれないくらい世話になった。何か褒美を与えたいのだが要望はあるか?」
その言葉を受けた俺は前から考えていた事を話す事にした。
「俺は……人間と魔族は分かり合えると思っているんです。互いに協力できればそれはお互いに凄く良い事だと思います。夢見たいな事だと笑う人もいるでしょう。それほど凄く大変な事だと思います。でも……このまま無視し合うより歩み寄りませんか?」
「……フッ、フハハ!」
俺の話を聞いたエルド王の笑う声が静かな部屋を響かせた。
「面白い男だな。ラセンやレシナが言っていた通りだ」
ニヤリと笑うエルド王は俺を見てそう言った。
「誰もが無理だと言うことをやってのけるのが英雄というものだ。私はお前が気に入った!」
エルド王は椅子から立ち上がると俺の前まで近づいた。
「今歴史は動いた。私は人間と魔族の架け橋になる君の力になることを誓おう」
エルド王から差し出された手をがっしりと握ると周りから拍手喝采が起こった。
「さあ国民の元へ参るぞ!」
俺はまるで別世界に来たような感覚に陥っていた。まるで夢を見ているようだった。魔族の城から出ると多くの魔族達が俺達を歓迎するように迎えてくれたのだ。声援を受けながら俺はそれに手を振って応えた。
「何か信じられないわね……」
お披露目も終わり城の中に戻った俺達は来客用の広間に通されていた。すると先ほどの光景に対してエニィがぽつりと感想をもらした。
「私はホッとしたわ」
続けてアイナが感想を口にした。
「でも、リアンさんが言っていた事が叶うような気がしますね」
ウェンディが俺を見て微笑んだ。
「そうですね、私もそう思います」
マーナも笑顔で同意してくれた。
「アリスと同じ事が起きないようにしたいんだ」
「リアンなら皆んな付いていくさ!」
俺の言葉にセラニがそう答えくれて嬉しかった。
「皆んな!」
そこへアリスが嬉しさを顔に浮かべながら合流した。
「良かったな」
「うん!」
眩しいくらいに綺麗な笑顔を見せるアリスに周りが明るくなる。
「今日は宴があるんだって! 皆んなも着替えて参加しよ!」
アリスは楽しそうに話した。
「おう! 美味そうなものいっぱいありそうだな!」
セラニは元気いっぱいに答えた。
「じゃあ皆んな着替えに行こ!」
アリスに連れられて女性陣は部屋を出ていくと俺はひとりになった。
「俺はどうすればいいんだ……」
「お主はこっちじゃ」
いつの間にか来ていたラセンに連れて行かれると俺も正装に着替えたのだった。