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殲滅殲滅せんめ…… うっ

 恥ずかしくて後ろの騎士を見ることは出来ない。

 仕方がないので気配で無事を確認しつつ、雑念を払うように魔物を斬って行く。


 斬って行く……

 斬って行く……

 斬って、斬って、焼いて、刺して……


 ……………………………………。


「あーーーー、飽きたァァ!!!!」


 単純作業を続けること30分。ついに私は耐えられなくなってしまった。


 目標としている1時間まではあと20分程か。

 これまで様々な魔法を駆使し報告にあった2万の魔物を悠々屠り、結局ここまでで奪った生命の数は予想を大幅に超える7万に迫る。


「なかなか頑張ってるけど…… 減らないわね!!」


 試しに放ってみた生体探知の呪文には、まだまだ数千じゃ効かない程の数が表示されている。


 目に留まるものから刀で斬り、五指から水刃を飛ばして効率化を図っているが、一向に数は減らない。


 と、その時金属で出来た人形が一体、猛スピードで突撃してきた。


「くッ、硬っ!」


 土手っ腹をねらって雷を纏わせた斬撃を放つ。

 しかし、胴体の中央で刀が止まり、そのまま間合いへの侵攻を許してしまった。

 そのまま伸びてきた敵の指が顔を掠め、私の尊顔に傷が付く。


 本日初めての負傷だ。


「雑魚なら一撃で死になさいよ!」


 こんなんでも冷静だ。

 手を引いて2撃目を放とうとしてくる奴の不格好顔をひっ掴むと……


「溶けなさい」


 斬れない金属なら、ドロドロになるまで溶かしてしまえばいい。

 まだ若かった頃に国宝の超金属を消滅させた私の炎魔法はまだまだ現役だ。怒りの感情によって黒く染まった炎が前方に発射され、金属人形を飲み込みそのまま後列へと飛んで行く。


 掴んでいた物の感覚は消え、シュッという軽い音と共に、私の目の前には何も居なくなった。


 ……なにも?


 …………。


「やっば!!! お気にだったのに!!」


 ……自分では冷静だったつもりだが、どうやら頭に血が上っていた様。

 私の目の前には何も居なくなった。金属人形は勿論の事。

 ――――ヤツに刺さっていた愛刀も


「うぅ、タケミカヅチぃ……」


 彼の名前を泣きそうになりながら呼ぶ。

 三代前の騎士団長が邪龍を下した際に使用した愛刀だったという謂れを持つ国宝を勝手にパクって使っていたのだが、ヨントは許してくれるだろうか……?


 チーズフォンデュのパンを刺したり、地面に絵を書いたり……

 中々に便利なやつだったのに。


 うーん、さっきから恥ずかしいことばかりだ。

 いやでも他人がいるから恥ずかしいという感情が発生するのでは……?

 やはり人付き合いが1番の悪者である。


 ダイナミックに責任転嫁をしつつ、そろそろ敵も固くなってきたし丁度いい機会だと私は亜空間から1つの杖を取り出した。


 蒼みがかった透明な短杖はひんやりと冷たく、握っただけでも相当な魔力を感じる。


「うわっ!?」


 ふふっ、後ろにいる坊主も魔法の事が分かり始めた様だ。

 さっきまで黙って集中していたのに、杖を取り出した瞬間にめっちゃ驚いてる。


 その視線を背中に受けつつ、杖を地面に向かって構える。

 もう1000体ずつなんてチビチビしたことは面倒だ。魔力の節約とか色々あったんだけど、3分の2くらいは倒したから大丈夫だろう。


「さっきはカッとなって炎魔法を使っちゃったけど…… やっぱ自然は守らなきゃね」


 放つのは氷魔法。まぁこの杖がそれ専用だから当然なんだけど。


「エヴァン、もうすぐアンタの出番だからアップしてなさい!」

「えっ、それってつまり……」

「今から敵は、ボス一体になるわ」


 地面に向けた杖から冷気が零れ始める。


「あ、さむっ」


 この魔法は久々に使ったから、付随する寒さを忘れておった。

 これからもっと寒くなるし……


 あー、やだなぁ…… 触りたくないなぁ……


「やだなぁ……」

「なにがです?」

「うっさい、黙ってあっち向いてて……」


 私は繊細な魔法が苦手だ。敵を倒したいならブッパなせばいいし、元来性格的に大雑把なところがある。


 だからゆっるい魔法を使う時は……


 右手に持った杖を地面に突き刺し、エヴァンのところへ歩いていく。

 あっち向いてての言葉通り、背中を向いててくれるヤツの顔は見えなくって。良かった。


「【ウォーム】」

「え、せな……」

「黙って」


 背中にピトッと触れた掌から暖色のオーラが溢れ出す。

 細っちょくってもやっぱり騎士なんだろう。

 外からは見えないゴツゴツした身体は、日々のトレーニングを感じさせる。


 そんなことを考えるどこか永い2秒の間に、オーラは私たち2人を包み込んだ。


「暖かいですね……」

「ふふっ、快適気温を保つ魔術膜よ。これで今から放つ魔法の影響だってへっちゃらよ!」

「あ、ありがとうございます……」


 魔法は成功だ。しかし、満点ではなかった。


 ……作り出した膜がちっちゃくって。

 互いの体がくっつきそうになる中で、どこかドギマギしながらそっぽを向く。


 普段はオレンジな膜がちょっとピンクに見えるのは、きっと寒さで目がおかしくなっているせい。


「じゃあ、やるわよ。準備はいい?」

「……はい」

「安心しなさい。あんたは絶対死なせないから」


 地面に刺した杖を抜き、今度こそ魔法を発動させる。


「【銀世界】ってね。雑魚は黙って砕けなさい」


 ――――――その瞬間、麓では例年より約5ヶ月早い積雪が観測された。


 冷気は木々の間を抜い、霜を作り、大気中の水分を氷に変える。

 森を進軍する2万の魔物は、一瞬でその動きを止め……


 魔女の掌から続いて放たれた弱々しい風の後、まるで元から存在しなかったかの様に氷の粉となって世界に溶け出した。


「うーん、エクセレント」

「……こんなに強いのにどうして世界征服とかしてないんですか?」

「ひゃっ! ……面倒いからだけど」


 魔法を放った一瞬、忘れかけていた存在がとても近くで声を出した。

 驚いたから、そう驚いたからしゃっくりが出て心臓がドキンとなったけど、冷静に言葉を返す。


 まぁ私の力を見ればその疑問はご最もだ。

 私はいつだって世界を手中に収めれる。


 ……が、私は一般ピープルで居たいのだ。こればっかりは仕方ない。


「さ、そんなどうでもいい話してないで!」

「どうでもいいって……」


 ここは強引に話を切る。まぁ時間も無かったしね。


「魔法は使えるようになったわよね、気配的に?」

「あっ、そうなんですよ!!! ヴァネッサ様のお陰です!」

「そう、ありがとう。じゃあ大丈夫ね……」

「え? 何が?」

「言ったでしょ? ボスは残るって」


 ―――――来るわよ


 一言。

 発したと同時に地面が揺れる。


「やっぱり空に居たかぁ」


 目の前に落ちてきたのは、紫色の巨人。


「え、これとやるんですか!?」

「えぇ、この"悪魔"とね。大丈夫、キル数10体で討伐数世界1位の私が付いてるから!」

「悪魔っ!? おとぎ話で国滅ぼしたり大陸消滅させてるあの!?」

「うん。しかもおとぎ話じゃなくってあれ史実だからね」

「無理無理無理無理無理ですって!」


 狭い空間でブンブン首を振るな! 黒い髪を顔に浴びつつ、上を向いて微笑みかける。


「一緒に頑張りましょ?」

「クッソ、その笑顔は反則でしょう…… わかりましたよ!!! やりゃあいいんでしょ!?」


 了承してくれればいいのだ。私の弟子たるもの、悪魔キラーくらいの称号は持っててもらわないと困る。


「始めるわよ」

「……はい!」


 御丁寧に話が終わるのを待っていてくれた悪魔に向かって杖を向ける。

 エヴァンも木の棒を構えたことを確認し……


 戦闘が始まった。

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