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英雄シリーズ

陥れられた英雄とその娘の復讐

作者: リィズ・ブランディシュカ



 あるところに、栄える一つの大国があった。


 その国には英雄がいる。

 そしてその英雄には、娘がいた。


 その娘は、戦いに赴く前に、英雄と結ばれた女の間にできた子供だった。

 しかし女は、流行り病で命を落としたため、娘の家族は英雄である父だけになる。

 祖父も祖母も、生きてはいなかった。


「この愛する娘のために、国を守る! なんとしても魔王を倒さなければ!」


 英雄は必死に戦って、魔王を倒し、勝利をおさめた。


 しかし、王や家臣・仲間達に良いように利用されて、魔王討伐後に背中を刺されて死亡してしまった。


 その結果、孤独の身となった英雄の娘は、名のある貴族の家に預けられる事になった。


 それは再び魔王が復活した時のための、保険だった。


 英雄と同じ血を持つ者は、魔王討伐に有効な聖なる力を有しているからだ。





 英雄が死亡してから数十年。

 そういった事情があったため、何も知らない娘は、血のつながらない者達の手によって生かされてきた。


「お前は本当に、私達に似ていないね。だからそんなに可愛くないんだ」


 しかし、娘を育てた家庭はあまり良くなかった。


 英雄の血筋の影響か、娘は何でも器用にこなした。


 しかし、それが面白くなかったのだろう。


 育て親の父と母は、実の娘だけを可愛がり、勇者の娘を虐めていた。


「どうして私は父上と母上に怒られてばかりなのだろう」


 そのため、娘は毎日涙を流して暮らしていた。


 しかし、娘はけなげにも父と母の愛情をもらおうと努力を重ねた。


 研鑽を重ねる日々のおかげか、勉強も剣術も魔法の腕もエリート並みになった。


 しかし、それでも育ての父と母は、愛情のひとかけらも与えなかった。


「どうして私は両親から愛してもらえないのだろう」


 愚かな彼らが見つめるのは、実の娘のみだった。






 やがて、再び混とんの時代がやってくる。

 魔王が復活したのだ。


 英雄の娘は国を守るために、ボロボロになるまで戦ったが、彼女を称える者はいなかった。


 かつての英雄の娘だからと、人々から腫れ物扱いされたり、邪魔者扱いされたりするだけだった。


「皆、どうして私と言葉を交わしてくれないのかしら。どうして私を避けてばかりなのかしら」


 娘は彼らに歩み寄ろうとしたが、その努力は報われない。


 魔王との闘いで敗北した英雄の娘は、無残に殺害される事となった。


 捕虜となった娘を助けようとする者はいない。


 娘は、絶望の淵に立たされていた。


 しかし、そこに実の親である英雄がかけつけた。


「実は裏切りにあった時、死体を偽装して隠れ潜んでいたのだ。地獄に等しい場所へ逃げ込んだあまり、帰ってくるのが遅くなってしまった」


 英雄が話すのはすべての真相。


「私が受けた裏切りを、本当のことを話そう」


 どうしてのけ者にされていたのか理解されていた娘は、全ての事情に納得した。


「遅れてすまない。こんな自分をまだ親と思ってくれるだろうか」

「私の親は血がつながっているだけのあの人達じゃありません。命をかけて助けに来てくれたあなたです」


 その後、英雄と英雄の娘は力を合わせて魔王を倒した。


 国の者達は、彼らの偉業をたたえたが、英雄の親子がその言葉に惑わされる事はなかった。


 彼らは誰も知らない場所に移り住んで、静かに余生を過ごす事を選んだ。


 数十年後、次代の魔王があらわれたが、国を救う者はいなかった。


「助けてくれ頼む!」

「英雄であるあなたの力が必要なのです!」

「今度は裏切ったりしない! 本当だ!」


 英雄の元へ助けを求めてやってくる者達がいたが、その言葉に耳を傾ける者もいなかった。


 やがて、一つの国が滅んだ。


 そのあと、勇者達は立ち上がり、その偉業を称える者が誰もいない中でただ淡々と魔王を倒した。



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