中編 その5 「奴を運べ!」
「うわあ…。これはまた随分高いところに…」
グリアムスさんの言う通り、ラロッカはミノムシのように、ロープでぐるぐる巻きにされながら、木の上に吊るされていた。
その高さ、だいたいマンション2階分くらいだろうか。
その上ラロッカは口をガムテープでしっかり塞がれている。
そのこともあってか、彼自身すっかりおとなしくなったように見えた。
見るも無残に一本吊りにされている彼の様子を下から眺めていると、不思議と彼が人間サンドバックのように思えてくる。
せっかくのことだし、ここは一発。奴を己のグーパンチでグロッキー状態にしてやろう。
一瞬本気でそうしようとも思ったが、冷静に時と場所を考えた後に、そんな悠長なことはしてられないと気付いた。
ここは一つ、感情を抑えるとしよう。
それにしてもグリアムスさん…。短時間のうちに、よくここまでやってのけたものだ。
こんなスキル、いったいどこで身につけたのやら。
本当に前まで花屋の営業マンだったの? っと、正直疑いたくなるほどの見事な縛りっぷりだった。
ここまで来れば、もはや芸術である。
少なくともお花に携わっていた人の為せる技じゃないことは確かだ。
……ひょっとして花屋の日々の業務内容に、人をロープで縛りつけるって項目があったのかもしれない。
もしくは仕事とは別にプライベートな場所で、個人的な趣味の一貫として縛りプレイをやっていたとか。
……まあ、普通に考えておそらく後者だろう。
いったい花屋の業務のどこに、人をロープで縛りつける機会があるってんだ。
きっとグリアムスさんは仕事が終わった後に、夜な夜なホテルにて、ボンキュッボンなお姉さんを呼び出し、その縛りプレイとやらものを鼻の下を伸ばしながら、お互いに和気あいあいと楽しんでいたに違いない。
「……実に素晴らしい」
自分は頭の中でそのようなことを思い浮かべていた。
「ベルシュタインさん…。早くこの方を木の上から下すのを手伝ってくださいよ。
これは決して見せ物かなんかじゃありません。
感心してる場合じゃありませんよ、ベルシュタインさん」
何を勘違いしてか、グリアムスさんはそのようなことを言ってきた。
「わ…わかりました! 仰せのままに!」
グリアムスさんにしっかり釘を刺されたところで、自分もラロッカを地上に下す手伝いをした。
そうして宙吊りになっていた彼を無事に地上へと下し終えたところ……。
「むごっ!? むごむごむご!!」
口元にガムテープが張られているせいで、声がくぐもり、ラロッカが具体的に何を言っているのかは分からない。
だが直感的に『てめえを殺す! ぜってえに!』
少なくともこれだけは、はっきり言っている気がする。
案の定ラロッカは、また暴れ出した。
その後も自分に向かって、再三に渡り体当たりをかまし、何度も自分の首元にかぶりつこうとしてきた。
ガムテープで口を塞がれているにも関わらず…。
もはやそれは人間ではない。完全にアンデッドかゾンビそのものだ。
それを横で見ていたグリアムスさんも彼を危険と判断してか、一度自分とラロッカを引きはがし、手刀を作った後で、シュパッと彼の首元に素早い一撃を入れてくれた。
「もごもごもご…」
ラロッカはガムテープの隙間から泡を吹き出した状態で、そのまま地面に倒れた。
「おおお!!」
自分は思わず感嘆の声を上げる。
「これで手間が省けましたね…。
じゃあさっそくこの方を抱えて、車の元まで戻りましょうか、ベルシュタインさん」
「了解です! グリアムスさん!」
そうして自分たちはラロッカの手と足を、まるで工事現場で角材を運ぶかのようにして肩に担ぐと、その状態のまま元来た道を引き返したのだった。
ここまで閲覧いただき本当にありがとうございます!
※あと29話付近の投稿で完結になりそうです。(全120~130部の間での完結)
最後までお付き合い、いただければ幸いです!
※心機一転、本日をもってアモーレ ポン太からアローラ ポン太へと改名を致しました!
大した違いはないかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。
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次回、最終章『統領セバスティアーノ編』:中編 その6です。
今後もバクシン! バクシン! していきます!
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