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前編 その11 「余分な荷物」

 鉄板の運搬作業が終わり、トラックの荷台は満杯になった。

 物資の荷積み作業がようやく終了したのだ。

 自分とグリアムスさんを含め、現在ペレス隊の連中には待機命令が出されており、各自束の間の休息をとっている。


 ペレスはと言うと、リードとサムエルと共に自分たちとは遠く離れた工場の隅の方で、こそこそと何かを話し合っていた。

 彼らは3人輪をつくり、時々自分たちの方へ顔を向けつつ、憚るようにして喋っていたのだ。

 …一体、何の話をしているのだろうか。

 耳を澄ませてみても、ここからでは彼らの会話の内容を聞き取れずにいた。


 それはそうと自分には1つ、ある心配事がある。


 先ほど、工場に残されていた物資を全て積み終わった。

 トラックの荷台もそれでパンパンになっている。

 しかしそのことで、自分たちが荷台に座れるスペースが締め出されてしまっているのだ。


「グリアムスさん。自分たち、帰りは一体どうしたら…」


 車内に乗せてもらうわけにはいかないだろうか?

 …いや、とてもじゃないが、こちらの頼みを聞き入れてくれそうな連中ではない。

 すぐに突っぱねられるのがオチである。


 このままだとコミュニティーに帰還するまで、長時間、物資の上で座りっぱなしとなってしまう。

 …冗談じゃない。

 そんなのずっと熱せられた鉄板の上で正座させられてるようなものだ。

 ただでさえ、あの舗装されてない道をまたあのトラックが全速力で駆けていくのだ。

 このままだと大変まずいことになる。…なんとかしなければ。


 工場の入り口付近で、グリアムスさんと一緒にそうならないための打開策を考えていたその時、


「よお~し、お前ら! 一旦集合だ!」


 ペレスから突然、招集がかかったのである。その彼の一言で、一同ペレスの元に集まった。


「おい! そこの無能生産者のゴミども! さっさと俺の元に来い!」


 ペレスにそう言われ、自分たちは一旦話を切り上げると、急いでそこへ向かった。

 自分とグリアムスさんを含め、全員集まったのを確認したところで、彼は次の話を始めた。


「お前ら、よくやった! わずか1日足らずで荷台を物資で満杯にすることができたぞ!

 俺らは堂々と胸を張って、帰還できるぞ!」


「「「よっしゃああ!!」」」


 ペレスを含め、連中は大いに盛り上がっていた。


「荷物持ち諸君も、今回よくぞ俺らのために頑張ってくれた! 礼を言うぞ!

 …ありがとさん!」


 何と…ここまで無能生産者の自分たちをけなしに、けなしまくっていたペレスがここに来て、労いの言葉をかけてくれたのだ。

 ……何ちゅう手のひら返し。


「オー…ジーザス……」


 あのコワモテ顔面タトゥーのペレスが自分たちに感謝の言葉を述べたのだ…。こいつは想定外だ!

 マフィアの一味が自分たちに感謝の意を伝えると言う、まさに天地がひっくり返るような出来事が起こっている。

 お褒めの言葉をあずかり光栄である! 実に喜ばしい。

 自分たちの努力はようやく彼の労いの言葉でもって報われたのだ。

 ちゃんと見ている人は見てくれていたんだ! こいつは自分にとって嬉しいサプライズである…。


「ありがとうございます! ペレスさん!」


 自分は褒めてくれた礼をちゃんと言葉で返した。


「おう! お前らはよくやってくれたよ!」


 ペレスはそう言った後、自分の肩をポンと叩いてくれた。

 彼はまた自分とグリアムスさんに熱い握手まで交わし、荷物持ちとしての働きぶりを大いに評価してくれたのだ。

 …何だろう。この現役生活最後の試合が終わって、引退セレモニーまで敢行してもらっている選手のような気分は…。


 そう思うとともに、ペレスは改めて自分たちに感謝の言葉を述べていった後、最後にこう締めくくったのであった。


「無能生産者のゴミども! 本当にありがとう。今までご苦労だった。

 …お前たちともここでお別れとなる! 短い間だったが、ありがとさん!

 じゃあな! 元気で居ろよ!」


 ペレスがそう言って、工場の出口へ向かうと、続いて他の連中も彼の後に続いていく。


「ゴミども! 2階でのことサンキュ―な!」


 ペレスの次に声をかけてきたのは、サムエルだった。


「ゴミどもがあのことを誰にも告げ口しないでいてくれたおかげで、俺たちは怪しまれることなく、食料入りのダンボール4箱分、無事持ち出すことが出来たぜ!

 これもお前たちが俺とクリスの約束を守ってくれたおかげだ! サンキュ―!

 この恩は一生忘れねえぜ! じゃあな、アディオス! ゴミども!」


 サムエルはそう言った後に、颯爽と去っていった。


「俺の方からも…元気でな! 無能生産者のゴミども! 外での暮らしは大変だろうが、ちゃんと2人でお互い知恵を出しつつ、生き延びろよ!」


 クリスもサムエルに続き、そう声をかけてきたのである。


 ペレス隊の連中は全員、外に出ており、工場の前に停まっていたトラックに次々と乗り込もうとしていた。

 それを見て、自分は思わず…


「ちょっと待ってくださいよ!」


 誰もが突っ込みたくなるこの状況に、自分は待ったをかけたのであった。


「何だ? 無能生産者のゴミども」


 ペレスはそう答える。


「何で皆さん、自分とグリアムスさんを置いて、ここから立ち去ろうとするんです? 自分たちも乗せていって欲しいんですが…」


「はあ? 何言ってんだ、お前? もうトラックの荷台にこれ以上、荷物は載せれねんだよ。

 余分な荷物はここに置いていく。…たったそれだけのことだ。何か文句あるか?」


「余分な荷物? 誰がですか? 誰が余分な荷物なんですか!?」


「それはお前らゴミどものことだよ~♪ へへへへ~い♪」


 ペレスの代わりにガルシアがそう答えた。


「ちょっと待ってくださいよ!! そう言われたからって、納得できるわけないじゃないですか!」


 唐突に自分たちのこの場での不法投棄を言い渡され、焦りに焦った自分は慌ててトラックの方に駆け寄った。


 カチャ! 


 それに対し、何とペレス隊の連中は一斉に銃口を突き付けてきたのだ。


「喚くなや。無能生産者のゴミども。元から決まってたことだ。

 余分な荷物はここに置いていく。お前らは今日からコミュニティーの外で暮らしていけ。

 …いつまでもグダグダ言ってんじゃねえぞ! ゴミどもが!」


「ペレスの言う通り~♪ 言う通り~♪ てってってーい!」


「……最初からは自分たちをこうするつもりだったんですか?」


「そうだよ~♪ 最初から君たちをこうするつもりだったよ~♪

 荷物持ちとして、同行させるだけ同行させて、あとは用済み~♪ 用済み~♪

 ゴミはゴミ箱にポイ、ポ~イ~♪ ってね。これも全部、あの方からのご命令だ~♪」


「おい、ガルシア! お前何、喋ってんだよ! 機密情報を奴らに洩らしてんじゃねえぞ!」


 ガルシアが余計なことを口走ってか、彼の言葉を慌てて遮るペレス。


「死人に口なし~♪ 口なし~♪ どうせこのゴミどもは外で死ぬから、問題ない、問題ない~♪

 へへへへ~い♪」


「バカが! 誰かにこのことを聞かれたらどうすんだよ! 万が一のことがあるだろうが!」


「万が一のことはここではありませ~ん♪ てってってーい!」


「黙れ! 黙れ! このクソガルシアがぁぁぁ!」


「へへへへ~い♪」


 ペレスはまた髪をくしゃくしゃに掻き毟っていた。


「おい! ゴミども! 俺らについて来るんじゃねえぞ! 

 もしこれ以上俺らの方に近づこうものなら、容赦なくその場で射殺するからな!

 殺されないだけありがたいと思え! まだ壁外で生きるだけのチャンスは与えてやってんだからな。

 俺らに感謝しろよ! …あとこれは今日のバイト代だ! しっかり受け取れ!」


 するとペレスは車内から、1箱のダンボールを投げ入れた。


「サムエルがさっき俺のところに持ってきた食料入りの箱だ! 丸々くれてやる! 

 …3日は持つだろ! それまでせいぜい頑張ることだな! じゃあな! ゴミども!」


「お疲れ、お疲れ~♪ へへへへ~~い♪」


「うわああああ! ペレスさん! それ俺らの分なのに~!」


「うっせえぞ! サムエル! つべこべ言うな!」


「出発するぞ~、ペレス~♪ サムエル~♪ ブンブンブンブ~ン~♪」


 そうして彼らは自分たちを残し、この工場から去っていった。

 2台のトラックはコミュニティードヨルドを目指し、山を下ったのだった。


 こうして自分とグリアムスさんは荷物持ちとして、彼らにこき使われた挙句、ぼろ雑巾のように捨てられてしまったのである。

 コミュニティーの外でも中においても、散々な目にあわされ、大した見返りもなかったどころか、最後はコミュニティードヨルドそのものから追放されてしまったのである。

 あまりにもつらすぎる結末だった…。


 コミュニティードヨルドないしに、統領セバスティアーノをはじめとするコミュニティーの支配者階級の人達に散々振り回され、あえなく追放される羽目になるとは…。


 …仕返しをしてやりたかった。無慈悲な連中の集合体であるコミュニティードヨルドに対して。


 しかし復讐をしようにも、ここからコミュニティードヨルドまではかなり物理的な距離がある。

 何せコミュニティーからここまでたどり着くのに、トラックで3~4時間かかったのだ。

 …徒歩で帰還するには無謀すぎる距離だった。


 仮に道中、車を手に入れたとして、帰れる保証はどこにもない。

 キメラ生物がわんさかいる中、何の地図も持っていない中、どうやって帰還を果たすと言うのか…。


 そんな絶望的過ぎる状況に立たされ、自分とグリアムスさんは途方に暮れるしかなかった。

 これからどうすればいいのか…。

 1日3食が保証されてない外の世界に放り出されてしまった自分とグリアムスさん。

 追放。コミュニティードヨルドからの追放…。その事実だけがひたすら頭の中でこだました。

ここまで閲覧いただきありがとうございます!


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またここまでのストーリーや文章の指摘、感想などもどしどしお待ちしております。


次回、最終章『統領セバスティアーノ編』:前編その12です。よろしくお願いします!

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