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前編 その8 「マッチョメンな彼ら」

 フェンスを登り切り、工場の敷地へと入った直後のことだった…。


 バン! バン!


「「うわっ!」」


 突如、銃声の乾いた音が背後から鳴り響いた。すぐさま後ろを振り向くと…


「ゴミども~♪ はやくそこの扉を開けやがれ~♪

 早くしねえと、俺たちが安心して、中に入れないだろ~♪ へへへへ~い♪」


 ガルシアはヘラヘラ笑いながら、自分たちに拳銃をぶっ放してきたのであった。

 …本当に、一瞬心臓が止まるかと思った。


「おい! ガルシア! 無駄撃ちすんじゃねえ!

 お前、それで弾切れになったらどうすんだ!」


 独断で銃をぶっ放したガルシアをペレスは激しく責め立てる。


「ごめんよ、ごめんよ~♪ ペレス~♪ 全然考えてなかったわ~♪

 以後気を付けま~す♪」


 反省する素振りが全くないガルシア。


「ああああああ!!! このイカレ野郎がぁぁぁぁ!!」


 身勝手な行動を連発しまくるガルシアに対し、ペレスは髪をくしゃくしゃに掻き毟っていた。


「もういい! そこの無能生産者ども! とっとと、その扉を開けてこい!

 早くしろぉぉぉ! 急ぎやがれぇぇぇ!」


 ガルシアに対するとばっちりを半ば喰らった形で、自分たちは例の超巨大なスチール製の扉の前まで向かわされたのであった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「グリアムスさん…。これびくともしませんね」


「そうですね…ベルシュタインさん」


 2人で力を合わせ、目の前にある扉を押してみるものの、扉はピクリとも動かなかった。

 …扉全体が錆びついているのもあってか、微動だにしない。

 とても自分たちの力だけでは、その閉ざされたスチール製の大扉をなかなかこじ開けることができずにいた。


 自分たちがそうして、もたついていたその時…


「おい! 無能生産者のゴミども! いつまでかかってんだ!」


 自分たちが扉に苦戦しているのをみてか、ペレスが急に怒鳴り散らしてきた。


「すいません! すいません! もうすぐ開けられますから!

 …そうですよね!? グリアムスさん!」


 とてもできそうにないことを出来る! と自分が言い張っているうちに…


「ちっ! …クソどもが! おい! フェルマーとクリス! あいつらの代わりに扉を開けてこい!」


 ペレスはとうとうしびれを切らしてか、彼の配下であるフェルマーとクリスにそのように命令し、自分たちの元へ向かわせた。

 そんな彼らは自分とグリアムスさんと同じフェンスをよじ登り、一目散に駆け付けてくる。


「邪魔だ! 無能生産者のゴミども! どけどけどけ~い!」


 フェルマーとクリスは自分たちをまるでハエを追い払うかのようにして、手で払いのけていた。


「…はい。…どうぞ」


 自分たちがその場を明け渡すと、代わりに彼らが2人掛かりでその大扉に手をかける。


「よし…せ~ので行くぞ、クリス!」


「おう! フェルマー。任せたぜ!」


「せ~の……」


「「おらおらおらぁぁぁぁ!!」」


 屈強な体格を有した2人が声を合わせるのと同時に、扉に力が込められた。


 ゴゴゴゴゴゴ…


 するとあら不思議…フェルマーとクリスによる巧みな連係プレーでもって、5メートル相当あった鉄製の扉がものの数秒で開いてしまったのである。


「…ふう。一仕事したぜ。……っておい、ゴミども。すんなり開くじゃねえかよ、これ…。

 お前らはこんなものすら、開けれなかったのかよ…なあ?」


 フェルマーは急に威圧的になる。


「無能生産者ってやっぱこんな奴らばっかりなんだと思うぜ、フェルマー。

 何せこいつらはゴ・ミ♪…だからな」


 全くひどい言われようである。無能生産者=ゴミで彼らの中では脳内変換されているようだ。

 …まあそんなことは、コミュニティーを出発する前の段階から、分かり切っていたことだが…。


「クリスの言う通り~♪ やっぱゴミはただのゴミ~♪ …ってことだね~♪ てってってーい!」


 フェンス越しで全くの外野の人間であったガルシアにも、彼らと同様、鼻で笑われてしまった。


 そりゃ筋骨隆々な彼らからすれば、このような扉を開けることぐらい造作もないのかもしれない。

 がっちりした彼らとひょろひょろでガリガリな自分とグリアムスさんとではそもそもの土俵が違うのだ。

 こんな細身の自分たちが錆びついていて、建て付けの悪くなった扉をこじ開けようとするなんて…まあ無理な話だ。

 彼らと自分たちとでは、生まれ持った体格と骨格の面から見ても、大いなる差がある。


 どうせ有能生産者の彼らは、毎日コミュニティー内にある筋トレ施設なんかに通い詰め、ラットプルダウン。フロントプルダウン。バックプルダウンとか何とかをやりまくっているのだろう。

 筋肉に定評がある(所謂マッチョメンな)彼らと同じ物差しで測られちゃあ、とてもかなわない。

 

 そりゃ上腕二頭筋もラクダのコブみたいにぶっとくなるはずだ…。


「…ますます居心地が悪くなりましたね。…グリアムスさん」


「そうですね。……我々の肩身は狭くなる一方です」


 やがて廃工場の扉が開いたことで、ペレス、リード、サムエル、ガルシアらもその後、扉の前に集まってきた。


「おい、お前ら。まず俺らより先に中を調べてこい!」


 ペレスにそう言われ、自分たちはおとなしくこの廃工場の内部へと足を踏み入れたのであった。

次回、最終章『統領セバスティアーノ編』:前編その9です。よろしくお願いします!

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