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前編 その5 「歯を食いしばれ!」

 昼の2時頃になって、ようやく3番目の街の全域を回り切った。

 今現在、2台のトラックが停車している傍のとある一軒家にて、少々遅い昼休憩を取っているところだ。


「…ほれ、ガルシア。今日の分の昼飯だ」


「センキュ~♪ ペレス。へへへへ~い♪」


 このように本来なら、リーダーペレスからこの場に居る全員に食料が配られるはずだった。

 しかし自分とグリアムスさんに至っては…


「ちなみにお前らの分はなしだ。…言われなくてもわかってるよな?

 …さっきサムエルから全部聞いたぞ。

 お前ら…あの家にあった新品の洗濯機を落っことしたらしいな。

 中の物もそれですっかりダメになっちまったとか。

 …なあ、お前ら。…俺らのことなめてんのか?」


 ペレスは怒り心頭である。

 彼はとても殺気立ったオーラを放っていた。

 一歩間違えば、間違いなく殺される。…そんな予感がした。


「いいえ! 決してなめてなどいません!」


 ペレスのその怒りを鎮めようと、グリアムスさんは慌ててそう言ったのである。


「なめてんだよ! ゴラア!」


 ビシッ! バシッ!


 グリアムスさんはペレスから立て続けに2発も平手打ちを喰らってしまった。

 …元マフィアによる容赦ない暴力。

 ペレスの屈強な腕から放たれた強烈なビンタは、部屋中に実にいい音を響かせた。

 …一瞬でグリアムスさんの両頬はただれたように赤くなってしまった。

 …かわいそうに。


「…とにかくだ! 荷物持ちとして最低限の仕事もこなせねえ奴らに食わせる飯はねえ!

 俺から飯をいただきたけりゃ、次の現場でしっかり仕事を果たすことだな!」


 ペレスのその怒号には有無を言わせぬ凄みがある。

 彼の鬼気迫る表情を前にして、自分たちは何も言い返すことができなかった。


「役立たずに食わせる飯はねえってことだね~♪ 働かざる者は食うべからず~♪

 へへへへ~い♪」


 ついでにガルシアにもこうして鼻で笑われる始末だった。


 ペレスにそうした宣告を受けてしまったため、ここはおとなしく引き下がるしかない。

 次の現場では必ず荷物持ちとして、2度と失敗のないよう自分たちは精一杯立ち回らなければならない。

 そうでなければ、死罪は免れない。

 …荷台の容量的に、次がラストチャンスだ。

 そこで彼らに認められなければ…。意地でも頑張るしかないだろう。



 自分たちは次の現場に備えて英気を養うべく、土ぼこりで薄汚れてるフローリングの床の上に、仕方なしに座ろう思い、腰を下ろしていた。

 しかしその時だった。その様子を見ていたペレスに今度はこのようなことを言われてしまったのである。


「おい! そこの無能生産者ども! 誰が座っていいと許可した!? 殺すぞ! 

 荷物持ちとして十分に仕事をこなせてないくせして何、壁にもたれて座ろうとしてんだ!?

 俺の指示があるまで、お前らはそこでずっと突っ立ってろ!

 次に少しでも座るような真似をしてみろ! 命はないと思え!」


 こうして自分たちは、ペレスから殺害予告を受けてしまった。

 飯をもらえないばかりか、次の目的地に彼らが移動するタイミングになるまで、ずっと直立で立たされることが決定してしまった。


 ペレス隊の連中のほぼ全員、そんな自分たちをよそに、その辺のソファーに座るなりして、のんびりくつろぎ、束の間の休息を取っていた。

 ふかふかのソファーの中でちょっとした仮眠を取る者や、ソファーにもたれながら、この家の壁にかけられていたダーツの的で呑気に遊んでいる者までいた。


 自分たちは長いことトラックに揺られ、荷物持ちとして物資を運ばされたりして、早朝から気の休まる時間がない。

 四六時中動きっぱなしだ。

 そのせいで足の方にもだいぶ疲労がたまってきた。


 荷物持ちとして彼らに同行しているおかげで、久々にコミュニティーの外の景色を拝むことが叶い、ちょっとした観光気分を味わえたりもしたが、正直それもお腹いっぱいである。

 長旅の疲れのようなものがピークに達し、もはや外の景色を楽しむ気力すらない。

 とにかく今は荷物持ちとしての仕事を終え、コミュニティーに帰還し、この旅疲れから一刻でも早く解放されたかったのであった。

次回、最終章『統領セバスティアーノ編』:前編その6です。よろしくお願いします!

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