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その49 「瞬殺!ペトラルカVSミーヤーVS下僕現場監督!」

「この野郎!!うおおおおお!!」


 ミーヤーは怒りに燃えている。ペトラルカさんもミーヤーの後に続いた。

 2人とも丸腰だ。彼女たちは武器を一切持たずに、拳1つで下僕現場監督にまっすぐ突っ込んで行ったのである。


「な・・・何だおめーらは!! う・・・うわ~!!」


 下僕現場監督はまさかしばき棒という強力な武器を持っている自分自身に、女の子たちが無防備で突っ込んでくるとは、思ってもいなかったようだ。

 彼の顔からは明らかな焦りが見て取れる。


「く・・・くるな!お前らはこのしばき棒が目に入らぬのか!?」


 下僕現場監督はペトラルカさんとミーヤーに対し、しばき棒を見せびらかすように突きつけたりもするが、そんな彼女たちは一向に臆する様子がない。

 しばき棒が目に入らぬばかりか、()が高い控えおろう!!することもなかった。平伏するなんてもっての他だ。


「何でだ!! リトルピッグどもは、これを一目見ただけで、蛇に睨まれた蛙になるのに!うおおお!! 来るな! 来るな! ぶちのめされてえか!」


 下僕現場監督は完全に冷静さを失い、まるで壊れて制御を失ったロボットかのように、ブンブンとしばき棒を振り回していた。

 当の下僕現場監督は体幹が細く、おまけに下半身も脆弱なこともあってか、しばき棒に振られる形となっている。

 見るからに喧嘩100戦100敗してそうな身なりの下僕現場監督が、俊敏に動き回るペトラルカさんとミーヤーにしばき棒で太刀打ちできるわけがなかった。


 元々が弱い、貧弱!貧弱ゥ!な人間が鉄条網ぐるぐる巻きのバットを持ったところで、これまで幾多の戦場を渡り歩いてきた武装班所属の彼女2人に戦いを挑んだ時点で敗北は約束されていたと言えよう。


 重心もブレブレでカラダがよろめきまくったところで、下僕現場監督はあっけなくペトラルカさんに背後を取られてしまった。


「取った!ミーヤー!!背後取ったよ!」


「おい!離しやがれ!!金髪のくそ女!!」


 身動きのできない下僕現場監督は、みっともなくそのように喚き散らしていた。


「でかした!ペトラルカ!しっかりそいつを押さえといてね。

 あとはわたしがあぁ~して、こぉ~して、じっくり調理してあげるから~って・・・・あれ?ペトラルカ?・・・その傷・・・」


 ミーヤーは手をわなわなとさせながら、下僕現場監督にゆっくり近づいていたのだが、ふとペトラルカさんの右頬に傷に気づき、このように言ったのだ。

 ・・・色白で綺麗なペトラルカさんの肌には、切り傷がくっきりとつけられていた。


「・・・やっぱり!? ・・・さっき、あのトゲトゲがちょっと頬のあたりを掠めちゃったみたいなの・・・。さっきからその部分がひりひりして痛むの・・・」


 ペトラルカさんはどうやら下僕現場監督の背後を取り押さえる際に、その拍子で切り傷を負うことになってしまったようだ。


 それを聞いてミーヤーは、


「うおおおお!!!こいつよくも!!」


 何故か彼女自身が怪我を負わされたわけじゃないのに、こうして怒りをあらわにしていた。


「よくも・・・よくも! わたしの大事なペトラルカを傷物にしてくれたな!?

 この特別天然記念物級の透き通る白いお肌に傷をつけようとは・・・・ぜ・・・絶対に許さん!復讐だぁぁぁ!!」


 ミーヤーの顔は見る見る内に火が付いたように真っ赤になっていった。


「ペトラルカ!そいつを仰向けにして!」


「え?・・・え? 別にいいけど・・・何するつもりなの!?」


「いいから、いいから! とにかくペトラルカはわたしの言う通りにするったらする!」


「・・・わ・・・わかった!」


 そう言われペトラルカさんは素直に下僕現場監督の羽交い締めを外し、急いで後ずさりした。

 すると下僕現場監督は地面に向かって、後ろ向きに勢いよく倒れたのである。


「ぐはっ!!」


 石畳の硬い地面に、下僕現場監督はカラダを思いっきり打ち付けてしまった。


「成敗! ペトラルカを傷物にした報いだぁぁぁ!!」


 下僕現場監督が仰向けになり、そうしてひるんでいる隙に、ミーヤーは彼のひざ裏をグワァッと持ち上げると、素早く彼のカラダごと反対にひっくり返した。


 その状態でグーっとミーヤーが腰を下ろすと、下僕現場監督は瞬く間に「ぎゃぁぁぁ!痛え!痛え!」と言って、悲鳴を上げ出したのであった。


 ミーヤーのお得意のエビ固めである。下僕現場監督は瞬殺KOとなった。


「おい!やめろ!くそ女が!!」


 下僕現場監督はそんな状態に置かれても、まだ負けを認めようとしない。このようにして見苦しく、ずっとかんしゃくを起こしていた。


「し・・・しぶとい奴!これならどうだ! うおおおお!!! ・・・おい!参ったか!!」


「うるせえ!黙れ黙れ!まだまだまだ・・・うぎゃぁぁぁ!!!」


 下僕現場監督は惨めで見苦しい。

 彼みたいくプライドが高く、人に対して見栄を張りたがる人間ほど自分の弱さ、非を認めようとしない。

 自分を強い人間だと。決して弱い人間だと認めたくがないために、逃げ道をつくって、いつまでも世間とのギャップに抗い、足掻こうとするのである。


 しばき棒を使って無能生産者のみんなを脅し、その力でもって、服従させようとした人の末路である。

 結局豚小屋という狭い鳥籠の中で、いくら偉そうに威張り倒したところで、彼女たち本物の精鋭には何も通用しない。

 そんな事実からも下僕現場監督は目を背けようとしている。だからみっともなく、こうして意地を張り続けるのだろう。

 まさしく下僕現場監督は井の中の蛙の「俺って最強系だ! ひゃっはー!」だと思い込んでいるタイプの人間なのだろう。・・・ふと自分はそう思った。


「謝れ!・・・ペトラルカを傷物にしたことを!今すぐここで謝れ!」


「うるせえ! 何が傷物だ! ごらぁ! ・・・ぎゃぁぁぁぁ!助けてくれぇぇぇぇ!!」


 ミーヤーは力を入れたり、入れなかったりなどして力の緩急をつけていた。

 ミーヤーがこうして力を入れるたびに下僕現場監督は泣き喚き、ミーヤーが少し手を抜いたと見れば、そのタイミングを見計らったようにして、はたまた暴言を吐き散らす。

 ・・・ずっとこの繰り返しである。



「謝れ!・・・謝れ!ペトラルカを傷物にしたことを!おりゃあああ!!」


 ミーヤーの力が入る。下僕現場監督は背骨と足がエビのようにさらに折れ曲がった。


「ぎゃぁぁぁぁ!! は・・・はなせ! このクソビッチがぁ!! 離しやがれ!!」


 その下僕現場監督に今しがた放たれたクソビッチの一言に、ミーヤーはついに頭にきたのか、


「カッチーン。なんですってぇぇぇぇ!!取り消せぇぇぇ!今すぐその言葉取り消しなさい!!

 わたしはまだ処女なんだからぁぁぁぁ!!! クソビッチなんかじゃなぁぁぁぁい!!」


 ミーヤーは下僕現場監督にクソビッチと言われた瞬間、より一層力を入れた。背骨と足がどんどんエビのように折れ曲がっていく。


「痛い!痛い!痛い!やめろぉぉぉぉ!!」


「ミーヤー!!もっとやっちゃえ!やっちゃえ!・・・と言いたいところだけど、これ以上やっちゃうとその人再起不能になっちゃうから!・・・もう十分だよぉぉ」


「何言ってんだか!!こいつはペトラルカを傷物にした奴だよ!生かしておけないっての!もっともっといたぶってやる!うおおおお!!」


「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 その悲鳴と共に、ポキポキと甲高い音まで聞こえてきた。カルシウムの塊が真っ二つになる、思わず耳を塞ぎたくなるような効果音、SEである。


「わたしなら大丈夫!ただのかすり傷だから!わたしは別に傷物にも何にもなってないから!だからもう止めてぇぇぇぇ!!」


「ちっ!・・・ペトラルカがそう言うんならわかったよ。もうこの辺で終わりにしといてやるよ」


 そう言ってから、ミーヤーはペトラルカの言葉に従い、下僕現場監督をエビ固めからやっと解放したのであった。


「ぐはっ!・・・し・・・死ぬかと思った。・・・お・・・おのれ・・・」


 ミーヤーはそのように負け惜しみたらたらな下僕現場監督の捨て台詞に全く耳を貸さず、一目散に自分の元に駆け寄って来た。


「ベル坊!・・・顔中あざだらけじゃん!・・・誰にやられたの!?ベル坊!!」


「はははは・・・別に大丈夫。・・・ちょっと殴られただけさ。あはははは・・・」


 自分は彼女たちにかけられた心配を作り笑いを浮かべることで返していた。

 ・・・実際、自分は心の底から笑えるような心境ではなかったのである。

 仲間に売られ、下僕現場監督の忠誠の証としてパフォーマンスと称した理不尽な暴力を無能生産者たちに振るわれた。・・・正直自分の心は深く傷ついた。

 またしても人に裏切られてしまった。そこに優しさもなければ、互いに助け合うといった心を微塵たりとも感じることはなかった。

 ・・・信じるって、一体何なんだろう。いつまで人を信じ続ければいいのか?


 そんな心の内を彼女たちに決して悟られないよう、自分はこの見せかけの笑顔を徹底して崩さないようにしていたのであった。



「おい!ヘンドリック!大丈夫か!?」


 自分がペトラルカさんとミーヤーの2人に支えられながら、歩かされていたところに現場監督たちがやって来た。


「こんなところに居たんだな!随分探したぞ!ヘンドリック!」


 無能生産者たちのギャラリーをかき分け、自分たちの前に彼らは躍り出た。ファルコン、メンフィス、アンデルセン、キースら現場監督係が勢ぞろいしている。


 しかしそんな彼らの誰1人して、路地奥にいる頭をグチャグチャに潰された彼に対し、一言も何事も言わなかったのである。彼の死に対して、彼らは全く気にも留めていなかった。

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