その36 「牧場一家の団欒」
新たに第1部から第8部まで、新エピソードの追加、及び加筆を行いました。
主人公ベルシュタインのコミュニティードヨルドの合流までの流れを詳しく書きました。ストーリーにちょっとした修正が入っています。
もしよければ、序章『アポカリプス』世界崩壊編、全8話あるので、閲覧いただけたらと思います。
カステラおばさんの家に入り、これから夕食の準備に取り掛かるところだ。
「今日はわたしの牧場でとれた牛肉、ヒツジ肉をたくさん用意しますからね。」
とのことで、リビングの食卓には大量の肉料理が並べられるらしい。
「あと今日は特別にケーキも振る舞うわ。
最近、牧場の敷地で養鶏場もつくったの。そこで採れた鶏の卵がたくさんあるから、その卵を使って、大きなケーキをつくるわよ」
なんとケーキまで作ってくれるらしい。
・・・・崩壊した世界の中、物資もそんなに潤沢にあるわけではないのに。
・・・・何なんだ・・・・このVIP級の待遇は・・・・。
自分がのうのうと、この牧場で労働しながら、楽しく暮らしているのをよそにグリアムスさんは、未だ無能生産者としての労働に駆り出されているのだろう。
彼女らと過ごす日々が楽しすぎて、すっかりグリアムスさんの存在を忘れていた。
・・・・できることなら、この牧場での日常にグリアムスさん本人も加わってほしい。
・・・・・機会を見て、今日中にカステラおばさんにはこのことを話しておこう。
・・・今はこれから始まるお祝いパーティーの下準備の事だけを考えよう。
とにかく楽しむ!人生ではじめて、異性の子たちと堪能するパーティーなのだから。
盛り上がりを見せるこの雰囲気の中で、急にグリアムスさんのことを自分から切り出してしまうと、この場の雰囲気に水を差しかねない。
だから今は我慢。パーティーが佳境に入ったタイミングの時に切り出せばいいのだ。
さっそく自分もカステラおばさんを筆頭とした女性陣がキッチンにむかっていったのを見て、自分もそれに追従した。
しかし・・・・
「ベル坊やくんは、今日のパーティーのメインゲストなんだよ!?だから準備のことは、わたしとミーヤーとカステラおばさんに全部任せて!」
「そうそう!ベル坊はその間、そこのソファーでゆっくりしながら、こいつと戯れときなよ。
・・・・・・・おい!てめえ!舌を出しながら、わたしに近づいてくんなし!」
ミーヤーの足元で舌を出しながら、ハァハァいわせているのは、カステラおばさんが飼っている小型犬のパピン。純白で長い被毛を持っている。
その犬の品種はマルチーズと呼ばれているらしい。・・・・とてもおいしそうな名前をしている。
「きっとこのパピンちゃんはミーヤーのことが大好きなんだと思うよ。だからかまって!かまって!をしてくれるの。
・・・・ミーヤーも一度くらいその子の想いにこたえてあげたら?」
「い・・・いやなこったい!ひ・・・ひとまずわたしは、これからペトラルカと一緒にパーティーの準備しなきゃだし、あ・・・あとはベル坊に、この犬のこと全部任せた!」
と言って、ミーヤーはパピンのことをすっぽかして、キッチンの方へと向かってしまった。
「クゥゥ~~ン・・・・」
マルチーズのパピンは、ミーヤーに相手にされなくて、もの悲しそうな表情を浮かべていた。ずっとミーヤーの後ろ姿を目で追っている。
「ごめんね、パピン。ミーヤーもこれからの準備で忙しすぎて、あなたにかまってあげられないだけなの。
だけど今日はあのベル坊やくんがパピンのことかまってくれるから、あの子と一緒に遊んでおいで」
ペトラルカさんがパピンに対して、前かがみになってそう語りかけると、パピンは素直にそれに応じ、自分の元へやってきた。
パピンと自分の目が合う。じーっとお互い同士、見つめ続けていた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「は・・・はじめましてパピン。ベルシュタインです。・・・よ・・・よろしゅう頼んます」
そう言ってパピンに対して、手を差し出した。これからひとつ屋根の下で暮らす仲となるのだから、まずはご挨拶を。
この子が犬だからと言って、礼儀を欠いてはいけない。最低限のエチケットとして犬でも人間と同様に接しなければならないのだ。
そしてパピンの小さな前足まで手を伸ばした。・・・・まずは友好のしるしとして握手をしようと思う。
「これからよろしくね!パピン」
キランッ!
自分はさわやかな笑顔を浮かべ、口元からは真っ白ではない、少々黄ばんだ歯をのぞかせる。
「ガルガルガルッ・・・・・」
可愛らしいマルチーズのパピンからは、その容姿にふさわしくない音色が聞こえてくる。
「え?・・・・なんかガルガルされてるんだけど・・・・これってひょっととしてこのパピンに威嚇されてる?」
と思った次の瞬間。
「キャン!」
マルチーズのパピンに、自分の差し出した左手の親指を除く、左の4本指をパクリといかれた。
「あっ!!こいつ噛みやがった!いってぇぇぇ!!」
自分の左手がヒリヒリしてきた。
「キャン!キャン!キャン!キャン!」
それからこのパピンは、ただひたすら自分に対して吠えてくるばっかりであった。
いくら自分がパピンに近づこうとしてもすぐ距離をあけられ、ちょっと隙を見せると、自分の手を噛んでくる。その繰り返しだった。
「全くよぉ~!手を焼かせるぜ!このクソガキがぁぁ!!」
「こら!ベル坊くん!そんな言葉の使い方はしちゃダメ!」
ペトラルカさんにこっぴどく叱られてしまった。
「クゥ~~ン・・・・」
「ほら!ベル坊くんがパピンにきつい物の言い方しちゃったから、この子、すっかりおびえちゃってるじゃない」
汚ねえ!可愛らしい身なりをして、いざ自分が怒ったら一目散にペトラルカさんのところに行って、泣きついていきやがった!
「ぐぬぬぬ・・・・」
そうして小型犬のパピンに振り回される事、約1時間後、ついにお祝いパーティーの準備が整った。
ようやく悪ガキのパピンのもとから解放された自分は、急いで大量の肉料理とケーキが並べられた食卓の方へと向かった。
ここまで閲覧いただきありがとうございます!
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またここまでのストーリーや文章の指摘、感想などもどしどしお待ちしております。
※序盤の『アポカリプス』世界崩壊編のところで、第1話から第8話まで、新たなエピソードを追加、加筆しました。
前書きでも明記していた通り、もしよければ、そちらの方も閲覧いただけたらと思います。
新たなエピソードを書いたので、そちらのストーリーの出来の感想をいただけたらと思います。ぜひともよろしくお願いします。
次回は 本編 その37「パーティーミッドナイト」です!近日アップします。




