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後編 その24 「マイクテスト」

「……ん? ここは?」


 黒ずくめの男に、あのハウスダストのひどい家を襲撃されてから、いったいどれほどの時間が経っただろうか。

 気が付くと、自分はひらけた洞窟のような所に居た。

 辺りをむき出しの岩肌に囲まれ、日の光も届かず、やけにじめじめしている場所。

 唯一耳に聞こえてくるのは、天井から滴り落ちる水の音のみ。それは一定の周期を刻み続け、やけに反響していた。

 ……どうやら自分は、外界から完全に隔離された場所に連れてこられたようだ。

 仮にここで大声を出して、助けを求めたとしても、おそらく自分の声は外の誰にも届かないだろう。


「それにしても洞窟って……、そんな場所コミュニティーのどこにもなかったような」


 自分の記憶が正しければ、このコミュニティー内にほら穴のような場所も炭鉱の入り口のような場所も何もなかったはずだ。

 無能生産者として、コミュニティー中を散々連れ回された自分がそう言ってるのだから、間違いない。

 ……心なしか辺りの空気も薄く感じる。どうやら自分は洞窟の結構奥の方まで、連れてこられたようだ。

 自分をこんな場所に連れてきたあの黒ずくめの男の正体もわからず、なぜ彼に麻酔銃を撃たれ、眠らされたのか、その目的すらわからない。

 おまけに自分の手足は、なぜか鎖で繋がれてしまっている。

 自分の背後には大岩があるのだが、そこにはボルトのようなモノを打ちこまれ、逃げようにも逃げられなかった。

 ここを出ようにも、この大岩とボルトで繋がっている鎖が、まさに足枷あしかせとなっているのだ。

 洞窟内には砂塵も舞い、自分の耳や鼻にひっきりなしに入ってくる始末。

 さっきのハウスダストもひどかったが、この洞窟内に飛び交っている砂塵も空気が薄いことに加えて、環境は劣悪極まりなかったのである。


 そうしてしばらく暗い洞窟内で1人、ポツンと取り残されていたその時。

 洞窟の少し遠くの方から、1つの爆発音が聞こえてきた。

 

「ん? 何の爆発だろう?」


 それは地面が揺れるほどの衝撃だった。

 まるで地下トンネルでの掘削作業の際に、ちょっとしたダイナマイトを使用したかのような……。

 先程の爆発の衝撃からなのか、洞窟の天井からは、さらさらと少量の砂も落ちてきた。

 岩などの障害物を破壊するぐらいには、十分すぎる威力だったように思える。


 ひょっとしてここでは、洞窟を掘り進める作業でもしているのだろうか。

 そういえば前に、パワハラ現場監督がコミュニティーの青空裁判で裁かれた際、最終的に地下労働行きを命じられていた。

 ……もしかすると、ここはそのパワハラ現場監督が連れてこられた先の地下労働施設なのかもしれない。

 ひょっとすると自分があの黒ずくめの男に麻酔で眠らされ、ここまで連れてこられたのも、その地下労働とやらモノを自分にさせるためだったのかもしれない。

 直近でセバスティアーノと謁見した際、統領の奴は自分たちに対して確かに『有能生産者として、これから我輩に尽くせ』と言ってきた。『無能生産者から有能生産者に昇格させてあげる代わりに、我輩により尽くすようにと』

 にも関わらず、この仕打ちはあまりにもひどすぎる。約束がまるで違うじゃないか。

 ……奴のあの時の口約束はいったい何だったのか。

 口から出まかせを散々吐いておいて、結局は無能生産者と何ら変わらない労働を自分たちに課してくる。

 自分たちはいったいどれだけ奴らに振り回されればいいのだろう。

 結局クラーク先生の使いの人よりも先に、あの正体不明の黒ずくめの男が自分の元を訪れ、こうしてまた囚われの身となってしまった。

 今頃、本物のクラーク先生の使いの人は、必死こいて自分たちを探しているに違いない。


「……うっ、クラーク先生。早く自分を見つけてくださいよ。助けてください」


 こうなってしまえば、最後に頼れるのはクラーク先生もしくはクラーク派の人々だけだ。

 グリアムスさんもおそらく、自分と同じくこの洞窟のどこかに捕らえられているのだろう。

 鎖で繋がれ、身動きが取れなくなっている以上、自力での脱出は実質不可能だ。

 以上の状況から自分はそう悟り、誰か助けに来てくれと惨めに他力本願で祈っていたその時だった。


「……あっ、あっ、あっ。マイクテスト、マイクテスト」


 突如どこからか、スピーカーのノイズ音が聞こえてきたのだ。

 それからマイクテストの際のあっ、あっ、あっ、のマイクの確認の声が聞こえてきてから、スピーカー越しに次のことが語られたのだった。


「聞こえておるか!? 元無能生産者のお主よ。我輩は統領セバスティアーノである。

 ……このコミュニティーの絶対権力者であり、神である男だ」


 スピーカーの声の主は、あのにっくきセバスティアーノだった。

 マイク越しでも、あの中世貴族ぶった長い髭と、下民を蔑むような卑しい目つきが手に取るように浮かんでくる。

 ……なるほど、あの黒ずくめの男はこいつの手下だったのか。

 セバスティアーノがあの黒ずくめの男に命令して、自分に暴行を加えるだけ加えさせたところで、強制的にこの洞窟内に連行する。そして砂塵飛び交う劣悪な労働下の中で働かせる。

 なんて前時代的なことを! 人権を踏みにじる悪質極まりない行為だ!

 自分に対してこのような仕打ちをしている時点で、あの謁見の際に、奴の口から放たれた無能生産者から有能生産者の昇進の話は、この時点で全て嘘だったことが判明してしまった。


 ひとたび息をすれば、むせかえってしまうほどに劣悪極まりないこの洞窟の空間。

 防護マスクがないと、たちまち気管支喘息に患ってしまうだろう。

 ただでさえ息をするのも苦しい中、自分はスピーカー越しにいるセバスティアーノに対し、怒りのこもった口調で、以下のことを言った。


「約束が違うじゃないか! セバスティアーノ! 何で自分をこんなところに連れてきたんだ!」


 セバスティアーノは自分のその主張に対して、フッと鼻で笑った後、次にこう言い返してきた。


「約束が違うと? ……ほほう、それが我輩にクーデターを企て、国家を転覆しようとした者たちの言うセリフかね?

 図々しいにもほどがあるぞ、お主!

 我輩を統領の座から失脚させ、かのクラークを新たな統領として即位させようと画策したのは貴様らの方ではないか!

 ……このコミュニティードヨルドは、我輩が絶対的な象徴じゃ。

 キメラという未知の生物らに人類の多くが無残な死を遂げてきた中、我輩は残された人類のためを思って、この強固な壁を築き、誰もが安心して生きられるよう尽力してきたのだ。

 我輩の働きのおかげで、この人類最後の楽園が築かれたのだぞ!?

 ……本来なら、そんな我輩にみな、感謝してしかるべきなのじゃ。

 それをただ我輩のやり方が気に入らないからと言って、すぐクーデターを起こそうと企てる。

 我輩は今、手塩にかけ、世話をしてきた犬に噛みつかれた気分じゃ! 実に不愉快じゃ!

 なぜどいつもこいつも、隙あらば我輩を陥れようとするのじゃ!」


 スピーカー越しでも、セバスティアーノの怒りはすごく伝わってきていた。


「コミュニティーに住む大抵の愚か者どもは、やれもっと飯をよこせだとか、待遇をよくしろだとか、自分勝手なことばかり抜かしおる!

 それはお主らも同様じゃ。不平不満を垂れ流し、そのくせして何の責任も取らぬゴミのような連中じゃ。

 ……こやつらは無能のくせして、ぎゃあぎゃあ騒ぐだけ騒ぎ立てる。そのような連中に、どうして我輩がいちいち配慮してあげねばならんのじゃ。

 ただでさえ人類滅亡の時なのじゃぞ? なぜお主らは我輩の意思決定に対して、いちいち口出ししてくる!?

 ろくに大したアイディアを出さぬくせして、我輩のことを人でなしとか、ろくでなしとか主張し散々叩いてくる。

 今の世の中にそのような輩は不要じゃ。我輩の足をどこまでも引っ張る愚か者じゃ。

 本来こやつらは、我輩にとって駒以下の存在。我輩が徹底的に支配し、管理することでしか価値の見い出せぬ無能な人間どもじゃ!」


 セバスティアーノはこれでもかと言わんばかりに、身勝手な主張を続けてくる。

 自分はそんな身勝手なセバスティアーノに対し、以下のことを言ってのけた。


「ふざけんな! 人間をお前の勝手な物差しで図るな! お前の暴政でコミュニティーに住むみんなが苦しんでんだ!

 だからクラーク先生はそんな現状を憂いて、お前を引きずり降ろそうと……」


「愚か者めが! たかがお主たち程度の者に、何が変えられると言うのだね? 大して力を持たぬ者に何ができると言うのじゃ!?

 だからこそ我輩は、お主たちのような無能なコミュニティー民ども1人1人に、チップ爆弾を装填させることを考え着いたのだ。

 ……無能な人間は勝手なことをせず、黙って我輩に従えばいいのだ。もし我輩に従わなければ、死の恐怖を植え付けさせ、下手なことをせぬようずっと縛り付けるまでじゃ。

 ここまで我輩は幾多のキメラから、このコミュニティーを守り通してきた。平和と安寧を、お主たち無能な人間のためにもたらし続けてきた。

 ……お主たちは、それの何が不満なのだね?」


「お前のやっていることはただの粛清だ! 都合の悪い人間を都合よく消すための、詭弁きべんに過ぎない!

 コミュニティーに例え平和と安寧をもたらしているからと言って、お前の言う無能な人間を、お前の勝手な都合のために縛り付けていい理由はどこにもない!

 ……だからそんなお前を、クラーク先生は止めようとしたんだ!」


「ほほう。なるほど。……お主も、かのクラークと同じ考えなのだな?」


「当たり前だ! お前なんてとっとと統領の座から降りるべきだ! お前はリーダーに相応しくない!

 残虐な独裁者にコミュニティーの未来なんて、任せられるはずがない!」


「そうか……。どうやら我輩に、お主を悔い改めさせるのは難しいらしい。

 それだけお主は無能な存在だということじゃ。我輩の見立ては最初から、間違ってなかったようじゃな。

 もはやお主とこれ以上喋っても、時間の無駄じゃ。いたずらに場をかき乱す者たちなど、このコミュニティーには不要じゃ。

 無能なお主は我輩がこの手で直接消し去るしかない。……悪く思わんでくれ、元無能生産者のお主よ」


 セバスティアーノがそう言ってから、スピーカーが切れたのか、突然向こうの方から何の音もしなくなった。

 ……スピーカーのスイッチを切って、席を外したのだろうか。

 そうして再びスピーカーに雑音が入るようになってから、セバスティアーノは次のことを言った。


「我輩の手元には今、お主の頭にある爆弾の起爆スイッチがある。……今からペナルティーとして、我輩が直々にこのスイッチを押す。

 ちなみに1つ補足しておくが、お主の同胞の者のうちの1人はつい今しがた、我輩の手で処分させてもらった」


「しょ、処分だと!? いったい誰をだ!?」


「うるさい。いちいちわめくでない。耳障りじゃ。

 ……ええっと、確か名はグリアムスと言っておったかのお。そやつもお主と同様、最後まで悔い改めさすことが叶わなかったわい。

 よってそやつの頭にあったチップ爆弾を、我輩が起爆させてもらったのじゃよ」


「うっ、嘘だ! 嘘だそんなこと! でまかせを言うな! ……あ、あのグリアムスさんが死ぬわけないだろ!

 そ……それに頭の中の爆弾は起爆しないはずだ! だって爆弾の信管は……」


「……お主はつくづく物分かりが悪いのお。クラークとお主たちが何を企んでいたのか、我輩が知らんとでも思ったか!?

 このコミュニティードヨルドには、我輩に忠誠を誓う者が大勢居るのじゃぞ?

 お主たちクラーク派はひそかに国家転覆を狙っておったようじゃが、そんなものは忠実な我輩の部下の報告のおかげで、全て筒抜けだったわい。

 クラークが我輩の技術班の連中に爆弾の信管を外すよう告げ口したことや、お主たちにクラークらの所有する隠れ家で、チップ爆弾の除去手術を行おうとしたことまで、情報は全て耳に入っておる。

 ……お主たちのような反乱分子はのお、未然に処理しておかねばならぬ。

 お主たちのような存在がコミュニティーを下手に混乱を招くからのお。

 役立たずの人間を囲っておけるほど、我がコミュニティーに余裕はないのじゃ。内部から腐らせる輩はまず真っ先に処分しなければならん。

 ……悪く思うな、これもコミュニティードヨルド統領である我輩の責務なのじゃ。恨むならお主たちの無能っぷりを恨むことじゃな」


「ううう……。そんな」


 セバスティアーノによるこの宣告は、絶望以外の何者でもなかった。

 クラーク先生の計画は、初めから全てがダダ漏れだったのだ。最初から自分たちは奴らの手のひらで、踊らされ続けていたのだ。

 そんな奴らの物差しで見ると、自分たちは立派な政治犯ということになる。しかも国家転覆罪までかけられている。

 そして自分の頭に埋まっているチップ爆弾は、その信管が一切外されておらず、いつでも起爆可能ということだった。

 

「冥土の土産に、そこのお主が今どこに居るのか教えてやる。

 お主が今いるところは、地下労働施設じゃ。コミュニティードヨルド地下シェルター計画、第2都市の建設現場じゃ。

 有事の際に、地下シェルターへ避難できるよう、その目的のために建設されておる施設じゃ。

 ついこの数か月前からようやく着工に入ったばかりだ。

 完成まではおそらく5年ほど、いや数十年はかかるやもしれぬ。

 こんな不安定な世の中で、なに大それたことをしているのだと、そこのお主は思うかもしれんが、だがこの施設にはそれだけの長い年月をかけてあまりある価値があるのじゃ。

 ここを完成させた暁には、地上の楽園コミュニティードヨルドのように、繁栄した都市にしたいと思っておる。

 ……お主は今から、地下都市建設の礎となるのだ。

 お主の背後にある大岩を爆破するために、お主の頭の中にあるチップ爆弾を利用させてもらう。

 コミュニティードヨルドの今後の繁栄のために、お主にはここで死んでもらおう。

 なに、悪いようにはせん。お主のことは我輩の頭の片隅にでも入れておいてやる。感謝せよ」


「くそったれ! 誰が……誰がお前の野望なんかの礎になるか!

 誰がお前なんかのために、その礎とやらモノになってたまるか!」


 自分は精一杯、抵抗の意志を見せる。コミュニティー地下シェルター計画なんて、そんなの知ったことか!

 誰がお前の目先の利益なんかのために、自分が犠牲にならなければならないんだ!

 ……こんな暴挙がまかり通るはずがないし、まかり通ってはいけないんだ!

 権力をかさに、力なき者に対して権利を踏みにじるような真似は、断じて許されてはならない。


「やかましい。無能がギャアギャア騒ぐでない。耳障りじゃ。負け犬の遠吠えじゃ。実に浅ましい。

 ……もうよい、出て来いキャサリンよ。こやつを麻酔で即刻眠らせるんじゃ。

 静かにさせよ」


「はっ! かしこまりました」


 セバスティアーノが例の彼女の名前を呼ぶと、あの時自分とグリアムスさんをセバス邸の前で出迎えたメイド服の女の人が出てきた。

 ……まさか、あの彼女がセバスティアーノの手下、スパイだったなんて。

 結局自分たちは彼女の手のひらにも、転がされていたのだ。


「どうしてですか、キャサリンさん。なんでクラーク先生のことを裏切ったんですか!?」


 キャサリンは自分の言い分に対し、呆れた表情を見せると、次のことを言った。


「はあ、いったいあなたは何を言ってるのかしらね。わたしは最初からセバスティアーノ様の忠実な部下よ。

 クラークなんてただ医学の知識があるだけで、政治とか統治のことはからっきしダメ。

 感情に流されやすくて、いざという時の意思決定がまるでできない。すぐ私情を絡めたがる。

 だけどセバスティアーノ様は違う。この方はたとえそれがどんなに非情な選択でも、このコミュニティーの利益になることなら、躊躇なく決定を下せるの。

 下手に思いやりがあって、決意が揺らぐような人に、このコミュニティーのトップは務まらないのよ。

 ……このコミュニティーを正しい方向に導きだせるのは、セバスティアーノ様において他はいないの。

 だからわたしは、今までセバスティアーノ様に刃を向ける人を、水際で処理し続けていたのよ。

 っで、今回処理することになったのが、たまたまあなたたちだったってだけ。

 ……でも残念。せっかくあなたたちは、あのグリフォンキメラを操れて、このコミュニティーの利益になる存在だと思ったのに、結局はただの無能。

 キメラを操れるだけで、それ以外は何の価値もなかったわけね。

 だからあなたたちはここまでよ。……さよなら、グリアムスくん、そしてベルシュタインくん」


 キャサリンさんの最後の言葉は、とても冷たく、人を引き離す響きを放っていた。

 自分は早速、目の前のキャサリンに麻酔の液の入った注射を入れられ、すぐしないうちに意識が朦朧としてきた。

 ……終わりだ。もう自分には為す術がない。

 せっかくコミュニティーのことを、自分以外の皆のためを思って、クラーク先生と共に立ち上がろうと思っていたのに。

 結局はまたドジを踏んで、こうして命を落とす。

 自分の人生はいったい何だったのだろうか。他人に散々振り回されて、そして最後は自分の意志で死を選ぶことすらできなかった。 


 もうまもなく自分は意識を失う。そうして意識のないところで、自分は静かに息を引き取るのだ。

 むなしいばかりか、無力感に打ちひしがれる思いだ。


「もうおしまいなんだ。……最後にペトラルカさんの姿、目に焼き付けたかったなあ」


 だがその思いも、どうやら叶いそうにない。

 朦朧としていく意識の中、自分はそんな彼女の、コミュニティー広場のステージ上できらびやかに踊る姿を目に浮かべていた。

 そしてもうまもなく、昏睡状態に陥ろうとしていたその時だった。

 ふと自分の耳元に、ある女の子の声が聞こえてきたのだ。


「……やっと見つけましたよ、ベルシュタインさん」


「えっ? ……も、もしかしてその声は、」


 その懐かしき声に、思わず心が飛び跳ねた。

 これが俗に言う走馬灯と言うか、幻覚ってやつなのか? だがそんな些細なことは、今の自分にとって、どうでもいい。

 早くあの時の彼女に会いたい。自分はその一心で、求めるように辺りを目で追い続けた。

 するとちょうど、キャサリンの背後の付近に、観葉植物のような緑色の髪をしたあの女の子が……。

 実家近くのショッピングモールで出会ったあのドロシーちゃんの姿がそこにはあったのだ。

 全身がまるでコンビニのビニール袋のようなゴーストの姿で。


「やっと気づいてくれたんですね、ベルシュタインさん。……本当にずっと探し続けていたんですから」


 ドロシーちゃんはそう言うと、優しく自分に微笑みかけてくれた。

 きっとこれは、死ぬ間際の幻覚を見ているのだろう。

 だがあの日以来、そんな彼女と久々に再会できて、自分は涙が出そうな思いだった。

いよいよ次回でラスト1話。最終回となりました。果たして主人公の運命やいかに。

……最後に待ち受けるはハッピーエンドか、はたまたバッドエンドか。その目でとくとご覧あれ!

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