第九話 呪いの少女6
俺は、薬草を手に取り少女の隠れている物影へ。
「もう大丈夫だよ」
優しく声を掛けてあげる。
「ほ・ほんとうですか?」
「ああ、もうこの部屋には何もいないよ」
目に涙を浮かべなが俺の前に姿を見せる少女。
俺は、手に持っている薬草のことを少女に説明する。
「・・・・・・」
少女の目に沢山の涙が溢れてくる。
俺はどうしたらいいのか分からずにあたふた。
「ごめんなさい。私、どうしたらいいのか分からなくて」
んん? どういうことだ。
「私は親に捨てられてあの路地裏で一人で死ぬんだと思っていました。でもそんなときお兄さんが私を助けると言ってくれました。しかも回復魔法までかけてくれて、しかもこんな危険なダンジョンにまで私のために挑戦してくれた。どれだけ感謝してもしたりません」
涙を流しながらそんなことを言う少女。
そんな少女に俺は、
「感謝なんて必要ないさ、ただ俺が君を助けようと思っただけの自己満足さ」
「それでも、私はお兄さんに命を救われたのです」
「まだ救えてないよ。ほらこの薬草をお食べ」
俺は薬草を少女に渡す。
俺から受け取った薬草を口へと運ぶ。
少し苦そうな顔をしているが頑張って食べた。
そして、薬草を食べ切った瞬間、少女の雰囲気が一気に変わった。
俺は少女に解析の魔法を使ってみる。
すると出会ったときに見えた死爆の呪いが完全に消え去っていた。
「もう大丈夫だよ」
その言葉に再び涙を流す少女。
「わぁぁぁ うわぁー わぁぁぁ うわぁー」
大声でなく少女。
自分でも感情を抑えられないのだろう。必死に目をこすり涙を止めようとしているが止まらない。
そして、その時少女の被っていたフードが取れ顔全体が見えた。
フードから出る長い緑色の髪に緑色の瞳、そしてエルフの特徴である長い耳。顔は幼さを帯びてはいるがどこか大人びた感じを見せる。整った顔立ちで将来はかなりの美人になることが予想できる。見る人が見ればかなり可愛いだろう。
そんな少女を見て、胸が再びドッキとするが、先ほどの戦闘の疲れか何かだと俺は思った。
暫くして感情も落ち着いたのか、
「ひくひく、ごめんなさい。またお兄さんに迷惑を掛けました」
「いいよ、怖かっただろ」
「はい」
「うん、でもその怖い呪いはもう解けた。これから君は長い時を生きることが出来るんだ。ここは喜ぶべき所だぞ」
「そうですね」
にこりと最高の笑顔を俺に見せてくれる。
「さて、ここから出ないといけないな」
「はい!」
少女は立ち上がり気合を入れた表所を浮かべる。
だが、俺はこれからどうしようかと考える。
その理由は、出会った時の解析でみた少女の情報に一つ気になることがあった。
「君はどうしてあんな路地裏に一人でいたんだ?」
「親に捨てられました」
少し気を落しながら話す少女。
「私が呪いを持っていてそんな娘はいらないと言われました」
なかなかひどいセリフを言う。それにこの少女はその者のことを親と呼んでいる。
「お母さんもお父さんも昔は優しくて家族いつも仲良しでした。でも私の体が少し弱くなっていきベットで寝込むことも次第に増えてくると、お父さんとお母さんは毎日喧嘩ばかりしてて、二日ほど前に私は二人の喧嘩に割って入りました。そしてたら、二人から出て行けと言われて、お父さんによってあの路地裏へと捨てられたのです」
そんなことが本当にあるのか?
「私は、自分がいらない子なんだと、だから死なないといけない子なんだと思い覚悟をしたのです」
「一つだけいいかな」
「なんですか?」
「君はご両親とは生まれたときから一緒に暮らしてたのかい?」
「はい、ずっと一緒でした」
う~ん、どうしたものか。
俺がこの質問をしたのは、少女の情報の中に両親死亡と出ていた。
少女の話が本当であればそんな文字が出るはずがない。
とすれば、少女の家族がなにか怪しいと思ったのだ。
だがここでその話をしてもどうしようもないし、せっかく元気になった少女の気分を落とすようなことはしたくない。
「それなら、両親に君の元気な姿を見せて仲良くなってもらおう。そうすればきっと仲のよかった家族に戻れるよ」
「はいです」
俺は、テレポートを使いダンジョンの外の茂みへと移動。
ここから王都まで戻る。
その道中、俺は少女の名前を聞いていなことを今更になって思い出した。
「そういえば名前聞いてなかったね」
「そういえばそうですね。私もお兄さんの名前を聞いてませんでした」
そんなことを言いつつ、お互いの顔を見て笑い合った。
「俺は、アルク=スピッチャー、王都で冒険者をしている」
「私はヒストリア=ミカエル、エルフでもうすぐ十歳になります」
「ヒストリアか、良い名前だな」
「アルクさんも素敵なお名前です」
「そうか」
「はい!」
そんな他愛もない会話。
だけどそれがとても楽しく感じられた。
ガイルのパーティーにいた頃は誰俺に話しかけてはこなかった。だが、それでもいいと思っている俺がいた。
自分はこのパーティーで役になっているんだとそう感じていた。
だけどこうして人と話すのも楽しいんだと思えたのは少女、ヒストリアのおかげかもしれない。
俺はヒストリアに対して感謝をした。
そして、俺たちは王都へと戻ってきた。
「ヒストリアのおうちは何処かな?」
「こっちです」
ヒストリアは指をさして俺を家まで案内してくれた。
その間、ヒストリアは家族の話をずっと俺にしてくれた。
お母さんはこういう人とか、お父さんのこういった所が好きとかいろいろなことを話してくれて、その間ヒストリアは凄く楽しそうにしていた。
ヒストリアがどれほど家族のことを好きなのかが伝わってきた。
そんなヒストリアが両親、親と呼ぶ存在がなぜヒストリアに対してそんなことをしたのか想像もつかない。
「アルクさん、ここが私のおうちです!」
ヒストリアの案内で来たのは路地裏にある小さな家であった。
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