第四十三話 三つの分かれ道
最初の戦闘からさらに一時間程経った。その間に数回の戦闘はあったものの、連携を取りつつモンスターを倒していった。出てくるモンスターはリザードマンのみ。村で手に入れた剣のスキル、ドラゴンキラーがかなり役に立っていた。
そんな感じにダンジョン内を進んでいる俺たちは、今足止めを食らっている。
少し広い部屋、目の前にある三つの別れ道。探知魔法で先を探ろうとしても、三つの道の先には何の反応もない。
その為俺は、どの道を進もうかと悩んでいた。
「おまえら二人は、どの道を進む方がいいと思う」
「私は右かな?」
「私は左だと思います」
ヒストリアは右の道を、サーシャは左の道を選んだ。
ただ、
「どっちに進むかは、お兄ちゃんに任せるよ」
「勇者様が決めてください」
二人して最終決定権を、俺にゆだねてきた。
なんの根拠もなく、決めることは出来ない。そう思いながら部屋の中を見渡して見る。
すると、中央に龍の銅像が置かれているくらいで、何もない。ただ、この銅像は三つの道の方でなく、正面左の壁を見ている。そこに何かあるのかと思い、銅像が見ている壁の方へ行ってみる。
すると、遠くからでは薄暗くてよく見えなかったが、壁に文字が彫られていた。
ただ、人族の言葉で刻まれておらず、俺には読めない。
すると、
「これなら私読めますよ」
サーシャが壁の文字を見ながら言ってきた。
「頼む!」
「わかりました」
サーシャが壁の文字を読み始めた。
「三つの首を持つ龍、それぞれの首には意味あり。一番右の首は愛、一番左の首は知恵、真ん中の首は守り。正しき首を選びし時、道は開かれんと、書いてあります」
よくわからんというのが俺の感想だ。
「ここに書かれているのは、竜人族の里に伝わる守護獣の龍のことだと思います。それぞれの首に愛と知恵、そして守りの意味を持つ三つの首を持ちし龍を、我が里の守護獣として、祀っております」
「つまりこの三つの道は、それになぞらえてあるわけか」
「そのようです」
その話を聞き、今回の目的と照らし合わせると選ぶ道は一つしかない。
「真ん中の道を進もう」
「どうして真ん中の道なのですか?」
サーシャが聞いてきた。
「俺たちの目的は、竜人族の守護していた、吸血鬼族のお姫様を助け出すことだ! 守護とはつまり守りのことだろう。だとしたら守りの意味を持つ、真ん中の道を選ぶのが正解だということになる」
「ですが人族が、私たち竜人族に伝わる守護獣の話になぞらえて、封印を行でしょうか?」
「そうだな。だが、封印を行った人族もそう考えたかもしれない。だからこそ、守護獣の話になぞらえて、封印の場所を決めたと考えられるんだ」
「たしかにそうかもしれません。さすが勇者様です!」
「私もお兄ちゃんの意見に賛成です」
俺たちは、真ん中の道を進むことになった。
真ん中の道を少し進むと、新たな部屋へと到着した。
そこは、先ほどの銅像があった部屋の二倍以上の広さがある。だが、何もないただ広い空間。その中に漂う不気味で強力な気配。
「二人とも警戒を怠るな!」
その気配から俺は、二人に指示をだす。
「はい! なんだかすごく嫌ない予感がします」
「不気味ですね」
二人とも何かを感じ取っているようだ。
「我が守護せし部屋へと、足を踏み入れるのはだれじゃ!」
どこからか聞こえてくる声。かなり年老いている感じだ。
「これ以上先に進むのであれば、わしを倒してからにせよ!」
部屋の中央に、大量の魔力が集まっている。その量は、一瞬にして膨れ上がり、モンスターの形を作り上げていく。
そこに現れたのは、一匹のドラゴンであった。背に翼をもたないドラゴン。地竜であろうと推測できた。
俺たちを見ている地竜。
「お前たち! 何しにここまできた」
地竜が口を開き聞いてきた。
「この先に封印されている、吸血鬼族のお姫様を助けにきたんだ」
嘘をつく必要もないため、正直に答える。
すると、
「なるほどな! では、ここを通すことは出来ぬな」
地竜の口に、大量の魔力が集まっていく。
地竜が放とうしているのは、ドラゴンの持つ固有魔法『咆哮』であると推測できる。周りの壁には、硬化の魔法が付与されており、ちょっとやそっとじゃ壊れないようにされている。
「二人とも俺の近くに集まれ! 俺がいいって言うまで離れるなよ!」
その言葉で俺の近くに集まってくるサーシャとヒストリア。服をつかんで意地でも離れないようにしている。
俺は地竜が放とうとしている咆哮に合わせて、シールド三枚と水の壁、ウォーターウォールを前面に展開して防御態勢に入る。
「っふ! そんな紙切れで我が咆哮を防げるものか!」
地竜が大きな口を開け、咆哮を放ってきた。とがった岩の塊が無数に飛んでくる。
そのすべてに、とてつもない魔力が籠っていた。
一枚、また一枚と、張っていたシールドが破られていく。俺は、その度に新たなシールドをはり耐える。
そして、五枚ほどシールドを張りなおしたところで、地竜の咆哮が終わるのだった。
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