第三十一話 モンスターの襲撃
竜人族の皆は少しずつ力を取り戻していた。そこへと戻る俺。
だが、まだ完全ではなく、立てずに動けずにいる者がほとんどであった。
そんな中、周囲の空気が変化したのを感じた。
「お兄ちゃんどうかしましたか?」
俺の微かな表情の変化から何かを感じとったヒストリアが聞いてくる。
だが、それに対して俺は何も答えずに、ある一点へと意識を向けていた。何もない場所。
確かに何もない。ないのだがなぜかそこへ意識が向く。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん大丈夫ですか」
大きな声で俺を呼ぶヒストリア。
その声に反応しかけたのだが、どうしても意識を離せずに反応できない。
「ヒストリア、全員を守れ!」
嫌な予感がする。俺は直感でそう感じた。
それに、俺の横にウンディーネが出てきて俺と同じところを見ている。
「分かりました。ですが一体何が起きようとしているのですか?」
「分からん」
ヒストリアからの問いかけに対して俺はそう返すしかなかった。
「アルク様来ます!」
「ああ、そうみたいだな」
俺よりも先にウンディーネが森の奥より薄っすらと見えてきた何かに気づいた。その何かはもの凄い速さでこちらへと向かってくる。
探索の魔法を使い探ってみると、
「モンスターの大群がこっちへ向かってきている。数は約一万程だ」
その数に対して絶望的な表情を浮かべる竜人族。
そのうち、数人は立ち上がり戦おうとするが、
「やめとけ、その体では死ぬだけだ」
俺が忠告すると、
「何を! 少し活躍したからっていい気になるなよ」
未だに俺に対して反抗的な態度を変えない竜人族の男。
だが今はそんなことを言っている場合じゃない。そう思い俺が声を発しようとすると、
「おまえはまだそんなことを言っているのか!」
竜人族の長が大声を発する。
「先ほどの彼の戦いを見ていただろう。我々をかばい一人で盗賊たちの攻撃を引き受けて逃がしてくれた。そんな彼のことをどうして悪く言える。俺は彼を信じたい」
まさか竜人族の長がそんなことを思ってくれていたとは思わなかった。
「今は彼を信じ彼の指示に従おう。今の俺たちは無力なんだ」
「分かったよ」
仕方ないという感じに返答が返ってきた。
「動ける者は他の者を連れて里の中に入れ! 急ぐんだ!」
竜人族の長の指示により動き出す里人たち。
そして俺はこちらへと向かってくるモンスターへと向き直る。
「ヒストリアは里人たちを守れ!」
「分かりました」
すぐに返事が返ってきた。
里人たちの元へと行くヒストリア。俺の中で一つの心配事が減った。これで心置きなく戦える。
「行くぞウンディーネ、ここから俺たちの戦いだ」
「はい! アルク様、見せてあげましょう、私たちの全力を」
そのウンディーネの言葉を聞いて他の精霊王たちも姿を見せる。その数十一体。
ここまで精霊王たちが一斉に出てくるのは初めてのことだ。
「皆さん、全力で行きますよ」
「おおよ、やってやるさ」
「任せなさい」
「ふふふ、楽しみだわ」
「私の力を見せるときがきたようですね」
などと精霊たちから様々声が返ってきた。
そんな中俺は、
「魔法で吹き飛ばす」
「分かりました」
「行くぞトブロ!」
「やっと俺の番か!」
雷の精霊王であるトブロの名前を呼ぶ。普段精霊王たちを別空間に閉まったまま使っている魔法と今回のように名前を呼んで使う魔法では威力が倍近く変わってくる。そのために通常時の対人戦では使わないようにしている。ただし、今回のような大量のモンスター出現や、高難易度のダンジョンの攻略時、仲間のピンチの時のみ使用すると決めていた。そして今がその時である。
「大技で行くぞ」
「そりゃいいぜ! 全力でやってやんな」
「レールガン!」
手を前に構えて、狙いを定める。そこへ集まる魔力、その量は上位魔法のその物だ。俺の手より前方へと放たれる電撃の砲撃は前方から迫りくるモンスターの大群を一瞬で消し飛ばした。
その後探索の魔法でほとんどのモンスターの消滅を確認、あっけなかったと思ったのだが、
「アルク様、第二弾が来るようです」
ウンディーネの声、先ほどと同じところを見ると大量のモンスターがまたこちらへと向かってきている。
しかも数だけなら先ほどの倍近くに増えている。
正直何が起こっているかわからないが、今することはこの里を守ること。
そのためにも今俺に出来る事は向かってくるモンスターたちを倒すこと。そう思い、先ほど放ったレールガンで第二波のモンスター達を倒す。
モンスターの大群の消滅と同じくして第三波目のモンスター達がこちらへと向かってくる。数は先ほどの倍の約四万、今のままだと埒が明かない。
そんなとき、
「アルク様少しいいでしょうか?」
召喚の精霊王イプロが声を掛けてくるのだった。
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