第二十八話 竜人族の長の家
クリシュとの試合に勝利した俺の元へ竜人族の長がやってきた。
「おまえは何者だ!」
俺にそう言ってくる。何者かと聞かれても困るが、
「人間ですが」
「いや違う、そう言うことじゃない。おまえは持っているのか?」
持っているとは何をだ? 少し疑問に思う。
「何を言っているんですか?」
「そこまで言わないと分からないのか! 神から授かりし技術だ! おまえは精霊王の神から授かりし技術を持っているのかと聞いているんだ!」
俺とウンディーネが会話をしているときに竜人族の長は俺たちの方を見ていた。そして目の色を一瞬変えた。その謎の答えがこれだ。この人は精霊王の神から授かりし技術のことを知っている。そして何かあったんだ。
「なんでそのことを知っているんですか!?」
「俺は昔精霊王の神から授かりし技術を持つ者と出会い、この里を作った。その時にこの認識疎外の結界を張ったのがその当時精霊王の神から授かりし技術を持つ者だ。そしてその者から、自分と同じ精霊王の神から授かりし技術を持つ者に会うことがあれば力になってやれと言われたんだ」
俺と同じ神から授かりし技術を持つ者の話を聞いて俺の頭に最初に浮かんだのはこの神から授かりし技術をくれた大精霊王のことだが、この里ができたのは数百年前、それを考えるとあのひとではないだろう。ならそれよりも前の精霊王の神から授かりし技術を持つ者だということになる。
俺は、その者に興味があった。だが今はそんなことよりも、
「サーシャの話を聞いてもらえませんか」
「分かった。三人ともついてこい」
俺とヒストリア、それにサーシャは竜人族の長の後に続き、場所を移動した。
そしてやってきたのは長とサーシャの家であった。大広間、そこで向かい合って座る俺たち三人と長。なぜサーシャは俺らの側に座っている。
「サーシャ、俺に話があるのか!?」
「はい」
サーシャの顔つきが変わった。とても真剣な顔。
「私は人間の男たちの集団に友達二人と一緒に捕まりました。その時、友達の一人がこの里の場所をしゃべりました」
「その程度のことか、それなら問題ないだろう。この里の周囲には認識疎外の結界が張ってある。その結界がある限り人間がこの里に近づけない。それどころか気づくと元来た道を戻っているだろう」
「私もそう思っていました。ですが、彼らは私たちの里の近くに認識疎外の結界を使っていました。誰に授けられた物かはわかりませんが、確実にこの里の結界を突破してくると思います。それと私たち三人を拘束するときに男たちが使っていた手錠は私たち竜人族の力を完全に封印しました。しかも身体能力は普通の人間と同じくらいまで下がりました」
「そんなことか、問題ない。我々が人間に捕まることなどない。つまりそんな手錠をかけられることもない」
その自信はどこから湧いてくるのだろうか?
「そ、そうですね。ですが、彼らは何をしてくるかわかりません。じゃないとあの二人が殺されたことに理由がつけられません」
「おまえの失態だろう! 俺はずっと言い聞かせてきたはずだ、里の結界の外に決して出るなとな。だがサーシャおまえはその言いつけを守らず友達を二人を巻き込んだ。そして結果として二人を失ったのだ」
「そ、それは・・・・・・」
俯いて何も答えられないサーシャ。
「何か間違ったことを言っているか!」
「い、いいえ。お父様に間違いはありません。今回のことは私の軽率な行動が招いた結果です」
「反省してなさい」
最後の長の言葉に対して何も言わずに無言で頷くだけのサーシャ。
そして、先ほどまでサーシャの方へと向いていた視線が俺へと向く。
「里の入り口での話は聞いていた。我が娘を救ってくれたことは礼を言う。それと、精霊王の神から授かりし技術を持つ者への先ほどまでの無礼は謝罪する」
俺に対して頭を下げてくる。広場での態度とは大違いだ。
「そんなことよりも俺の話を聞いてもらってもいいだろうか」
「なんだ」
「先ほどのサーシャの話だが、俺は今回のことに人間以外の何者かがかかわっている可能性を考えている」
「面白いことを言う。人間以外の何がかかわっていると言うんだ」
俺は竜人族の長に王都であったことをすべて話した。その話を聞いた竜人族の長の表情がかなり険しい物となった。
「その話マジなのか」
「はい! 俺は、そのことを踏まえて今回のこの里を狙う男たちの計画には魔族が関わっているのではないかと考えています」
「そうか、分かった。俺たちでもある程度は準備が必要になってくる」
「俺たちもこの里を守る戦いに参加させてもらえないでしょか」
「よいのか!? 俺たちが君たちに対して先ほど取った言動は決して許される物ではない。それでもいいのか?」
「はい! もともとこの里を救いたいと言うサーシャの願いを聞いて俺たちもここまで来たのですから」
「わかった。よろしく頼む」
俺と竜人族の長は握手を交わした。
それから、日も暮れていき里での夕食を済ました俺たちは長の家の一室を借りられることになったのだ。
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