第二十五話 いざ隠里へ!
サーシャから話を聞いた翌日の朝。宿のベッドで目を覚ました俺。
今日はいよいよ、竜人族の隠れ里へ行く日。そんな中、未だに寝ているヒストリアとサーシャ。
「お兄ちゃん大好きで~す~」
寝言を言っているヒストリアに、寝ながら涙を流しているサーシャ。たぶん昨日話してくれた内容の夢を見ているんだろう。ヒストリアの見ている夢は想像しないでおこう。
二人を起こす俺。
「ほら! 朝だぞ!」
その声で目を覚ましたのはサーシャだった。
「アルク様おはようございます」
「おはようお兄ちゃん、そしておやすみなさい。ぐ~~~、ぐ~~~~」
一度起きたかと思うとすぐにまた眠りについてしまった。基本的に朝が弱いヒストリアの二度寝はよくあること。そして、
「こっらー! 朝だー! お・き・ろー!」
布団を思いっきり剥ぎ取りながら起こす。その光景に驚くサーシャ。
「アルク様、そんな無理やりに起こさなくてもいいのでは」
「そうですよお兄ちゃん、かわいい妹をそんな無理やり起こすなんてダメですよ!」
やっと起きたヒストリアが俺を指さしてそんなことをどや顔で言ってくる。だがそれを自分で言うかと思ってしまった。
そんなところが可愛くもある。
「ふふふ、ふはははは」
俺とヒストリアのやり取りを見て笑い出すサーシャ。
「お二人はいつもそんな感じなのですか?」
「そうです。私とお兄ちゃんは仲良しなのです」
いやそういうことを聞いているわけではないだろう。
まあそんなことよりもだ、
「朝食食べに行くぞ。今日は一日長いんだからな」
「はーい!」
返事をする二人。それから宿の食堂で朝食をとった俺たちは、いよいよ竜人族の隠れ里に向けて出発する。
隠れ里まではサーシャが案内してくれることになっている。
サーシャを先頭にしてキリス村を出た俺たちは二時間程森の中を歩いていた。
「凄い森の中にあるんだな」
「はい、私たちは人々の目を避けて数百年の月日を過ごしてきました。そのためには人里より距離を取る必要がありました」
「だから、これほど森の奥に里を作ったわけか」
「はい、それに合わせて昨夜もお話しましたが特殊な結界で認識阻害を掛けています。それにより、これまで誰に見つからずにやってこれたのです」
「だが、その里の存在を知る者が現れた」
「はい、彼らがどうやって私たちの里を知ったのかはわかりません。ですが確実に何かを仕掛けてくるはずです。そのために私たちを捕らえたのでしょうから」
サーシャも自分たちが捕まった意味をしっかりと理解していた。見た目以上にしっかりとしている。十歳の少女とはいえさすが竜人族の長の娘と言ったところか。
「俺も同じ考えだ。それにサーシャたちを捕まえた男たちの後ろには指示を出す者がいるのかもしれないな」
「指示を出す者ですか」
俺はある可能性について考えていた。まだ憶測の域を出ないが、王都のヒストリアの住んでいた家で戦った魔族。あいつらは王都転覆を企んでいた。それが一魔族の考えだとは思えない。もしかするとその後ろにいる誰かが指示を出して仕組んだことなのかもと、俺はこの一週間考えていた。
「まさか、あの人たちですか」
恐る恐る聞いてくるヒストリア。まだあの日の事が頭にのこっているんだろう。
「いや違うよ、あいつらは俺が倒した。彼らが俺たちの前に現れることはないよ」
「そうですね」
ヒストリアは一安心の表情を浮かべる。
「・・・・・・?」
俺とヒストリアとの話している話の内容を理解できずにはてなマークを浮かべるサーシャ。
そこで俺は一週間前に起きたことについてサーシャに話した。
「そんなことが、ではヒストリア様のご両親は」
「たぶんな」
「そうですか」
「二人とも気にしないでください。最初の内は悲しかったですが私には素敵なお兄ちゃんがいます。それだけで今は幸せなのです」
なんとか笑顔を作るヒストリア。だが、内心はどうなのだろうかと思う。必死で何かを抑えようとしている握りこぶし。俺はそれを見て何も言えなかった。
「アルク様の考えですと、今回私たちの里を狙っているのは男たちではなく魔族である可能性が高いわけですか」
「たぶんな。まだ断定はできないが、竜人族と同じく長寿の種族である魔族だけがその存在を知っていてもおかしくないと思う」
だが俺の中で一番納得に行く答えがこれだった。
「今の話も含めて私のお父さん、いえ竜人族の長とのお話をお願いいたします」
「俺が話すのか!」
「はい、私だと真剣に聞いてもらえない可能性がありますのです」
「分かった」
だがここで俺はあることを思い出した。
「サーシャお前が俺を信用したのは分かる。だが他の竜人族が俺たちのことを受け入れてくれるのか」
そう、俺の読んだ文献の中に一つ、竜人族が隠里を作った理由が書かれていた。その理由を作ったのは俺たち人族であったのだ。そのために俺は、竜人族の里に行っても受け入れてもらえないのではないかと考えたのだ。
「大丈夫です! 私を助けてくれたアルク様を無下に扱う程私たちの一族は落ちぶれておりません」
自信満々に言うサーシャ。
だが俺の中で本当に大丈夫かと心配だけが浮かんでいたのだ。
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